透明資産とは?

【透明資産を見つけよう】空気で組織は変わる──“魂の宿る経営”が育てる透明資産の力

空気で組織は変わる──“魂の宿る経営”が育てる透明資産の力

 

こんにちは、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

 

現代の企業経営において、売上や利益といった数値だけでは測れない価値が注目され始めています。それが「空気感」に代表される、目に見えない企業の雰囲気や文化、そして人と人との関係性に宿る力、つまり透明資産経営です。この透明資産経営こそが、企業の長期的な成長と持続性を左右する、本質的な経営資源だと私は考えています。

 

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計デザインし運用する仕組みのことです。単なる偶然や自然発生で生まれた「空気感」ではありません。それは、自社ならではの「空気感」を意図的につくるために、経営者の言葉や行動、姿勢に込められた「魂」が社員に浸透し、やがて組織全体に共有されていくことで育まれるものです。経営の本質は、数値では測れないこの見えないパワーをどう組織の中で醸成していくかにかかっているのです。

 

理念やビジョンは、会社案内やウェブサイトに記載されているだけでは機能しません。経営者自身が、自らの言葉で語り、行動を通じてその理念を生きている姿を社員が肌で感じることで、ようやくその本質が伝わるのです。「なぜこの事業をするのか?」「どんな社会をつくりたいのか?」──そうした問いに対する経営者の想いが、言葉として社員に届くとき、そこに企業の魂が宿ります。

 

ある地方企業では、三代目社長が創業以来守り続けてきた“品質第一”という価値観を、日々の朝礼で語り続けていました。社長は製品の細部にまで目を配り、工場を回りながら現場の声に耳を傾け、時には苦労話も交えて社員と語り合います。その姿を見て、社員たちは「社長が言っていることは本気だ」と理解するようになります。そして、自分たちも同じ想いでお客様に製品を届けたいという気持ちが芽生え、仕事の精度やこだわりが自然と高まっていったのです。

 

このようにして生まれる職場の空気感は、表情や挨拶、顧客対応、意思決定のスピードなど、日常のあらゆる場面に現れます。言葉にしなくても感じ取れる“感じの良さ”がそこには確かに存在するのです。そしてこの空気が、企業文化として根づき、やがて社外にもにじみ出していきます。

 

空気感の良さは、社員同士の関係性にも現れます。自由に意見が言える、ミスを責めるのではなく次に活かす風土がある、他部署と協力しながらプロジェクトを進められる──そうした風土は、心理的安全性を高め、社員の主体性とチームワークを引き出してくれます。透明資産経営とは、こうした職場に流れる“目には見えない信頼の空気”の積み重ねによって昇華されていくのです。

 

さらに、空気感はお客様にも伝わります。ある中堅アパレル企業では、社員が「お客様の日常に小さな彩りと喜びを届けたい」という理念を共有していました。その企業では、接客時に単に商品をすすめるのではなく、「お客様の今日の気分に合う色は何か」「どんな場面で着たいと思っているのか」といった問いを自然と交わしていきます。その結果、お客様は「このブランドは自分のことをわかってくれている」と感じ、店舗を離れてもブランドへの愛着が残るようになります。

 

このようなお客様との関係性は、単なるリピート購入だけでなく、友人や家族への紹介、SNSでの拡散など、目に見えないかたちで企業のブランド価値を高めていきます。商品やサービスの品質とともに、“接する人”の印象が企業の信頼を決定づけているということです。

 

人が自然と集まる企業、辞めたくないと思える企業には、共通して温かい空気感があります。とりわけ採用の現場では、雰囲気の良さや理念への共感が、給与や待遇以上に動機づけとなるケースが増えています。いわゆる“なんとなく感じがいい会社”には、自然と優秀な人材が集まり、その人材がさらに空気を良くする──この好循環が、企業にとっての強力な競争優位となるのです。

 

では、こうした空気感はどうすれば意図的に育てられるのか。私は「空気感」を意図的につくる仕組み透明資産の構造を5つ伝えており、その構造の一つとして社内の学びの舎、つまり「社長塾」と「社内学校」というふたつの運用を提案しています。

 

社長塾は、経営者自らが理念や信念、創業の想いを語る場です。一方的な訓示ではなく、対話を重ねながら、社員一人ひとりの心に火を灯す場として運営されることで、企業の“あり方”が社員に浸透していきます。経営者の本音が聞けることで、社員は「この人のもとで働きたい」と思えるようになります。

 

社内学校では、現場のリーダーが講師となって、実務の“やり方”を体系的に教えます。ここで重要なのは、単に業務スキルを伝えるだけでなく、その背景にある「なぜそれが大切なのか」という価値観もセットで共有することです。理念とスキルが結びつくことで、社員の行動がブレなくなり、組織全体の一体感が生まれます。

 

たとえば、ある飲食チェーンでは、社長塾で「五感で楽しめる食の提供」という理念を語り、社内学校では「盛り付けの美学」や「お客様の言葉に耳を傾ける姿勢」などをロールプレイで学びます。この一貫性ある教育が、どの店舗でも共通の空気感をつくり、お客様から「どの店でも居心地がいい」と言われるブランド力に繋がっているのです。

 

透明資産の構造は、一朝一夕で築けるものではありません。けれども、経営者の信念と言葉、そして社員との対話の積み重ねがあれば、確実に組織の中に根づいていきます。空気を変えることは、組織を変えること。理念が人に宿り、その人が文化をつくり、文化が企業の未来を形づくっていくのです。

 

企業が未来にわたって成長し続けるためには、目に見えないものこそ大切にしなければなりません。数字に表れない“空気”を、意図的に育てること。それがこれからの時代の経営に求められる、最もリアルで力強い戦略だと、私は確信しています。

 

 

―勝田耕司

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