透明資産とは?

【透明資産を見つけよう】スーパーマーケット経営で抑えるべき透明資産経営の5つのポイント

スーパーマーケット経営で抑えるべき透明資産経営の5つのポイント

こんにちは、企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

 

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた経営で、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

スーパーマーケット経営と聞くと、商品の仕入れ力、価格競争力、店舗の立地、効率的な在庫管理といった、目に見える指標が成功の鍵だと考えがちです。しかし、現代の市場で真に繁盛し、お客様から愛され続けるスーパーは、それらを超越した、店舗全体に満ちる独特の空気感という名の無形資産を持っています。この空気感こそ、スーパーマーケット経営における揺るぎない競争優位性、すなわち透明資産なのです。

私が提唱する透明資産経営は、この空気感を意図的に設計し、戦略的に運用することで、お客様からの信頼を高め、社員のモチベーションを最大化し、最終的には安定した経営へと導く仕組みです。このコラムでは、スーパーマーケット経営で特に重要となる透明資産経営の5つのポイントを解説していきます。それは、スーパーを単なる商品を売る場所から、地域の人々の生活を豊かにする「暮らしの拠点」へと進化させるための羅針盤となるでしょう。

<1>スーパーマーケット経営における「空気感」の重要性

現代のスーパーマーケット業界は、かつてないほど複雑かつ競争が激化しています。ネット通販、オンラインスーパーの台頭、コンビニエンスストアの進化、そして消費者の価値観の多様化が進む中で、地域に根差した中小規模のスーパーは、大手チェーンや専門食料品店との差別化をどのように図るかが大きな課題となっています。こうした状況で、スーパーが真に選ばれ続ける存在となるためには、他社が簡単に模倣できない独自の強み、すなわち「空気感」を磨き上げることが不可欠です。

 

人間が意思決定をする際、論理的な情報だけでなく、感情的な要素が大きく影響することが明らかになっています。これは、商品の価格や品質といった専門的な情報だけでなく、店舗の雰囲気、従業員の対応、そして「なんとなく心地よい」という感覚的な部分を総合して、そのスーパーへの信頼度を判断するのです。この「なんとなく」の正体こそが、店舗全体が醸し出す「空気感」なのです。

この「空気感」は、スーパーの収益にも直結します。お客様が心地よさや安心感を抱けば、継続的な来店や口コミでの紹介に繋がり、結果として安定した顧客基盤を築くことができます。逆に、店員の冷たい対応や、店舗内のギスギスした「空気感」は、お客様の不信感を煽り、二度と来店しないという選択に繋がりかねません。

 

これは、ランチェスター戦略における「弱者の戦略」にも通じます。大手チェーンが持つ圧倒的な規模や価格競争力に対抗するためには、中小規模のスーパーは、特定の領域で徹底的に優位性を築く必要があります。その特定の領域こそが、お客様一人ひとりの心に深く響く「空気感」の創出なのです。

<2>スーパーマーケット経営で抑えるべき透明資産経営の5つのポイント

ここからは、スーパーマーケット経営で特に重要となる、透明資産経営の5つのポイントを、具体的な実践方法と理論的背景を交えながら解説していきます。

①社長の「在り方」が創り出す「活気」の空気感

スーパーマーケットの「空気感」は、誰よりも社長の「在り方」を色濃く反映します。社長が「私たちは、単なる商品を売るのではなく、地域の人々の食生活を豊かにする」という強い信念をもち、それを日々の行動で体現することで、組織全体に揺るぎない「活気」のある空気感が生まれます。これは、スーパーを単なる商品を売る場所ではなく、社員一人ひとりが「地域社会に貢献している」と実感できる「暮らしの拠点」へと変えるための最も重要な土台です。

この「活気」の空気感を醸成するためには、社長が自らの哲学を、社員に「伝える」だけでなく、「伝わる」ようにすることが不可欠です。例えば、社長が多忙な中でも、現場のレジや品出しに立ち、社員一人ひとりに声をかけ、感謝の言葉を伝える姿は、言葉以上にその哲学を雄弁に物語ります。心理学における社会的学習理論が示すように、人は他者の行動を観察し、それを模倣することで学習します。社長が示す「在り方」は、社員の行動規範となり、組織全体に温かい「空気感」として浸透していきます。

また、社長がお客様の声に真摯に耳を傾け、地域のニーズに合わせた商品展開やイベント企画に積極的に取り組む姿勢を見せることも重要です。このような「地域密着」の在り方は、社員が自分の仕事が最終的にお客様の喜びや生活の豊かさに繋がっていることを実感できる環境、すなわち社員が安心して力を発揮できる環境を創り出します。この「活気」の空気感は、社員のモチベーションを最大化し、お客様へのサービスの質向上に直結する、かけがえのない透明資産となるのです。

②チームを動かす「Why」の共有と「一体感」の空気感

最高のサービスを提供するためには、レジの担当者、商品の仕入れ担当者、品出しの作業員、そして惣菜の調理担当者といった、様々な職種の専門家が、一つのチームとして機能することが不可欠です。しかし、それぞれの役割や専門性が異なるため、時には意見の相違やコミュニケーションの壁が生じることがあります。ここで重要となるのが、スーパーマーケット経営における「なぜ、この仕事をやるのか?(Why)」を共有するマネジメントです。

透明資産経営では、開店前に、チーム全員で一日の目標、お客様に提供したい価値、そして各自の役割がその価値にどう繋がっているかを共有します。このプロセスは、単に情報を伝えるだけでなく、チームメンバー全員が仕事の意義を理解し、当事者意識を持つための「一体感」の空気感を生み出します。この「Why」の共有があるからこそ、チームメンバーは、自分の役割が店舗全体の中でどのような意味を持つかを理解し、自律的に判断し、最高のパフォーマンスを発揮できるようになります。

経営戦略論における共通の目的の重要性も、これと通じるものがあります。組織のメンバーが、共通のビジョンや目標を共有することで、部門間の壁を越えた連携がスムーズになり、組織全体としてのパフォーマンスが向上します。スーパーマーケット経営においても、社長が、店舗のビジョンを〝地域で一番、温かくておいしい食卓を届ける〟といった具体的な言葉で共有し、社員一人ひとりの仕事がそのビジョンにどう繋がっているかを明確にすることで、組織に「一体感」という透明資産が育まれます。

 

この「一体感」の空気感は、社員のエンゲージメントを高め、チームワークを強化し、お客様へのより質の高いサービス提供へと結びつくのです。

③失敗を「学び」に変える「挑戦」の空気感

スーパーマーケット経営は、常に新しい商品の開発、陳列方法の改善、そしてお客様のニーズの変化に直面します。このような環境で、スーパーが成長し続けるためには、現状維持に甘んじることなく、常に新しいアイデアや改善に「挑戦」し続ける「空気感」が不可欠です。しかし、失敗が許されないというプレッシャーの中で、社員が新しい挑戦をすることに二の足を踏んでしまうケースも少なくありません。

透明資産経営では、この「挑戦」の空気感を醸成するために、失敗を恐れるのではなく、それを「学び」と捉える文化をチームに根付かせています。例えば、新しい商品や陳列方法が期待通りの成果を出さなかった時、犯人探しではなく、何が原因で、どうすれば次回に活かせるかを全員で議論する姿勢を見せます。この「空気感」は、チームメンバーがミスを隠蔽することなく報告し、全員で問題を解決する姿勢を育みます。

 

脳科学的には、人は失敗を恐れると、新しいアイデアを生み出すための創造性が抑制されることが明らかになっています。失敗を恐れずに挑戦できる環境は、社員の創造性を刺激し、店舗運営の改善や、新しいサービス開発といったイノベーションへと繋がるのです。

この「挑戦」の空気感を経営に活かすためには、社長が「新しいアイデアはいつでも歓迎する」「失敗しても、そこから学べばいい」というメッセージを明確に発信することが重要です。この「挑戦」の空気感は、社員の「自己成長意欲」という透明資産を高め、工場全体の学習能力を向上させます。

④謙虚さと敬意が創り出す「協調」の空気感

最高のサービスを提供するためには、レジの担当者から、商品の仕入れ担当者まで、様々な職種の社員が、互いに敬意を払い、謙虚な姿勢で接することが不可欠です。スーパーマーケット経営は一人では完結しないことを深く理解しているからです。この姿勢は、組織全体に「協調」の空気感を生み出し、チームワークを円滑にし、最高のサービスを提供するための土台となります。

この「協調」の空気感を醸成するためには、社長が、自分一人の力だけでなく、社員全員の貢献を認め、感謝の気持ちを伝えることが重要です。例えば、お客様からの感謝の声があった際、社長が自分一人の手柄にせず、レジの担当者、品出しの作業員、惣菜の調理担当者といったチームメンバー全員の貢献を称えるように、経営者も、店舗の成功が社員一人ひとりの努力によって支えられていることを、日々のコミュニケーションで伝えます。この承認と感謝の空気感は、社員の自己肯定感を高め、仕事へのモチベーションを向上させます。

また、フラットなコミュニケーションを促すことも、この「協調」の空気感を育む上で不可欠です。若手社員やベテラン社員の意見にも真摯に耳を傾け、チーム内での建設的な議論を推奨することで、部署や役職の垣根を越えた連携が生まれます。ランチェスター戦略では、弱者が強者に勝つためには、個々の戦力だけでなく、組織全体の連携力や情報共有のスピードが重要であると説かれています。この「協調」の空気感は、中小規模のスーパーが、大手チェーンにはない機動力や柔軟性を手に入れるための、強力な透明資産となるのです。

⑤社長の「在り方」が示す「責任」の空気感

スーパーマーケットの最も重要な特徴は、その揺るぎない「在り方」です。社長は、お客様に最高の食生活を届ける者としての倫理観や使命感を、日々の行動で示します。この真摯な姿勢が、チームメンバーに「私たちも最高のサービスを提供しなければならない」という自覚を促し、組織全体に「責任」の空気感を醸成します。

この「責任」の空気感を経営に活かすためには、社長が、店舗の理念やビジョンに対する強い想いを日々の行動で示すことが重要です。例えば、社長が多忙な業務の中でも、お客様の買い物体験を自ら確認し、最善のサービスを模索する姿勢を見せることで、社員は「自分たちもお客様の満足に責任を持つ」という自覚を強く持つようになります。この「在り方」という透明資産が、組織全体の「責任」の空気感を醸成し、お客様へのサービスの質向上へと繋がります。

また、この「責任」の空気感は、お客様への対応にも現れます。社員が、お客様一人ひとりを大切にし、真摯に向き合う姿勢は、お客様に安心感と信頼を与えます。この信頼は、スーパーのブランド価値を高め、継続的な来店や口コミでの紹介に繋がります。つまり、社長の「在り方」という透明資産は、組織全体に「責任」の空気感を浸透させ、それが「お客様からの信頼」という形で具現化し、スーパーの持続的な成長を支える基盤となるのです。

<3>最高のサービスを生み出す「空気感」を、未来を創る「空気感」へ

スーパーマーケット経営で成功を収めるためには、最新の設備や技術だけでなく、その店舗に満ちる「空気感」が不可欠です。社員が「活気」をもって仕事に取り組める「空気感」、チームが「一体感」をもって協力し合える「空気感」、そして全員が「挑戦」し、「協調」し、「責任」をもって仕事に取り組める「空気感」を意図的に設計し、運用することで、あなたのスーパーは単なる商品を売る場所ではなく、そこで働く人々が喜びと成長を感じられる、生きた組織へと変わります。

スーパーマーケット経営における透明資産経営は、目先の利益だけでなく、この見えない「空気感」という資産をどれだけ大切に育めるかが、未来の企業価値を決定づける時代において、最も確実な羅針盤となるでしょう。

 

── 勝田耕司

 

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