SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)では、全部で17の目標が掲げられています。そのうち、前回のコラムで触れた12番目の「つくる責任、つかう責任」は、これから外食業が商品開発に取り組むうえで最重要のテーマです。
ここで問われているのは、トレーサビリティ(traceability)の実現です。直訳すれば「追跡可能」となりますが、出自のはっきりした、つまり品質の保証された食材を使い、生産および流通の過程を通して品質に責任を負うことを指します。この観点からも、肉という食材はSDGsに取り組むうえで重要であると思います。
前回紹介した「中村畜産」をはじめ、国内には優れた食肉生産者が数多く存在しますが、いずれもトレーサビリティの実現に力を入れています。日本には「和牛トレーサビリティ法」があり、この法律に基いて国内で生産される和牛にはすべて「個体識別番号」が付与されています。これが日本独自の等級制度と連動して、品質保証の裏づけになっているわけですが、世界に冠たる仕組みと言えます。
日本には多くの農産物が存在し、その品質は世界的に見てもきわめて高いものです。こうした農産物の輸出に力を入れ、食材をブランド化することは生産者が存続するために不可欠。その中でも世界的に高く評価されているのが和牛ですが、そのブランド力の源泉になっているのがトレーサビリティを保証する仕組みなのです。
こうした仕組みに沿って、優れた和牛生産者は生産から加工、流通の各段階に至るまで、自らが育てる牛をしっかりと管理しています。管理の対象は牛に与える飼料にまで及びます。穀物を与える場合は、どのような環境で生育された穀物なのか、過度な農薬投与をしていないかといったことを詳細に把握しています。
食材は単に生産するものではなく「育てるもの」であるという前提に立てば、これは当然のことと言えます。人は誰でも、自分の子供の食事の内容に気を配りますが、それは食べたものが「血肉化する」からに他なりません。子供を育てるのと同じように愛情をもって生産に取り組んでいることが、ブランド力を生んでいるのです。
このことは、あらゆるビジネスに共通する成功の鉄則であると思います。ビジネスにかかわるモノや人すべてに愛情を持つことが大切で、その愛情の深さが店や企業の価値となります。そうして生み出された価値の集積が透明資産であり、競争力の源泉なのです。
優れた和牛を商うことは、その牛を育てるファミリーの一員になることに他なりません。そこにこそSDGsの観点から見た、外食が肉という食材に取り組む意義があるのです。
ー勝田耕司
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