一般社団法人 日本フードサービス協会が毎月発表している「外食産業市場動向調査」によれば、今年5月の外食産業の業績は新型コロナウィルス禍が落ち着いたことによるゴールデンウィークの人出増などで、おおむね好調に推移したとのことです。
しかし、そうした中でも苦戦が続いているのが居酒屋をはじめとするアルコール需要が主力の業態。「パブ・居酒屋業態」の売上げは、コロナ禍前の2019年比で54.7%にとどまり、他業態に大きく劣っています。
外出自粛やテレワーク浸透といった流れに加え、夜9時以降の人出がめっきり減ってしまったことが背景にあります。これを受けて居酒屋を主力とする外食企業各社は、食事中心のニーズを獲得すべく新たな業態開発に力を入れていますが、その成果はまちまちです。そして、その差を生んでいるのは各社の持つ「透明資産」です。
中でも注目すべきは、焼とりチェーン「鳥貴族」がスタートさせたチキンバーガー専門店「トリキバーガー」でしょう。今年3月、東京・渋谷に2号店の渋谷井の頭通り店がオープンしていますが、きわめて完成度の高い店になっています。
昨年8月オープンの1号店、大井町店は物件の形状が特殊なこともあり作業動線が複雑で、ピークタイムにオペレーションが乱れるケースがありましたが、2号店はそれが見事に改善されていました。
入口を入って正面にオーダーカウンターがあるファストフードの王道というべきレイアウトで、お客様にとって使いやすく、スタッフの作業負担も少ない店づくりを実現できています。そのことは商品のクオリティ維持や提供スピードアップなど、QSCの向上に大きく貢献しています。
メニューについては1号店オープン時から高い評価を得ていましたが、さらに安定感を増してきました。看板商品「トリキバーガー」のパティは実に柔らかくジューシーで、鶏胸肉のイメージを覆す画期的なメニューといえます。
鳥貴族がこれまで蓄積してきた調理・加工技術を生かしたもので、その技術レベルの高さは外食業界でも群を抜いています。6月から期間限定商品「メイプルクラブバーガー」が導入されていますが、これもいい商品でした。
細くカットしたサラダチキンと、メープルシロップとナッツを使ったソースの組合せに独自性があります。このサラダチキンの品質もまた、国産鶏肉にこだわってきた鳥貴族ならではのものといえるでしょう。
トリキバーガーでは2号店から、店名ロゴに「国産チキンバーガー専門店」と併記しています。この言葉に込められた自信と、裏付けとなる商品へのこだわりこそ鳥貴族ならではの透明資産。それがトリキバーガーの高い完成度を生んでいるのです。
ー勝田耕司
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