コロナウィルス禍が広がって以降、外食大手の中でもっとも“withコロナ”を意識した取り組みを続けてきた企業といえばワタミ㈱が挙げられるでしょう。
小中高校の一斉休校要請を受けて、いち早く「ワタミの宅食」で子供への弁当無料提供を行なったことは本コラムでもお伝えしました。
その後も焼肉食べ放題の新業態「かみむら牧場」の開発、居酒屋業態から「焼肉の和民」への転換と、矢継ぎ早に新戦略を打ち出し実行しています。
コロナ禍が起こる直前に経営に復帰した創業者、渡邉美樹氏のリーダーシップがいかんなく発揮されたといえますが、このスピーディさはワタミという会社の特徴であり、いわば企業の「DNA」です。そして、このDNAこそ同社の「透明資産」に他なりません。
もうひとつ、ワタミのDNAといえるのが徹底した顧客志向です。お客様のためになることは、なんでもやる。ブラック企業批判が起こった時に槍玉に挙げられ、その後に同社の経営理念から削除された「365日24時間死ぬまで働け」という一文も、顧客志向が極端な形で表現されたものといえます。
さすがにその表現はいまの時代に許されるものではありませんが、常に顧客満足を追求するという企業姿勢は特筆すべきものといえます。
A4ランクの和牛肉食べ放題を打ち出したかみむら牧場のお値打ち度には驚かされましたが、今後の主力業態と位置づけている焼肉の和民でもコストパフォーマンスを徹底追求しています。
一番安い「わいわいカルビコース」(税込3168円)で55品、看板メニューの「和民カルビコース」(同3828円)では倍の110品が食べ放題。
焼肉メニューだけでなく一品料理も豊富に揃えており、これは居酒屋業態を長く展開してきた強みが生かされている部分でしょう。
焼肉の和民では、配膳や食器の下げを担当するロボットも導入しています。注文はタッチパネル、商品提供は回転ずしの特急レーンを導入していますが、これは「そのほうがお客様にとって便利だから」という考えによるもの。そして、省力化によって削減した人件費を原価に投入しメニューのお値打ち度を高めているわけです。
最近では、唐揚げテイクアウト専門店の「から揚げの天才」で、キッチンカーを使った移動販売スタイルを打ち出しました。駐車場や空きスペースの有効活用を想定していますが、これも「店でお客様を待っているだけでなく、ニーズのあるところには積極的に出向く」という形で、顧客志向を具現化したものといえます。
常に顧客を見て、その満足を得るために全力を傾注する。そうした企業のDNAこそ、ワタミの最大の透明資産なのです。
ー勝田耕司
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