「思いを伝える」ことが情報発信の目的とすれば、これほどストレートかつ効果的な発信もないでしょう。
いま、滋賀県湖南市にある日本酒の酒蔵「竹内酒造」の取り組みが注目を集めています。
竹内酒造では日本酒の海外輸出に力を入れ、米国や中国向けに純米大吟醸「香の泉」を生産してきました。ところが今回のコロナウィルス禍で輸出が完全にストップしてしまい、経営に大きな打撃を受けました。
香の泉は四合瓶を主力にしており、冷蔵保管が必須で管理コストもかさむため、これをなんとかして国内向けに販売する必要に迫られたのです。
そこで竹内酒造がとった方法が、顧客にストレートなメッセージを伝えることでした。香の泉のラベルを急遽貼り換えたのですが、そこには「たすけてください」の文字が。
苦境に陥っている自社の状況を伝え、顧客に力を貸していただけるようお願いしたのです。しかもラベルの文字は従業員の手書き。少しでもコストを抑えようという目的もあったようですが、それ以上に思いをより強く伝えたいという考えからでした。
そして、この取り組みが大反響を呼びます。6月から自社のホームページを中心に販売をはじめましたが、購入した顧客や竹内酒造の酒を扱う酒販店などが次々とブログやSNSで発信したのです。あるページには以下のような記載があります。
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酒屋でふと目にしたこの子。
滋賀の竹内酒造さんの酒「たすけてください」。
こんな切羽詰まった名前のお酒は初めてです(笑)。
それもそのはず、輸出用に造られたヤツがコロナの影響でほぼ売れずに残ってしまったとのこと。
その数1万本・・・。
そしてそのスペックは兵庫県産特A山田錦の50%特吟。税抜き1400円・・・。
はい、ボクがたすけます!
というわけで救出してきました。
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この記述、どんな宣伝文句よりも効果があると思いませんか。
そして実際に、京都新聞など大手のマスコミもこの話題を伝えるなど反響は広がり、飲食店をはじめ販路拡大にもつながりました。
思いを伝え、それが顧客を通して広がることで支持の輪が広がっていく。まさに透明資産マーケティングの実践例といえます。
ー勝田耕司
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