外食業界の“七不思議”ではないですが、意外に思われることがあります。それは、ハンバーガーのファストフード「バーガーキング」が、なぜ日本で成功を収められないかということです。
ご存知の方も多いと思いますが、バーガーキングは全世界で店舗展開するファストフードの代表的なチェーンです。本拠地の米国における店舗数は7000店を超え、1万3000店以上を擁するマクドナルドと比べれば見劣りするものの、ハンバーガー業界では大きなシェアを持っています。
看板メニューである「ワッパー」は、マクドナルドの「ビッグマック」と並ぶハンバーガー業界の代表的なメニュー。ワッパー=ボリュームたっぷりというイメージは市場に広く浸透しており、そのブランド力はきわめて高いものがあります。
ところがこのバーガーキング、日本での展開がなかなか軌道に乗りません。日本に初進出したのは1993年のこと。西武鉄道グループの西武商事が日本での展開権を得て、西武線沿線を中心に多店化を進めました。
高田馬場駅前などヒット店もいくつか出ましたが、展開は早々に頓挫。その後はJT(日本たばこ産業)やロッテリアの傘下に入るなど経営は紆余曲折を重ね、現在は投資ファンドのアフィニティ・エクイティ・パートナーズが経営権を持っています。
現体制になってからは展開スピードが上がりましたが、現在の日本での店舗数は約150店。これはマクドナルドの20分の1に過ぎません。日本進出から30年近くが経過していることを考えると、とても順調とはいえない状況にあります。この30年の間にマクドナルドは店舗数を3倍近くに伸ばしましたから、その差は歴然です。
この違いを生んでいる要因は何かといえば、私は「透明資産」にあると思います。バーガーキングはもともと直火焼きのパティを使ったハンバーガーが売り物でした。直火焼きにすることで独特の香りと食感が生まれ、これがマクドナルドとの差別化につながっていたのですが、日本では展開の過程でその強みを捨て去ってしまいました。
設備投資がかさみスタッフのトレーニングも大変なためですが、結果としてバーガーキングならではの個性が失われたのです。その個性こそ、お客様にとって「マクドナルドではなくバーガーキングを選ぶ理由」に他なりません。選ばれる理由=個性を持ち続けていれば、それが独自の透明資産へと育っていったはずです。
一方のマクドナルドは、このコラムでも取り上げているように、マクドナルドならではの“体験価値”を高める取り組みを続けています。そうして得た顧客からの信頼こそが透明資産。この資産価値の差がそのまま、バーガーキングとの店舗数の差に表れています。
ー勝田耕司
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