透明資産とは?

【透明資産を見つけよう】2025年サッカーJ1リーグ優勝の鹿島アントラーズの静かな革命から紐解く透明資産経営5つの特徴

2025年サッカーJ1リーグ優勝の鹿島アントラーズの静かな革命から紐解く透明資産経営5つの特徴

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

J1優勝の裏側にある「静かな革命」と、目に見えない資産の力

2025年、鹿島アントラーズは9年ぶりにJ1リーグの頂点に立ちました。この勝利は、単なる監督や選手の技術、戦術の結果ではありません。親会社であるメルカリの経営参画以降、約5年間で着実に進められてきた「静かな革命」の集大成です。

その核にあったのは、「空気感」「文化」「信頼」といった、財務諸表には載らない『透明資産』を、クラブ全体で意図的に設計し直したことにあります。

私たちは、企業の成功を「売上」「利益」「市場シェア」といった目に見える数字で評価しがちです。しかし、鹿島の事例が示すのは、真の勝利は、その根底にある「組織の空気」の質によって決まるという法則です。

「空気」が変わると、未来が自然と動き出す。経営の空気は偶然に任せるのではなく、意図的に設計デザインできる 。

本コラムでは、鹿島アントラーズのクラブ運営に見られる5つの特徴を、『透明資産』経営の5大メリットや5つの構成要素といったフレームワークと照らし合わせながら分析し、「空気のデザイン設計」が、いかに持続的な成長と勝利の「勝ち癖」を生み出すかを深掘りします。

―1、空気のデザイン設計の「軸」となる理念の徹底

鹿島アントラーズの優勝を支えた核となるのは、「すべては優勝のために」という基本理念の共有です。この一貫した哲学こそが、組織全体に流れる「空気」の温度を定め、日々の行動基準を統一する、まさに『透明資産』経営の「軸」です。

経営理念の「空気化」と浸透

『透明資産』経営において、理念やビジョンは、壁に貼られた言葉ではありません。それは「感じられる」状態、すなわち、社員の表情や言葉、職場の雰囲気ににじみ出ている状態 であることが重要です。

・鹿島の事例
「すべては優勝のために」という理念は、クラブに関わる全員が共有し、日々の業務に取り組む姿勢として徹底されていました。これは、理念が形骸化せず、行動基準として組織の空気になっている状態を示します 。

・透明資産の法則
社員は、理念を語ってもらうのではなく、「空気の中でどう扱われているか」や「社長がどんな意図で存在しているか」を鋭く感じ取ります。この社長の「意図」が一貫していることが、ブレない空気をつくります。

空気を活かすために社長がやるべきこと

空気感を経営に活かすために社長がやるべきことが明確になることは、『透明資産』経営推進の一つです。

鹿島の事例では、親会社メルカリの経営参画という変革期において、「優勝」という最もシンプルな目的に立ち返り、全員に共有できたことが、社長(または経営トップ)の最大の役割を果たしました。

それは社長と会社の軸を一致させて、経営に影響する空気感をつくり出し組織を変革します 。

理念が統一された空気感は、従業員同士の「信頼関係」を築き、最終的に「商品・サービスの独自性(=チームの戦術やプレースタイル)」を高める仕組みへと繋がります 。

―2、データとテクノロジーが生む「信頼の空気」

メルカリのIT企業としてのノウハウは、データに基づいた客観的な経営判断やマーケティング施策に活用されました。これは、一見「非情なデータ駆動型経営」に見えますが、実は組織内に強固な「信頼の空気」を構築する上で不可欠な『透明資産』です。

客観的なデータによる「公平な空気」の創出

組織内で「空気が重い」と感じられる要因の一つに、評価基準や意思決定のプロセスが不透明であることが挙げられます 。感情論や属人的な判断が蔓延すると、社員は不信感を抱き、挑戦よりも保身を優先する空気が生まれます 。

・鹿島の事例

データに基づいた客観的な経営判断は、意思決定の透明性を高め、「誰の意見が通るか」ではなく「何が正しいか」で判断される公平な空気を創出します。これは、選手育成や戦術選択にも一貫性を与え、チーム内の「なぜ?」という疑問を解消し、選手・スタッフ間の信頼を深めます。

・透明資産の原則

「空気」はコントロールではなく、信号であり、社長の意志が無意識に伝わっている状態です 。データ活用は、その**「意志」を客観的な事実で裏打ちし、組織全体への信号の明瞭度を高める**役割を果たします。

デジタル戦略による「共感と絆の空気」の強化

ファン・サポーターの体験向上を狙ったデジタル戦略は、お客様との絆を深める仕組みという『透明資産』の機能に直結します 。

・鹿島の事例
デジタル戦略は、クラブとサポーターの間に「常に繋がっている」という空気感を創り出します。試合結果だけでなく、クラブの理念や選手のストーリー、地域との取り組みを共有することで、サポーターは**「この会社(クラブ)を応援したい」**という感情的ロイヤリティを高めます 。

・透明資産経営の特徴
共感で売上を伸ばす。機能や価格だけで選ぶのではなく、「この会社独自の雰囲気や価値観が好きだから」という理由で選ばれる状態 を創り出すことが、中長期的な売上・利益アップにつながります 。デジタル戦略は、この共感の空気を社外に発信する装置として機能したのです。

3、「三位一体」が創る、強靭な『透明資産』構造

鹿行地域5市をホームタウンとし、行政、地域、サポーターが「Football Dream ONE」というスローガンのもと、一つの夢を共有する「地域との三位一体での取り組み」は、クラブという組織の「在り方」そのものを定義し、揺るぎない『透明資産』構造を築きました。

『透明資産』の源泉:地域との「共創の空気」

『透明資産』の根幹は、その組織の「らしさ」や「独自性」を掘り起こし、資産に変えることにあります 。鹿島アントラーズにとって、その最大の源泉は、長年培ってきた地域との強固な関係性です。

・鹿島の事例
「メルカリスタジアム」を中心とした地域経済の活性化へのコミットメントは、クラブが地域社会にとって単なるスポーツクラブではなく不可欠な存在であるという空気感を創出します。この共創の空気は、クラブが苦しい時でも地域が支えるという強靭な基盤となります。

・透明資産の法則
組織の「らしさ」や「空気感」の源泉を掘り起こすには、「社長のストーリー」や「商品・サービスを生み出した物語」といった要素を言語化し、共有します 。鹿島の事例では、「地域と共にある歴史」そのものが、誰にも真似できない最強のストーリーであり、最大の『透明資産』の源泉となっています。

『透明資産』の5大構成要素との連携

『透明資産』を構成する5つの要素のうち、「社長のストーリー」と「情報局」は、この地域連携において最も重要な役割を果たします 。

・社長のストーリー
クラブのリーダー(社長や監督)が、地域やファンにどのような想いで勝利を目指しているかを語ること 。

・『透明資産』情報局
地域との活動や、サポーターの声を積極的に社内外に発信・記録する場 。

これにより、クラブは「遠い存在」ではなく、「生活の一部」であるという「空気」を継続的に供給し、熱狂的なファン(ロイヤルカスタマー)を増やし続けます 。

―4、人が集まり、育ち、辞めなくなる「育成の空気」

鬼木達監督のもと、チームは一貫した戦術と選手育成に取り組み、クラブアカデミーのトレーニング環境整備など、将来を見据えた投資も行いました。これは、「人を育てるのではなく、空気を育てる」という『透明資産』運用戦略 の本質を突いています。

育成環境が生む「挑戦と成長の空気」

選手が育たない、社員が定着しないという課題は、多くの場合、個人や制度の問題ではなく、組織に流れる「空気」に原因があります 。

・鹿島の事例
アカデミーへの投資や一貫した戦術の徹底は、「クラブが自分たちの成長に本気で投資している」という信頼の空気を選手に感じさせます。この空気は、選手の内発的動機を引き出し、やらされ感ではなく自分ごととして練習や試合に取り組む姿勢を促します 。

・透明資産の法則
採用率・定着率アップ。給与や待遇面ではない独自の魅力、すなわち「達成感」「連帯感」「認められている感覚」といったポジティブな空気感が、働く人にとってかけがえのない価値となります。この働き甲斐のある社内空気感が整うことで、優秀な人材が集まり、長く貢献する環境が整うのです 。

監督・選手一体化が生む「チームの呼吸」

監督と選手が一体となって戦う「チームの呼吸」は、社内会議や部署間の連携において最も重要視されるべき「空気」の質です 。

・透明資産の法則。組織全体の「なめらかさ」は、空気の質に表れます 。指示がなくても必要なことが自然に行われる、コミュニケーションが摩擦なく交差する、成果の出る動きが無理なく連鎖する 。

・空気を整える人は、声を張り上げたり、偉そうに仕切ったりする人ではなく、場のエネルギーを整える人です。鬼木監督のもとで育まれた一体感は、まさにリーダーが「整える在り方」で空気を導き、選手一人ひとりが「整える力」を発揮した結果と言えます。

―5、経営基盤強化とブランド価値向上に見る「未来への継承」

メルカリの経営基盤強化への注力や、売上100億円を目指す目標設定は、『透明資産』が「持続的成長の土台づくり」 という長期的な目標と密接に関わっていることを示します。

経営基盤の安定が生む「確信の空気」

「業績はいいのに、何かが足りない気がする」。この不安の多くは、経営が数字に偏り、未来への確信が持てないことにあります。

・鹿島の事例
経営基盤の強化は、選手やスタッフに対し「このクラブは未来も安定して成長する」という「確信の空気」を供給します 。これにより、彼らは目先の不安に囚われず、優勝という高い目標に集中できるようになります 。

・透明資産の法則
経営の本質は、目に見える数字を追いながら、目に見えない価値を育てていく営みです 。好調な今こそ、未来の不安に備える最大のチャンスであり 、「空気」を経営の軸に据えるという戦略が、これからの時代に欠かせないのです 。

『透明資産』の継承

Jリーグのクラブ経営ガイドライン(2025年改訂版)に沿った経営基盤の強化は、「会社の最も重要な空気をつくる装置ごと継承できる」という『透明資産』の機能に繋がります。

・透明資産の法則
社長交代やM&A(事業承継)の際、最も懸念されるのは、長年培ってきた「会社の空気」や「文化」が失われることです 。『透明資産』を仕組みとして定義し、可視化することで 、新しいリーダーやM&A先の企業が、*なぜこの会社はこれまで成長してきたのか?という最も重要な要素を深く理解し、スムーズに事業を継続・発展させることができます 。

・鹿島の事例における「静かな革命」
まさにこの「会社の空気感を醸成する装置」を、IT企業としてのノウハウを活用して論理的かつ体系的に再設計したことに他なりません。

―まとめ|経営者は「空気のデザイン設計士」になれ

鹿島アントラーズの2025年J1優勝は、成果とは、技術の結果ではなく空気の結果であるという『透明資産』経営の本質を雄弁に物語っています。

・「夢の設計」が組織の意図を統一し、
・「地味な継続」が組織の信頼を積み上げ、
・「整える力」が社員の内発的動機を引き出し、
・「データによる透明性」が公平な空気感を創出したのです。

あなたの会社に流れる「空気感」は、偶然にできたものではなく、過去の習慣と現在の意図によって設計されています。

社長がどんな夢を掲げるかで、会社の空気は変わる。その夢が、社員の行動を変え、顧客の心を動かし、社会に信頼を生む。

経営者の最も重要な役割は、この空気のデザイン設計士になることです。見えない資産を意図的に整える覚悟こそが、あなたの会社を、好不況に左右されない「勝ち癖」を持つ組織へと変革する唯一の道なのです。

―勝田耕司

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