退社時の「背中」が語るもの──誇りを持って帰る会社、疲弊を連れて帰る会社
カフェでコーヒーを飲みながら、
夕方の時間帯を迎えていました。
窓の外では、
仕事を終えた人たちが
駅へ向かって歩いています。
スーツの背中。
カバンの持ち方。
歩くスピード。
顔は見えなくても、
不思議と伝わってくるものがあります。
「ああ、今日はやり切ったな」
「正直、しんどかったな」
退社時の背中は、嘘をつきません。
退社時は、一日の答え合わせの時間
仕事中は、
誰でも多少、無理をします。
笑顔をつくる。
気を張る。
踏ん張る。
でも、
会社を出た瞬間、
それらは「すっ…」と落ちる。
肩が下がり、
呼吸が変わり、
歩き方が変わる。
このときに残っているものこそ、
その人がその日、
会社から持ち帰った空気です。
達成感か。
徒労感か。
あるいは、
言葉にならないモヤモヤか。
誇りを持って帰る背中
誇りを持って帰る人の背中には、
共通点があります。
・歩幅が一定
・背筋が完全には崩れていない
・カバンが重そうでも、引きずらない
決っして、
元気いっぱいというわけではありません。
むしろ、
少し疲れている。
でも、
その疲れに、
意味がある。
「今日は、やるべきことをやった」
「自分は、ちゃんと役に立った」
そんな感覚が、
背中に残っている。
疲弊を連れて帰る背中
一方で、
疲弊を連れて帰る背中。
こちらは、
はっきり分かります。
・歩幅がバラバラ
・背中が丸く、視線が落ちている
・スマホを見ながら、ため息が混じる
体力の問題ではありません。
心が、先に帰っている。
「今日も、何だったんだろう」
「結局、誰のための仕事だったんだろう」
こうした感覚が、
静かに蓄積していく。
この差は、給料でも福利厚生でもない
ここで、
経営者として
一度立ち止まってほしいことがあります。
退社時の背中の差は、
給料の差ではありません。
福利厚生の差でもありません。
もっと、
日常的で、
目に見えないもの。
その会社にいる間、どんな空気を吸っていたか
その違いです。
・急かされ続けた空気
・否定され続けた空気
・意味を感じられなかった空気
あるいは、
・任されていた空気
・信じてもらえていた空気
・役割を感じられた空気
人は、
その空気を抱えて、
家に帰ります。
社長は「退社の瞬間」を見ていない
多くの社長は、
退社時の社員を見ていません。
自分は、
まだ仕事をしているか、
先に帰っているか。
でも、
もし可能なら、
たまにでいい。
何も言わずに、社員の背中を見てほしい。
声をかけなくていい。
評価もしなくていい。
ただ、
背中を見る。
そこに、
今の会社の状態が、
ほぼ正確に映っています。
家に持ち帰られる空気は、翌日も戻ってくる
ここが、
とても大事なポイントです。
人が家に持ち帰った空気は、
翌朝、
また会社に戻ってきます。
疲弊を持ち帰れば、
疲弊を連れて出社する。
誇りを持ち帰れば、
少しだけ胸を張って出社する。
つまり、
空気は循環している。
会社の空気は、
会社の中だけで
完結していません。
家庭にも、
生活にも、
影響している。
経営とは、空気の「質」を預かる仕事
経営者の仕事は、
数字を見ることでも、
指示を出すことでもあります。
でも、
もう一つ、
とても大事な役割がある。
それは、
人が一日を終えて、
どんな気持ちで帰るかを預かること。
大げさに聞こえるかもしれません。
でも、
退社時の背中を見れば、
それが現実だと分かります。
空気を変えるのは、特別な施策ではない
誤解しないでください。
空気を良くするために、
何か大きなことを
始める必要はありません。
むしろ逆です。
・一日の終わりに、笑顔でねぎらう
・意味のない叱責をしない
・「ありがとう」を言葉にする
・目を合わせて包み込む
こうした、
一日の終わり方が、
背中を変える。
カフェで、夕方の光を眺めながら
カフェの窓から、
夕方の光が
少し赤みを帯びて
差し込んできました。
今日一日を終えて、
人はそれぞれ、
何かを背負って帰ります。
あなたの会社の人たちは、
何を背負って
帰っているでしょうか。
重たい疲弊ですか。
それとも、
小さくても確かな誇りですか。
空気は、
目に見えません。
でも、
退社時の背中ほど、
正直な指標はありません。
経営に空気を活かすとは、
社員の一日の終わりを
少しだけ、
軽くしてあげること。
そしてそれは、
経営だけでなく、
私たち自身の生活にも、
そのまま返ってきます。
今日、
誰かの背中を見送るとき、
ほんの一瞬、
空気に意識を向けてみてください。
そこに、
次の一手のヒントが、
静かに立ち上がっているはずです。
―勝田耕司
<透明資産とは?>
業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。














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