「透明資産経営」を育む『情報局』の真髄~社内発信で一体感をデザインするネタ探しとネタつくり3つの視点~
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた経営で、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながるのです。
企業の業績を左右する「空気感」は、単なる漠然とした雰囲気ではありません。それは、意図的に設計し、運用することで、組織の強固な基盤となる透明資産へと昇華させることが可能です。この透明資産経営を推進する上で5つの構造の1つとして不可欠なことが、社内外の情報を集約し、最適な形で発信する機能を担う『情報局』の運用です。
先日のコラムでは、社外発信におけるネタ探しとネタつくりに焦点を当てましたが、今回はその対極に位置しながらも、企業の「空気感」を内部から醸成する上で極めて重要な、社内発信における「ネタ探し」と「ネタつくり」の独自性について深く掘り下げていきます。
社内発信は、単なる情報共有の手段ではありません。それは、社員一人ひとりのエンゲージメントを高め、組織への帰属意識を育み、共通の目標に向かう一体感を醸成するための空気感の設計デザインそのものです。一般的な社内報やイントラネットの運用とは一線を画し、透明資産経営に資する社内発信は、いかにして社員の心に響き、行動変容を促す「ネタ」を発掘し、創造するかにかかっています。今日はそのあたりを解説していきましょう。
―1、透明資産経営における『情報局』の社内コミュニケーション戦略
透明資産経営における『情報局』の役割は、社内において、組織全体の知の循環を促進し、心理的安全性の高い「空気感」を醸成することにあります。社内発信は、この目的を達成するための最も強力なツールの一つです。
情報局は、まず、社内のあらゆる部署、あらゆる階層から情報を吸い上げるインテリジェンス機能を担います。これは、トップダウンの一方的な情報伝達ではなく、ボトムアップの意見、現場の課題、部署間の連携における成功事例、あるいは個々の社員が持つユニークなスキルや趣味といった、多岐にわたる生の情報を収集することを意味します。
この情報の収集プロセス自体が、社員が自分の声が聞かれている、自分の存在が認められていると感じる機会となり、組織への信頼感を高める第一歩となります。例えば、定期的な社員アンケート、部署横断のワークショップ、あるいはカジュアルなランチミーティングなどを通じて、情報局は社員の声を拾い上げます。
次に、情報局は収集した情報を単に羅列するのではなく、企業の理念やビジョン、そして目指すべき「空気感」に沿って編集・加工する役割を担います。これは、情報の選別と同時に、それをどのような物語として、どのようなトーンで伝えるかをデザインするプロセスです。
例えば、ある部署の成功事例を伝える際も、単なる業績報告に留まらず、その成功に至るまでのチームの葛藤や努力、個々の社員の貢献に焦点を当てることで、他の社員にも共感と学びを促すコンテンツへと昇華させます。
そして、最終的に情報局は、加工された情報を最適なチャネルを通じて発信します。この発信は、社員が自分ごととして捉え、行動変容につながるようなものでなければなりません。
例えば、経営層からのメッセージを単なる訓示としてではなく、具体的なエピソードや社員への感謝の言葉を交えながら伝えることで、社員は経営の「空気感」を肌で感じ、一体感を覚えることができます。透明資産経営における情報局の社内コミュニケーション戦略は、このように、情報の収集、編集、発信を通じて、社員一人ひとりの心に働きかけ、組織全体の「空気感」を意図的にデザインすることに他なりません。
―2、社内発信における「ネタ探し」の秘訣/共感を呼ぶ「空気感」の源泉を発掘する
透明資産経営における社内発信のネタ探しは、社内の「空気感」を構成する要素、すなわち社員の感情、行動、そして組織文化の本質を深く理解することから始まります。それは、単なる業務連絡や業績報告に留まらない、社員の心に響き、共感を呼び、行動変容を促す透明資産の源泉を発掘する作業です。
ネタ探しの第一の秘訣は、社員の小さな成功と日々の努力に光を当てることです。多くの企業では、大きなプロジェクトの成功や、目覚ましい業績達成だけが注目されがちです。しかし、真の「空気感」は、社員一人ひとりの地道な努力や、日々の業務の中で生まれる小さな成功体験の積み重ねによって醸成されます。
情報局は、こうした見過ごされがちな成功や努力を積極的に探し出し、スポットライトを当てる役割を担います。例えば、顧客からの感謝のメール、チーム内での困難な問題解決、新しいツールの導入による業務改善、あるいは新入社員が初めて一人で業務を完遂した瞬間など、一見すると些細な出来事の中にこそ、社員のモチベーションを高め、他の社員にも自分も頑張ろう!というポジティブな「空気感」を伝播させる力があります。
これらのエピソードを具体的に、そして感情豊かに伝えることで、社員は「自分の努力は誰かが見てくれている」「自分も会社に貢献できている」と感じ、内発的動機づけが高まります。
第二の秘訣は、「部署間の連携」と「知の共有」のプロセスを可視化することです。現代のビジネスは、もはや単一部署の力だけで完結するものではありません。
複雑な課題を解決するためには、部署間の密な連携と、個々の知見の共有が不可欠です。情報局は、こうした部署間の連携がどのように行われ、どのような相乗効果を生み出したのかを「ネタ」として発掘します。例えば、異なる部署のメンバーが協力して困難なプロジェクトを成功させた事例、ある部署で開発された画期的なツールが他の部署の業務効率を劇的に改善した話、あるいはベテラン社員が若手社員に惜しみなくノウハウを伝授する場面など、具体的なエピソードを通じて、組織全体の「協働」の「空気感」を醸成します。
これは、社員に「自分たちの会社はチームワークが良い」「部署を超えて助け合える」という認識を与え、組織全体の一体感を高める効果があります。
第三の秘訣は、「企業の理念やビジョン」の「日常への落とし込み」を探すことです。多くの企業が立派な理念やビジョンを掲げていますが、それが社員の日常業務にどのように結びついているのかが不明瞭な場合があります。情報局は、抽象的な理念が、現場の社員の具体的な行動や判断にどのように反映されているのかを「ネタ」として掘り起こします。
例えば、「顧客第一」という理念が、ある営業担当者が顧客の困難な要望に対し、どのように誠実に対応したかというエピソードを通じて具体化される。あるいは、「挑戦と創造」というビジョンが、ある技術者が既存の枠にとらわれずに新しい技術開発に挑み、失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返したプロセスを通じて体現される。
このように、理念やビジョンが「絵に描いた餅」ではなく、社員一人ひとりの血の通った行動として息づいていることを示すことで、社員は企業理念を「自分ごと」として捉え、組織への誇りと共感を深めることができます。
これらのネタ探しのアプローチは、単に面白い情報を探すのではなく、企業の「空気感」を構成する本質的な要素、すなわち社員の努力、協働、理念の実践を深く掘り下げ、それを社内発信の核とするものです。これにより、社員は自分たちの会社がどのような価値観を持ち、どのような「空気感」を大切にしているのかを肌で感じ、組織へのエンゲージメントを深めていくことができるのです。
―3、社内発信における「ネタつくり」の妙技/一体感をデザインする情報への昇華
発掘された「原石」としてのネタを、社員の心に響き、行動変容を促す「透明資産」として昇華させるには、独自の「ネタつくり」の妙技が必要です。それは、単なる情報伝達に留まらず、社員の間にポジティブな「空気感」と一体感をデザインするプロセスです。
ネタつくりの第一は、「共感を呼ぶストーリーテリング」の徹底です。社内発信においても、人間は事実の羅列よりも、感情が動かされる物語に強く惹きつけられます。情報局は、発掘したネタを、具体的な登場人物(社員)の感情や葛藤、そして成長のプロセスに焦点を当てた「物語」として紡ぎます。
例えば、あるプロジェクトの成功事例を伝える際、単に「〇〇プロジェクトが成功しました」と報告するのではなく、「〇〇さんが、あの時、どんな困難に直面し、チームの仲間とどのように協力し、どんな想いで乗り越えたのか」という人間ドラマを詳細に描くことで、他の社員は「自分も同じような経験がある」「あの人の頑張りが報われた」と共感を覚えます。このような物語は、社員間の心理的な距離を縮め、互いの努力を認め合う「空気感」を醸成し、組織全体の一体感を高める効果があります。
第二に、「ポジティブなフィードバックの可視化」と「感謝の循環」を促すことです。透明資産経営において、感謝の言葉やポジティブなフィードバックは、社員のモチベーションを維持し、組織の「空気感」を好転させる強力な要素です。情報局は、社員同士が互いに感謝を伝え合える仕組みを社内報や社内SNSで提供したり、経営層や上司から社員への具体的な感謝のメッセージを定期的に発信したりします。
例えば、「今週のグッドジョブ!」として、具体的な貢献をした社員とその内容を紹介したり、社員が自由に感謝のメッセージを投稿できるサンクスボードのようなコーナーを設けたりします。脳科学的にも、感謝の言葉を受け取った人の脳では、幸福感を高めるホルモンが分泌されやすくなると言われています。
これにより、社員は自身の貢献が認められていると感じ、さらに積極的に業務に取り組むようになり、感謝が感謝を呼ぶポジティブな「空気感」が社内に満ちていきます。
第三に、「経営層の人間性」と「ビジョンの共有」を親しみやすい形で伝えることです。経営層からのメッセージは、社員にとって企業の方向性を示す重要な情報ですが、時に硬く、距離を感じさせるものになりがちです。情報局は、経営層のメッセージを、単なる公式発表としてではなく、彼らの仕事への情熱、個人的なエピソード、あるいは社員への期待や感謝の気持ちを交えながら、より人間味あふれる形で伝えます。
例えば、社長が自らの失敗談を語り、そこから得た教訓を共有したり、社員からの質問にフランクに答えるQ&A形式のコンテンツを企画したりします。これにより、社員は経営層をより身近に感じ、経営の「空気感」を共有することで、組織への信頼感と一体感を深めることができます。
最後に、多様なチャネルの活用とインタラクティブな仕掛けを設けることです。社内発信は、単一のチャネルに限定せず、社員の働き方や情報収集のスタイルに合わせて多様なチャネルを使い分けることが重要です。例えば、全社員向けのニュースレター、部署ごとの進捗を共有する週次レポート、特定のテーマについて議論するオンラインコミュニティ、あるいは動画によるメッセージ配信など、コンテンツの内容や目的に応じて最適なチャネルを選定します。
さらに、一方的な発信だけでなく、社員がコメントや質問を投稿できる機能、アンケート機能、あるいはオンラインイベントでのリアルタイムな質疑応答など、社員が積極的に参加できるインタラクティブな仕掛けを設けることで、社員は「自分たちの情報局」として発信に主体的に関わるようになり、より活発なコミュニケーションの「空気感」が生まれます。
―結論/情報局が織りなす、社内の「空気感」という強固な基盤
透明資産経営における『情報局』は、社内において、単なる情報伝達の役割を超え、企業の「空気感」を意図的にデザインし、組織の強固な基盤を築く戦略的な要です。社員の小さな成功や日々の努力に光を当て、部署間の連携や知の共有を可視化し、企業の理念やビジョンを日常に落とし込むことで、社内発信のネタは無限に生まれます。
そして、これらのネタを共感を呼ぶストーリーで紡ぎ、ポジティブなフィードバックの可視化と感謝の循環を促し、経営層の人間性を親しみやすい形で伝え、多様なチャネルとインタラクティブな仕掛けで発信すること。この一連のネタつくりのプロセスを通じて、情報局は社員一人ひとりの心に深く働きかけ、組織へのエンゲージメント、帰属意識、そして共通の目標に向かう一体感を醸成します。
従来の社内コミュニケーションが業務効率化や情報統制に偏りがちであったのに対し、透明資産経営の情報局は、社員の感情と組織文化という、目に見えないけれど確実に経営に影響する「空気感」を最も重視します。社員が「この会社で働けてよかった」「自分は会社に貢献できている」と感じられる「空気感」こそが、離職率の低下、生産性の向上、そしてイノベーションの創出へと直結する、真の透明資産経営だからです。
情報局が織りなす社内の「空気感」は、企業が外部環境の変化に強く、しなやかに対応し、持続的な成長を実現するための、揺るぎない基盤となります。社員が生き生きと働き、互いに支え合い、共通の目標に向かって邁進する「空気感」こそが、企業の未来を切り拓く最も強力な原動力となるでしょう。情報局は、まさにその「空気感」をデザインし、育む責任と、無限の可能性を秘めているのです。
―勝田耕司
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