全国各地に多くの観光客が訪れた今年のゴールデンウィーク。観光業は久々の活況に沸きましたが、外食業界も4年ぶりに忙しい時期を過ごしました。
観光地が大変な人出になることを見越して、旅行は控え、連休中の手軽なレジャーとして外食をしようという人も多かったようです。
いずれにしてもゴールデンウィークは、経済の本格回復に向けてスタートをきるうえで絶好の機会になりました。
ただ、この活況が一過性のものであってはいけません。親しい人や、久しく会えなかった人と一緒に外食をして、外食本来の楽しさを再認識したという人が多かったと思いますが、そうした人々を固定客としてしっかりとつなぎとめる必要があります。
それを実現する鍵は、お客様が店に期待するものをきちんと提供することです。
まだコロナ禍が収まる前から、外食業界はたびたび値上げをしてきました。さまざまなコストの高騰を踏まえて、やむを得ないことではありましたが、客数が回復しない中での値上げは不安材料でした。
そして実際に、久々に外食をしてみて「思っていたよりも支払額が多い」と感じたお客様は多かったのではないでしょうか。
その価格に見合う価値を感じていただければいいですが、料理のクオリティが低かったり、サービスに不行き届きがあったりすれば、お客様の期待を大きく損ねる結果になります。
それでは継続した支持を得ることはできず、活況は一過性のものに終わってしまいます。
大切なことは、店の売り物は何かをしっかりと定め、その価値を磨くことです。これを意識して継続している外食チェーンは、この間の価格戦略においても慎重な姿勢を貫いています。
代表的な例が「サイゼリヤ」であり、大衆中華チェーンの「日高屋」でしょう。
サイゼリヤは昨年の秋に“価格凍結宣言”を出し、値上げの動きに追随しない姿勢を明らかにしています。税込300円の「ミラノ風ドリア」に代表される、誰もが手軽に注文できる価格こそが、お客様がサイゼリヤに期待するものであると確信しているからです。
日高屋もまた、同様の考え方を貫いています。昨年から今年にかけて複数回の値上げを実施していますが、定番メニューである「中華そば」はずっと390円に据え置いています。
ちょっと小腹が空いた時も、複数のメニューを組み合わせて食べる時も、飲んだ後の締めにも、中華そばは実に重宝するメニューです。
そうした動機を摑むためには、抵抗なく注文できる価格でなければなりません。そうした期待に応えようという考えが、この価格に表れています。
何をもってお客様の期待に応えるか。それこそが店の“売り”であり、外食業復活のためにもっとも大切にすべきものなのです。
ー勝田耕司
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