「UNIQLOの捨て色とスーパーの導線が教えてくれたこと|弱い人を切り捨てる会社は最後に空気を失う!?
先日、冬物のアウターを買いに、久しぶりにUNIQLOへ寄ったんです。
平日の午前中でお客さんはまばら。
だけど店に入った瞬間、妙に“整っている空気”が漂っている。
棚の高さ、距離感、照明の明るさ。
そして、私が探していた黒やグレーの無難な色の横に、
堂々と置いてある「え、これ誰着るん?」という攻めた色。
正直に言うと、
私はあの原色のアウターを見るたび毎年ニヤッとしてしまうんです。
でも今年は違いました。
ふと、その原色のアウターが
組織の「下位2割」の社員 に見えた。
この瞬間から、今日の話は始まります。
―UNIQLOの“捨て色”は「売れ残り」ではなく「設計」
UNIQLOに詳しい方は知っていると思いますが、
売れない色を“わざと”棚に入れているのは戦略なんですね。
これはアパレルだけの話ではなく、
行動経済学でいう “選択アーキテクチャー” です。
人間は、
・比較があると選びやすい
・明らかに外れがあると安心して決められる
・「無難」という言葉自体が価値になる
という心理構造を持っています。
だから売れない色を入れると、
隣にある黒・白・グレーが相対的に魅力的に見える。
売れない色が売れる色を売らせている。
これが本質なんです。
そしてこの構造は、UNIQLOだけではなく、
スターバックス、IKEA、マクドナルド、Apple Store…
あらゆる“空気を設計する企業”が使っています。
―スーパーで気づいた「動線が空気を決める」
UNIQLOを出て、そのままスーパーへ行ったときのこと。
入り口すぐの青果コーナーの配置。
通路の幅。
野菜の緑と照明の色温度。
陳列棚の高さ。
気づけば私は、
“野菜に背中を押されている感覚”になっていました。
実はこれ、
ナッジ理論(そっと背中を押す仕掛け) と呼ばれるもの。
野菜コーナーを入口に置くことで
「ヘルシーで新鮮な店」という空気が生まれ、
購買意欲も高まる。
パンコーナーで流れてくる香りも、
じつは“焼きたての香料”を追加していたりする。
こういう小さな仕掛けの集大成が、
買う空気 を作っているわけです。
― IKEAは「迷路」で空気をつくる
IKEAに行ったことのある人ならわかると思います。
一度入ったら、出口までの道はほぼ一本道。
商品を見る順番までコントロールされている。
あれは 「設計された迷路」 です。
・目にする順番
・体験の順番
・感情の順番
これらを会社側でデザインしている。
だからIKEAは帰る頃には
「なんか今日、すごい買っちゃったな…」
となる。
空気とは、意図的に作るものだと
日常の中で改めて感じました。
―マクドナルドの赤と黄色は“スピードの空気”
心理学の世界では、
赤と黄色は「決断スピードを上げる色」と言われています。
つまり“考えさせずに決めさせる色”。
だからマクドナルドは赤と黄色。
店舗の照明も早めの回転率を生むトーン。
これもすべて空気の設計。
無意識で行動させる仕掛けです。
―SNSの「1.7秒」で気づく、空気の正体
夜、家でSNSを開いたら、
「1.7秒でスルーされる世界」というデータを見て、
ふと腑に落ちたことがある。
SNSは、
空気が伝わる速度が最も速いメディア なんじゃないか、と。
・表情
・言葉の温度
・投稿の余白
・写真の色
・文字数
これらが“空気”になって伝わる。
だからSNSには、刺激的なものも、優しいものも、
一瞬で広がる力がある。
そして私は思いました。
「会社も、空気がすべてを決めている」 と。
―組織の「2-6-2」──捨て色と同じ構造
ここから本題です。
会社には必ず、
成果や姿勢にばらつきが出ます。
上位2割
中位6割
下位2割
この「下位2割」をどう扱うかで
会社の未来は決まる。
多くの社長は言う。
「下の2割は切り捨てた方がいいよね?」
でも、UNIQLOで見た“捨て色”を思い出してください。
捨て色は、
「存在価値のない色」ではない。
“売れる色を売れるようにする存在”。
人も同じです。
下位2割がいることで、
中位6割の役割が明確になり、
上位2割は力を発揮する。
もし下位2割を切り捨てたらどうなるか?
次の6割の中から、
新しい“下位2割”が必ず出てくる。
人の評価は相対的だから。
つまり切り捨ては何の解決にもならず、
むしろ 空気を冷やすだけ。
―ドラッカーは「弱みではなく強みにフォーカスせよ」と言った
P.F.ドラッカーは
“強みにフォーカスし、弱みを責める経営は組織を壊す”
という趣旨の言葉を残しています。
ジム・コリンズの『Good to Great』でも、
偉大な企業は“弱い人を排除した会社”ではなく、
「凡人でも機能する仕組み」をつくった会社 だと書かれている。
透明資産経営の視点とは、
まさにここにあります。
―“弱い人”の扱いが、会社の空気の正体
下位2割の扱いには、
社員全員が敏感です。
・ミスしたら切られる
・成果が出ないと肩身が狭い
・相談しづらい
・報告が遅れる
・挑戦しない
・改善提案がなくなる
これはすべて
空気の質が劣化したときに起きる現象。
空気は、言葉では動かない。
社長の行動、態度、眼差しで決まる。
だから私は常に言います。
「社長は空気の設計者であれ」 と。
―UNIQLOの棚づくりは、“人の棚づくり”でもある
UNIQLOの棚は、
・高さ
・色順
・動線
・照明すべてが“選びやすさ”という一点に向けて設計されています。
これ、社員も同じなんです。
・得意が活きる場所
・不得意が出にくい環境
・フォローを受けやすい関係性
・情報が循環する仕組み
・挑戦しても安全な空気
こういう“棚づくり”ができたとき、
下位2割の社員も活きる。
そしてその瞬間、
組織全体の空気が変わります。
―最後に、、、捨て色があるから、美しい棚が成立する
UNIQLOで買った黒いアウター。
その隣には
「売れない」「似合わない」「誰が着るん?」
と言われる原色があった。
でも、その原色こそ、
あなたがその黒を選ぶ理由をつくっていた。
会社も同じです。
・弱い人
・ゆっくりな人
・不器用な人
・言葉に詰まる人
・ミスが多い人
彼らを切り捨てた瞬間に、
組織は「選びにくい棚」になる。
魅力がなくなる。
安心感がなくなる。
挑戦がなくなる。
つまり、
透明資産が消える。
透明資産経営とは、
人を残す経営ではなく、
空気をつくる経営です。
捨て色があるから、棚は美しい。
弱さがあるから、人は輝く。これが、UNIQLOとスーパーが教えてくれた
“日常に潜む透明資産の正体”でした。
―勝田耕司
<透明資産とは?>
業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。














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