透明資産とは?

【透明資産を見つけよう】自責の文化が築く透明資産経営

自責の文化が築く透明資産経営

 

こんにちは、勝田耕司です。

 

現代のビジネスにおいて、企業が直面する課題は複雑化し、変化のスピードは増す一方です。このような環境下で、単に指示を待つ社員や、問題が発生した際に責任を他者に転嫁する「他責」の姿勢を持つ社員ばかりでは、組織は停滞し、成長の機会を失ってしまいます。真に強い企業とは、社員一人ひとりが自らの役割と責任を深く理解し、問題に直面した際に「自分に何ができるか?」と問い、自ら解決に向けて行動する「自責」の文化が根付いている企業です。

 

この「自責」の文化こそが、企業の人財力や組織としての学習能力といった、財務諸表には現れない透明資産経営を最大化する鍵となります。透明資産経営の視点から見れば、自責の社員は、単なる労働力ではなく、企業の価値を創造し、高めるための重要なエンジンとなるのです。では、どのようにすれば、他責ではなく自責の社員を育て、企業の透明資産経営のパワーを最大限に引き出すことができるのでしょうか。

 

自責の文化を育む第一歩は、社員が自社の存在意義や理念という「なぜ、自社があるのか?」を深く理解し、それを自分ごととして捉えることです。単に「給料をもらえればいい」「休暇取得できてばいい」「残業すくないほうがいい」といった自分の要望だけを要求するのではなく、「何のために?」目の前の仕事をするのかという根源的な問いに対する明確な答えを持つことが、社員の当事者意識を育む土台となります。

 

この経営の「なぜ?」「何のために?」を最も強く、そして深く共有できるのは企業のトップである社長自身です。社長が自身の創業の想い、企業の使命、社会に提供したい価値を、自らの言葉と生き様を通して社員に伝え続けることで、社員は自らの仕事が持つ大きな意味を理解します。例えば、社長が「我々は単に製品を売るのではなく、お客様の課題を解決し、その未来を豊かにするために存在している」と語り続けることで、社員は問題に直面した際にも、その解決策を「お客様の未来のため」という視点から自律的に考えるようになります。

 

他責の社員は問題の原因を外部に求めがちですが、理念が深く浸透している社員は、問題解決の糸口を自らの役割の中に見出そうとします。この目的意識の共有こそが、自責の社員を育むための揺るぎない精神的基盤となるのです。

 

自責の社員を育てるためには、社員が自ら判断し、行動できる権限移譲が不可欠です。権限が与えられなければ、社員は常に指示を待ち、問題が発生しても上司の責任と考えがちになります。しかし、適切な権限と共に責任を与えることで、社員は自身の業務に対するオーナーシップを持ち、問題解決に積極的に取り組むようになります。

 

同時に、失敗から学ぶ文化を醸成することが極めて重要です。新しい挑戦には失敗がつきものです。失敗を過度に咎める文化では、社員は失敗を恐れて行動しなくなり、結果として他責の姿勢へと陥りやすくなります。経営層は、失敗そのものを責めるのではなく、その原因を究明し、学びとして次に活かす姿勢を明確に示す必要があります。

 

例えば、問題が発生した際に「誰のせいか?」を問うのではなく、「なぜ起こったのか」?「どうすれば防げたのか?」「どう改善するか?」「次は何をすべきか?」という未来志向の議論を促すことで、社員は安心して挑戦し、そこから得られた教訓を自らの成長に繋げることができます。この挑戦と学びを許容する空気感が、社員の当事者意識という自責の念を強く育む土壌となるのです。

 

自責の社員を育てるためには、社員一人ひとりの役割と期待値が明確に共有されていることが大前提となります。自身の責任範囲が曖昧であれば、「それは私の仕事ではない」と他責に陥りやすくなります。経営層やリーダーは、各社員の職務内容、目標、そして組織の中で求められる貢献について、具体的に、かつ定期的にコミュニケーションを取る必要があります。

 

役割が明確であれば、社員は自身の業務に対する責任感を強く持ち、問題が発生した際にも「これは自分の問題だ」と認識しやすくなります。また、期待値が明確であれば、社員は目標達成に向けて自律的に行動計画を立て、自ら進捗を管理するようになります。ここで重要なのは、単に「やること」を指示するだけでなく、「なぜそれが求められるのか」「それが会社全体にどう貢献するのか」という意味づけも同時に伝えることです。

 

この意味づけが、社員の深いレベルでのコミットメントを引き出し、自責の行動を促します。明確な役割と期待値の共有は、社員の責任感と自律性という透明資産の源泉を育み、組織全体の生産性向上にも直結します。

 

自責の社員を育てる上で欠かせないのが、建設的なフィードバックと継続的な対話を通じて、社員の内省を促すことです。フィードバックは、単に評価を伝えるだけでなく、社員自身の行動を振り返り、改善点や成長の機会を自ら発見できるように導くためのものです。問題が発生した際も、一方的に解決策を指示するのではなく、「あなたはどう考えるか?」「次にどう活かすか?」といった問いかけを通じて、社員自身の思考を深掘りさせることが重要です。

 

リーダーは、社員の意見を傾聴し、彼らが抱える課題や懸念に対して共感を示しながら、解決への糸口を共に探る姿勢を見せることで、社員は安心して自らの課題を共有できるようになります。この対話を通じて、社員は自分の行動がもたらす結果について深く考え、自らの改善点を見つける力を養います。他責の社員は問題の根本原因から目を背けがちですが、内省を習慣化する社員は、常に自身の行動を客観的に見つめ直し、自己成長へと繋げることができます。この内省を促す対話の文化が、社員の自己成長力という透明資産の源泉を育み、組織全体の学習能力を高めることになります。

 

自責の社員を育てる上で、彼らの成功体験を組織全体で共有し、適切に承認することは、ポジティブな循環を生み出す上で不可欠です。自ら課題を発見し、解決に向けて行動した結果、たとえ小さなことでも成功を体験することは、社員の自信とモチベーションを大きく高めます。この成功体験の積み重ねが、「自分にもできる」「次も挑戦しよう」という意欲を育み、自責の行動を強化します。

 

リーダーは、社員が自律的に行った行動や、困難な状況で発揮された当事者意識を具体的に褒め、その貢献を明確に承認する必要があります。これは、単に成果を称えるだけでなく、そのプロセスで発揮された自責の姿勢そのものに着目することです。例えば、「この問題に対して、君がすぐに状況を把握し、自ら関係部署に働きかけたおかげで、大きなトラブルにならずに済んだ。素晴らしい当事者意識だ」といった具体的な承認は、社員の自尊心を高め、更なる自責行動へと繋がります。このポジティブな承認の空気感は、社員の主体性や貢献意欲という透明資産の源泉を育むだけでなく、他の社員にも良い影響を与え、組織全体に自分も貢献しよう!という前向きな風土を醸成するのです。

 

他責ではなく自責の社員を育てることは、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。権限移譲して勘違いする社員もいるかもしれませんし、未来に焦点をあてた質問に中々気づかない社員がいるかもしれません。しかし、その土台は、経営者の揺るぎない理念から始まり、権限移譲、明確な役割設定、建設的なフィードバック、そしてポジティブな承認に至るまで、組織全体で一貫したアプローチを継続的に実践することで少しづつ少しづつ変化が見えるのです。

 

社員一人ひとりが一つ一つの事象を自分ごととして捉え、課題に向き合い、自ら解決策を考え、行動する自責の文化は、企業に強靭な人財力と組織としての学習能力という透明資産経営に大切な視点をもたらします。この透明資産経営こそが、変化の激しい時代においても企業を力強く前進させ持続的な成長と発展を約束する揺るぎない基盤となるのです。

 

―勝田耕司

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