コロナウィルス禍でも好調な外食のジャンルのひとつとして挙げられるのが「喫茶店」です。
最大手の「コメダ珈琲店」は国内の店舗数が900店を突破。「星乃珈琲店」も積極的な出店を続けており、店舗数は300店近くに達しています。
すかいらーく創業者の一人である横川竟氏が立ち上げた「高倉町珈琲」も、コロナ禍が起こって以降にむしろ出店ペースを上げ、名古屋や仙台といった新しいエリアにも積極的に出店しています。
こうした喫茶店チェーンが好調な要因は、まず立地でしょう。外出自粛とテレワークの浸透で都市中心部の店が大打撃を受けるなか、喫茶店の主力立地である郊外、とくにロードサイドは影響が比較的軽微でした。
しかしそれ以上に大きいのは、この業態がコロナ禍でも「人々に求められている」からではないでしょうか。
そのことは店に行ってみると実感できます。客層は三世代にわたって幅広く、思い思いにそれぞれの時間を過ごしています。メニュー数こそ少ないもののきちんとした料理とドリンク、必要にして十分なサービスが提供され、ゆったりとした空間が用意されている。
そうした店のありようは、コロナ前と何も変わっていません。でも、だからこそいま必要とされているのだと思います。
高倉町珈琲の創業者である横川氏が、自社ホームページのブログに「コロナ禍でも『心を休める場』として来店いただけたことに喜びを感じた」と書いておられました。これこそ、店の役割と、企業としての社会貢献のあり方を端的に示す言葉でしょう。
コロナ禍でひんぱんに使われた言葉に「不要不急」があります。感染拡大防止のために不要不急の外出は控えるべきであり、外食もそのひとつであると。
そうした観点からすれば喫茶店は不要不急の最たるものに見えますが、実際に店に行って感じることはまったく逆。お客様にとってなくてはならない、まさに生活に密着した存在になっています。まさしく横川氏の言う「心を休める場」なのです。
先ほども触れたように、好調を維持している喫茶店チェーンはどこも「変わらない」ことが大きな価値になっています。メニューは定番を中心に絞り込まれ、いたずらに商品ジャンルを拡大したりトレンドを追ったりはしていません。
それは決してお客様が求めていることではないからです。家族や親しい仲間と一緒に、あるいは一人で過ごす時間を心地よく豊かなものにしてくれること。それこそが、お客様が喫茶店に求める価値なのです。
これはまさしく喫茶店の「透明資産」といえます。喫茶店の好調さは、透明資産の大切さを如実に物語るものと言えるでしょう。
ー勝田耕司
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