透明資産とは?

【透明資産を見つけよう】日本企業の未来を拓く「透明資産」経営~役割としての役職、人としての在り方、そして揺るがぬ社長の覚悟~

日本企業の未来を拓く「透明資産」経営~役割としての役職、人としての在り方、そして揺るがぬ社長の覚悟~

 

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

 

透明資産とは?業績に影響する「空気感」を意図的に設計デザインし運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた経営は、お客様と社員、従業員同士の信頼を高め、商品・サービスの独自性を強化し、持続的な成長につながる仕組みなのです。

さて、近年、日本企業を取り巻く環境は大きく変化しています。成果主義の浸透、働き方改革の推進、そしてハラスメントへの意識の高まりは、組織のあり方を根本から問い直しています。一方で、SNS上には転職を煽る情報が溢れ、労働者の権利を過度に主張する風潮も見受けられます。

 

こうした状況は、時に責任の所在を曖昧にし、組織の一員としての人としての在り方を見失わせる危険性をはらんでいます。このままでは、日本全体の労働力、ひいては日本の未来は大丈夫なのだろうか、という強い危機感が募ります。

 

今日は、こうした現代の課題に対し、「透明資産」経営がどのように有効な解決策となり得るのか、役職の捉え方、社長の役割、そして労働環境の変化がもたらす影響に焦点を当てながら、知見者の意見や研究を交えて考察していきます。

―1、役職は役割、上司と部下は「横」の関係へ~成果と人間性の両立~

 

従来の日本企業では、役職は絶対的な上下関係を意味し、上司の指示は絶対であるという「縦の論理」が支配的でした。しかし、現代の複雑で変化の激しいビジネス環境においては、この旧態依然とした関係性だけでは、組織の生産性や創造性を最大限に引き出すことは困難です。私たちは今、役職を「役割」として捉え直し、上司と部下の関係性を「横の関係」へと再構築する転換点に立たされています。

ここで言う「横の関係」とは、権限や責任がなくなることを意味するものではありません。リーダーシップ論の分野では、従来型の指示命令型リーダーシップから、メンバーの自律性を尊重し、成長を支援するサーバント・リーダーシップや変革型リーダーシップへの移行が提唱されています。

 

ロバート・K・グリーンリーフが提唱したサーバント・リーダーシップは、リーダーがまず奉仕者(サーバント)として部下に仕え、その成長を支援することで、結果的に組織全体の成果に貢献するという考え方です。このアプローチでは、上司は「部下を動かす存在」ではなく、「部下を活かす存在」へとその役割を変化させます。部下もまた、単に与えられたタスクをこなすだけでなく、自らの専門性や能力を最大限に発揮し、チーム目標達成のために自律的に貢献することが求められます。

この「横の関係」の根底にあるのは、相互の尊重と信頼です。組織心理学の分野では、心理的安全性の重要性が繰り返し強調されています。ハーバード大学のエドモンドソン教授は、心理的安全性を「チームのメンバーが、対人関係のリスクを恐れることなく、率直に意見を述べたり、質問したり、間違いを認めたりできる共有された信念」と定義しています。

 

上司が部下の意見に耳を傾け、たとえそれが自分の考えと異なっても、頭ごなしに否定せず、その背景にある意図を理解しようと努めること。部下もまた、上司に対して建設的なフィードバックを行い、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献すること。こうした相互作用を通じて、信頼関係が醸成され、心理的安全性の高い「空気感」が生まれます。

さらに、成果を追求するだけでなく、「人として所属する会社人としての在り方」が重要になります。現代社会において、企業は単なる経済活動の場ではなく、社員一人ひとりの人生に深く関わる存在です。社員が「この会社の一員であることに誇りを持てるか」「自分の仕事が社会に貢献していると感じられるか」といった、内発的動機づけが重要視されています。

 

デシとライアンの自己決定理論が示すように、人は「有能感」「自律性」「関係性」という基本的心理欲求が満たされることで、内発的動機づけが高まります。単に与えられた業務をこなすだけでなく、自らが主体的に仕事に関わり、他者との良好な関係の中で自身の価値を認識できる時、社員は真にエンゲージメントを高め、自らの成長と会社の発展を一体として捉えることができるのです。

役職が「役割」となり、上司と部下が「横の関係」で協働する組織では、社員は自身の専門性を活かしながら、人間性豊かな「会社人」として成長することができます。これは、単なる短期的な業績向上に留まらず、企業の持続的な成長と、社員一人ひとりの豊かな職業人生を両立させるための基盤となるのです。

―2、経営の羅針盤たる社長の存在~自らの人生を会社に込める覚悟~

 

私が提唱する「透明資産」を基盤とした経営を推進する上で、経営の舵をとり、自らの人生を会社に込めている社長の存在は別格です。社長は単なる最高経営責任者ではなく、企業の「空気感」を最も色濃く決定づける存在であり、その言動や哲学は、社員一人ひとりに深く浸透します。

社長は、会社のビジョンやミッションを言語化し、それを社員に浸透させるビジョナリー・リーダーとしての役割を担います。明確なビジョンは、社員に共通の目標意識と方向性をもたらし、日々の業務に意味と目的を与えます。心理学者のヴィクトール・フランクルは、著書『夜と霧』の中で、人間が困難な状況下でも生きる意味を見出すことの重要性を説きました。社長が示すビジョンは、まさに社員が自身の仕事に意味を見出し、困難に立ち向かうための精神的な支えとなります。

また、社長は組織の規範を示す存在でもあります。経営層の行動は、社員の行動規範に大きな影響を与えます。社長が社員を尊重し、感謝の言葉を惜しまず、時には自らユーモアを交えてコミュニケーションを取る姿は、社員が模範とすべき行動様式として組織全体に浸透していきます。

 

これは、社会学習理論が示すように、人は他者の行動を観察し、模倣することで学習するというメカニズムにも合致します。社長自身が「透明資産」経営の旗振り役として振る舞うことで、それが組織文化として定着していくのです。

しかし、社長の役割は、常に社員に寄り添う「優しい」リーダーであることだけではありません。時には、覚悟を持って厳しい決断を下すことも必要です。市場の変化に対応するための事業構造改革や、不採算部門の撤退など、痛みを伴う決断を迫られる場面も存在します。

 

そうした時、社長は「自らの人生を会社に込めている」という強い覚悟を持ち、社員に対してその決断の背景と未来への展望を誠実に説明する責任があります。この「覚悟」が社員に伝わることで、たとえ厳しい状況であっても、社長への信頼が揺らぐことはありません。

リーダーシップ研究の権威であるジェームズ・M・クーゼスとバリー・Z・ポズナーは、優れたリーダーの共通点として「信頼性」を挙げています。信頼性とは、「正直さ」「有能さ」「一貫性」「公正さ」から成り立っています。社長がこれらの要素を兼ね備え、言葉だけでなく行動でも示すことで、社員からの揺るぎない信頼を獲得し、組織を一体となって困難な局面を乗り越える力を生み出すことができるのです。社長はまさに、透明資産経営の羅針盤であり、その存在が企業の「空気感」の基盤を築いていると言えるでしょう。

―3、日本の労働市場に忍び寄る危機~過剰な保護と安易な逃避がもたらすもの~

 

最近の国内労働市場は、過剰とも思える労働者保護の法律や、転職を煽るSNS情報、そして転職業者の過度なアプローチによって、非常に複雑な状況に置かれています。こうした変化は、一部の労働者に「逃避する労働者」や「立場を勘違いする労働者」を生み出してしまっているのではないか、という強い危惧を抱かせます。

過剰なハラスメントチェックや労働法規の厳格化は、確かに労働者の権利保護には貢献しています。しかしその一方で、企業側が萎縮し、社員への指導や育成に二の足を踏むケースも散見されます。心理学の観点から見ると、人間は適度なプレッシャーや挑戦があってこそ成長するものです。過度な保護は、社員の成長機会を奪い、自己効力感を低下させる可能性があります。失敗を恐れて新しい挑戦を避けたり、困難な状況に直面するとすぐに他責にしたりするような「逃避」の傾向を助長しかねません。

また、SNS上では「嫌なら辞めろ」「もっと良い会社がある」といった情報が安易に拡散され、転職業者は常に「キャリアアップ」「高収入」といった魅力的な言葉で労働者にアプローチします。これは、確かに個人の選択肢を広げる側面はありますが、一方で「忍耐力や粘り強さ」といった、ビジネスにおいて不可欠な資質を軽視する風潮を生み出しているようにも見えます。困難な状況に直面した際に、すぐに「別の選択肢を探す」という安易な思考に陥りやすくなり、一つの組織で深くコミットし、課題を乗り越えていく経験が失われがちです。

こうした風潮は、労働者が「自分の立場を勘違いする」状況も生み出しています。企業の一員であるにもかかわらず、自らの権利ばかりを主張し、組織への貢献や責任を軽視する傾向が見られることがあります。彼らは、企業が単なる「自分の都合の良い場所」であり、合わなければすぐに乗り換えるべきものだと捉えがちです。これは、組織に対するコミットメントの欠如につながり、チームワークや一体感を損なう要因となります。

このような状況が続けば、日本全体の労働力は、国際競争力を失いかねません。粘り強く課題解決に取り組み、チームで協働し、困難を乗り越えていく力は、経済成長の糧です。しかし、安易な逃避や権利ばかりを主張する労働者が増えれば、企業は長期的な視点での人材育成に投資しにくくなり、結果として個々のスキルレベルも組織全体の生産性も低下する悪循環に陥るでしょう。このままで、日本は、世界の中でその存在感を維持し、発展し続けることができるのだろうか、という深刻な警告を発せざるを得ません。

―4、日本の未来を救う「透明資産」経営の重要性

このような日本の労働市場が抱える課題を解決し、労働力全体の底上げを図るためには、先に述べた「透明資産」経営の推進が極めて重要になります。

「透明資産」経営は、単に労働者を保護する法律や、短期的な成果だけを追い求める経営とは一線を画します。それは、社員一人ひとりが「人として」尊重され、安心して成長できる「空気感」を意図的に作り出すことに主眼を置いています。

まず、「役職は役割、上司と部下は横の関係」という意識改革は、社員に「やらされ感」ではなく「参画意識」をもたらします。心理的安全性のある環境では、社員は失敗を恐れずに意見を述べ、新しい挑戦ができます。これは、自律性を重んじる現代の労働者にとって、働く上での大きなモチベーションとなります。会社は単なる給与を得る場所ではなく、自己実現の場となり、結果としてエンゲージメントの高い、自律的な人材が育ちます。これは、安易な転職を考えるのではなく、困難な状況でも「この会社で乗り越えたい」という帰属意識を育む土台となるでしょう。

次に、社長が自らの覚悟を示し、ビジョンを共有することで、社員は「会社の一員としての誇り」と「仕事の意味」を見出すことができます。過剰な保護や安易な逃避の背景には、仕事に対する意味づけの希薄さや、会社への不信感がある場合も少なくありません。社長が会社に人生を懸けている姿勢を見せることで、社員は会社と自分との間に深い絆を感じ、困難な局面でも共に乗り越えようとする強固な一体感が生まれます。これは、SNSの情報に惑わされず、目先の利益だけでなく長期的な視点で自身のキャリアを会社と共に築き上げようとする意識を育むでしょう。

また、「透明資産」経営が推奨する「ユーモアのあるコミュニケーション」や「感謝の積極的な表現」、そして「豊かなリアクション」は、日々の人間関係を円滑にし、職場のストレスを軽減します。過度なストレスは、社員のパフォーマンス低下だけでなく、心身の健康にも悪影響を及ぼします。ポジティブなコミュニケーションが飛び交う職場は、社員が安心して働ける環境であり、結果として離職率の低下にも繋がります。これは、労働者保護の法律が目指す「安全な労働環境」を、法律に縛られるだけでなく、組織の内側から自律的に作り出すことに他なりません。

5、日本企業再生の鍵を握る「空気感」のデザイン

日本は今、少子高齢化、労働力人口の減少、グローバル競争の激化といった、様々な課題に直面しています。この中で、労働者が過剰な保護に甘んじ、安易な逃避を選ぶようでは、国家としての競争力を維持することは困難です。

こうした状況を打開し、日本企業の活力を取り戻すためには、単なる制度や法律の改正だけでなく、「空気感」という目に見えない資産を意図的に設計デザインし、運用する「透明資産」経営の哲学が不可欠です。役職を役割と捉え、上司と部下が横の関係で協働し、成果だけでなく人としての在り方を大切にする。そして、自らの人生を会社に込める社長の覚悟が、その羅針盤となるのです。

「透明資産」経営は、社員一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出し、困難を乗り越える粘り強さと、組織への深いコミットメントを育むための、最も本質的なアプローチです。これは、単に「働きやすい職場」を作るだけでなく、社員が自律的に成長し、企業と共に未来を創造していくための基盤となります。

今こそ、日本企業は「透明資産」経営を深く理解し、実践することで、働く一人ひとりが輝き、結果として日本全体の労働力が強く、しなやかになる未来を切り拓くべき時なのです。

 

 

―勝田耕司

 

 

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