コロナウィルス禍にあって比較的影響が少なかったのが焼肉店です。
排煙設備があるため換気がいい、テーブルが広く“密”になりにくい、など理由はさまざまに言われていますが、やはり大きいのは焼肉業界がこの間、業態を着実に進化させてきたことでしょう。
いろんな部位を楽しめる店が増えてきましたし、焼肉の定番スタイルのひとつだった「食べ放題」業態も商品バラエティや売り方がきわめて多彩になっています。
そうした進化を牽引してきた企業の代表例が㈱物語コーポレーションでしょう。
同社の主力業態である「焼肉きんぐ」は、多彩な品揃えに加えてホスピタリティあるサービスが売り物です。
そうした独自の強みが備わっていたこと、そのブランドが消費者に浸透していたことが、コロナ禍でも業績を維持できた最大の理由だと思います。
それこそが物語コーポレーションの「透明資産」であり、それはポストコロナを見据えた新たな取り組みにも生かされています。
今年8月に同社が愛知・豊橋市の郊外にオープンした「焼きたてのかるび」は、焼肉を気軽に食べてもらうスタイルを打ち出した、いわゆるファストカジュアル業態です。
売り物は490円の「焼きたてのカルビ丼」で、テイクアウトのニーズにも積極的に対応しているのが特徴。
ファストフードの好調さに明らかなように、手早く食事を済ませたいという利用動機が増えていることが業態開発の背景にありますが、丼専門店と謳っているわけではありません。
あくまで「焼肉店がやるお食事の店」というポジショニングにしているところが最大のポイントです。
そして、その業態の位置づけをお客様にはっきりと伝えているのが「外観」です。店頭に掲げた店名の看板はエントランスの間口と同じ横幅で、ストレートに目に入ります。
その横に「熟成焼肉 名物カルビ丼」の大型看板を掲げて主力メニューをアピール。通りに面して設けたストリート看板は高さ10mもあり、ここでもカルビ丼490円という価格を大きな文字で掲示しています。
物語コーポレーションの重要な戦略の一つに「その店が“何屋か”をはっきりと伝える」ということがあります。
これは、どのような利用動機で使ってもらう店かをわかりやすく伝えるということ。そのための重要な手段が外観なのです。
「焼肉きんぐ」にしろ「丸源ラーメン」にしろ、同社の店には外観から「お店での食事の楽しさ」が明確なイメージとして伝わってくるという共通点があります。
こうした取り組みによって生まれる強固なブランド力こそ、物語コーポレーションの最大の透明資産といえるでしょう。
ー勝田耕司
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