飲食店の経営においてもっとも大切なのは「顧客本位」という考え方です。お客様こそが主役であり、お客様の楽しさや快適さ、満足感を追求することが成功の絶対条件です。ゲコノミニケーションを実践するうえでも、そのことは不可欠になってきます。
コロナウィルス禍は依然として厳しい状況が続いています。お客様がコロナ禍前と同様に飲食店を利用できるようになるのは、もう少し先のことになりそうです。でも、そういう期間が長引けば長引くほど、お客様は自由に外食ができることを待ち望むようになるはずです。コロナが終息した暁には、それまで以上に「外食を楽しみたい」というニーズが大きくなることでしょう。
飲食店は、そのニーズに十分に応えなければなりません。そして、より大切なのは「すべてのお客様が主役として、存分に外食を楽しめるようにする」ということです。これまでお話ししてきたように、ゲコノミニケーションを実践することによって、それが可能になります。なぜならゲコノミニケーションは、お客様とお客様の間にある“見えざる壁”をなくすことにもつながるからです。
これまでゲコ(飲めない人、飲まない人)とノミ(飲む人)との間には、この壁がありました。それと同時に、ある種の主従関係もあったと思います。職場関係の宴会などでは、とくにそうでしょう。あくまで主役はノミで、ゲコは場の雰囲気を壊す“のけ者”という意識があり、それが自ずと行動にも表れてきました。飲めない人に対して飲酒を強要する「飲酒ハラスメント」も、こうした意識がベースにあって引き起こされたことに他なりません。
それは決して、人間として正しい行動ではありません。人生の目的は幸福感の追求ですが、それは自分が幸せになることだけではないのです。他人の考えや行動を尊重し、その人の幸せも実現してこそ本当の意味での幸福感が得られます。いかなる種類のものであれ、ハラスメントが悪とされるのは、それが幸福感という人間にとっての普遍的な価値を損なうものだからです。
ゲコノミニケーションを実践し、ゲコとノミの間にある壁をなくすことによって、どちらのお客様の幸福感も追求することができます。何より大切なのは、お客様の中に「相手のことを尊重する」という意識が生まれることです。
そのためには冒頭に述べたように、ゲコノミニケーションの場を提供する飲食店の側に「お客様こそが主役である」という考え方がなければなりません。
お客様と店が一体となって、幸福感を追求する。その幸福感に溢れた店の雰囲気こそ、もっとも価値ある透明資産です。
ー勝田耕司
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