昨年に引き続き、2023年も年明け早々からさまざまな商品の値上げのニュースが続いています。とくに“物価優等生”であった卵の価格が高騰し、スーパーなどでも品切れが相次ぐに至って、いよいよ値上げが庶民の暮らしを直撃しはじめました。
外食業界でも昨年来、大手チェーンを中心に値上げが続いています。ファストフードやファミリーレストランなど、日常生活に密着した業態でも価格を上げざるをえない状況で、業界全体で客数の低下が懸念されます。
そうしたなかで、例外とも言える動きを見せているのが「サイゼリヤ」です。昨年秋に、トップ交替に合わせて“価格凍結宣言”を出し、値上げの動きには追随しない姿勢を明らかにしました。
業界内には、いずれは値上げに踏み切らざるをえないだろうという見方がありましたが、現状を見るとその可能性は薄そうです。というのは、宣言を出して以降のサイゼリヤの業績が絶好調だからです。
サイゼリヤが公表している2023年8月期(2022年9月~2023年8月)の既存店の業績を見ると、今年1月までの上半期累計で売上高が前年比119.4%という大きな伸びを見せています。さらに注目したいのが、客数が115.3%、客単価が103.6%と、ともに伸びていること。客単価の伸びは前年の102%を上回っています。
価格を上げていないわけですから、これはお客様1人当たりの注文数が増えているか、より価格の高いメニューが売れているかによるものです。いずれにしても、理想的な客単価の伸びと言えます。
なぜそうなっているかは、お店に足を運ぶとよくわかります。サービスが明らかによくなっているのです。とくに感じるのが、中間バッシングを積極的に行なっていること。これまでのサイゼリヤでは、サービススタッフはオーダー受けと料理提供に徹していました。
でもいまは、スタッフがよくテーブル上の状況を確認し、料理提供時に空いた器があればきちんと下げるようにしています。お客様にとっては、テーブルが広く使え、食事の時間が快適になります。追加のオーダーもしやすくなりますから、これが客単価増に結びついていると推測できます。
そしてスタッフの行動から、お客様に食事を楽しんでいただこうという気持ちが伝わります。このことが、客数と客単価がともに伸びるという好循環につながっているのです。
あらゆるモノの価格が上がるなかで、これまで通り気軽に食事を楽しんでいただこう。そして、ご来店いただいたお客様をきちんともてなそう。いまのサイゼリヤには、こうした気持ちが溢れています。
その気持ちこそがお客様にとっての居心地のよさを生み、お客様からの信頼という透明資産の価値をさらに高めていくはずです。
ー勝田耕司
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