激しかった夕立が、嘘のように引いていきました。雲の切れ間から差し込んだ夕陽が、雨に濡れた街を鮮やかなオレンジ色に染め上げています。私は、雨宿りしていた軒下から一歩、まだ湿り気を帯びた外の世界へと足を踏み出しました。
ー反射する光が教えてくれる「気づき」
ふと足元に目を向けると、そこにある古い石畳が、鏡のように空を映し出していました。普段は何の変哲もない、ただの通り過ぎるだけの道。しかし、雨という浄化を経て、そこにはこれまでに見たこともないような「反射の美」が生まれていたのです。
この石畳が放つ光は、単なる物理的な現象ではありません。それは、雨に打たれ、汚れを洗い流されたことで露わになった、素材そのものが持つ本来の輝きでした。経営においても、私たちは時に予期せぬ困難や「雨」に打たれることがあります。しかし、その苦難が去った後、組織がどのように光を反射し、どのような表情を見せるのか。そこにこそ、その企業が長年積み上げてきた『透明資産』の真価が問われるのではないでしょうか。
ー「再生」の予感と空気の振動
街全体が、しっとりとした湿度を保ちながらも、どこか誇らしげに息を吹き返し始めています。道を行き交う人々の歩幅が少しずつ速まり、閉ざされていた窓が次々と開け放たれていく。その一連の動きの中に、私は「再生」という名の確かな鼓動を聴きました。
この瞬間に流れる空気は、極めて濃密で、かつ自由です。過去の澱みを洗い流し、新しい何かを始めようとする意志が、街全体を優しく、しかし力強く振動させているのです。組織においても、停滞していた空気が一変し、従業員一人ひとりが自発的に動き出す「再生」の瞬間があります。それは、社長が自らの「在り方」を整え、組織の根底に流れる空気の質を本気で変えようと決意したとき、目に見えない信号となって組織の末端まで伝わっていくものなのです。
ー日常を調律する「一貫性」の美学
石畳の上を歩きながら、私はその一歩一歩が奏でる音に耳を澄ませました。雨上がりの静寂の中で響く靴音は、驚くほど澄んでいます。それは、不揃いな石の一つひとつが、長い年月をかけて踏み固められ、絶妙なバランスで配置されているからこそ生まれる調和でした。
企業の「空気感」もまた、こうした小さな一貫性の集積によって形作られます 。朝の挨拶、会議での問いかけ、あるいは誰も見ていない場所での整理整頓。そうした日常の些細な場面に対して、経営者がどれだけ繊細な意図を込め続けられるか 。一過性のイベントや制度ではなく、日々の小さな調律を繰り返すことでしか、お客様が「なんとなく心地よい」と感じ、従業員が「この場所で力を発揮したい」と願うような『透明資産』は育まれないのです。
ー透明な資産が未来を照らす
陽が沈み、街に灯りがともり始めました。濡れた石畳は、今度は街灯の光を柔らかく拡散させ、道行く人々の足元を静かに照らし出しています。
私たちの経営も、こうありたいと願わずにはいられません。派手な広告やスペック競争で目を引くのではなく、ただそこに在るだけで、関わる人々の心を温め、未来への一歩を照らし出すような存在。そのためには、目に見える数字という成果の前に、まず目に見えない「空気」という資産を整える順序が大切です。
あなたが今日、組織という名の石畳の上に刻む一歩は、どのような光を反射しているでしょうか。その微細な光の重なりこそが、やがては揺るぎないブランドとなり、持続的な成長を実現する唯一無二のエンジンへと変わっていくのです。
ー勝田耕司













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