雑談が生まれる会社と、生まれない会社──その差は仲の良さではない
カフェでコーヒーを飲みながら、
隣のテーブルの会話が、ふと耳に入ってきました。
仕事の話でもなく、
深刻な相談でもない。
たわいもない雑談。
「この前さ…」
「それ、分かるわ」
声は小さいのに、
空気はどこか温かい。
この感じ。
私は、会社の中でも、
まったく同じものを見てきました。
雑談が自然に生まれる職場。
そして、
なぜか雑談が生まれない職場。
この違い、
よく「仲がいいかどうか」
で片付けられます。
でも、それは違う。
雑談の有無は、
組織の透明資産が機能しているかどうか
その結果です。
雑談がない職場は、静かに疲れている
雑談が生まれない職場。
一見すると、
静かで、真面目で、
仕事に集中しているように見える。
でも、
よく観察すると、
空気が少し硬い。
・キーボードの音が「カタカタ…」と単調
・誰かが立つと、視線が一瞬動く
・笑い声が、すぐ途切れる
身体で言えば、
ずっと肩に力が入っている状態。
本人たちは、
それに気づいていません。
なぜなら、
それが「普通」になっているから。
雑談は「余裕」ではなく「安全」のサイン
多くの経営者は、
こう考えます。
「忙しいから雑談がない」
「余裕ができたら、自然に増える」
でも、
現場で起きているのは逆です。
雑談が生まれるから、
余裕が生まれる。
雑談がないのは、
忙しいからではありません。
何を言っても大丈夫、という感覚がない
ただ、それだけです。
雑談とは、
中身のない話ではない。
「今、この場にいても、安全だ」
その確認作業です。
雑談が生まれる瞬間の“音”
雑談が生まれる職場では、
特有の音があります。
「ふっ」
小さな息が漏れる。
「くすっ」
短い笑い。
それが、
一瞬だけ空気を緩める。
誰かが拾う。
「それで?」
「どうなった?」
雑談は、
意図して始まるものではありません。
拾われた空気から生まれる。
雑談が生まれない理由は、記憶にある
雑談が生まれない職場には、
必ず過去の記憶があります。
・雑談していたら注意された
・空気を読めと言われた
・「今それ必要?」と切られた
その一度で、
人は学習します。
「余計なことは言わない方がいい」
こうして、
雑談は消える。
そして同時に、
・相談
・気づき
・違和感
これらも、
一緒に消えていく。
雑談が生まれる職場は、仕事の話が早い
面白いことに、
雑談が多い職場ほど、
仕事の話は短い。
・要点だけで通じる
・前提説明がいらない
・行間が読める
これは、
雑談を通じて
人となりの情報が
共有されているからです。
「この人は、今こういう状態」
「この人は、こういう価値観」
これが分かっていると、
仕事の摩擦が激減する。
透明資産とは、
こうした
非公式な情報の蓄積でもあります。
社長が雑談をどう扱っているか
ここで、
経営者にとって
とても大事な視点です。
雑談が生まれるかどうかは、
社長が雑談をどう扱っているかで、
ほぼ決まります。
・雑談を遮っていないか
・つまらなそうな顔をしていないか
・「で、結論は?」を急いでいないか
社長が、
雑談を「ムダ」と見ると、
現場は黙る。
社長が、
雑談を「潤滑油」と見ると、
現場は緩む。
この緩みが、
結果的に、
判断の質とスピードを上げます。
雑談が生まれる会社は、沈黙もやさしい
雑談がある会社は、
沈黙も違います。
・気まずくない
・焦らない
・誰かを責めない
「今は、言葉はいらないな」
という沈黙。
これは、
信頼があるから成立する。
雑談がない会社の沈黙は、
「何か言わなきゃ」
という圧を生む。
この違いは、
非常に大きい。
雑談は、文化の“通気口”
私は、
雑談を
組織の通気口だと思っています。
通気口があるから、
熱がこもらない。
通気口があるから、
匂いが滞らない。
通気口を塞ぐと、
一見、整って見える。
でも、
内側は確実に腐る。
雑談が消えた組織は、
見えないところで、
疲労と不満を溜め込んでいます。
コーヒーを飲み干す頃に
カフェで、
コーヒーを飲み干す頃、
隣のテーブルの雑談も、
自然に終わっていました。
誰かが立ち、
軽く会釈をして、
また日常に戻っていく。
これくらいが、ちょうどいい。
会社の雑談も、
同じです。
無理に増やす必要はない。
無理に止める必要もない。
自然に生まれる状態を
つくれているかどうか。
あなたの会社では、
雑談が生まれていますか。
それとも、
生まれない空気が
出来上がっていますか。
透明資産は、
会議室ではなく、
雑談の“隙間”に
最も正直に現れます。
そこに目を向けられるかどうか。
それが、
経営の成熟度です。
―勝田耕司
<透明資産とは?>
業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。














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