外食業界はこれまで多くの雇用を生み出してきましたが、コロナウィルス禍で休業や閉店を余儀なくされる飲食店が続出した結果、多くの人が仕事を失うことになりました。
戦後最大の災害と言われるほどの非常事態にあってはやむを得ないことではありますが、「人がすべて」である外食ビジネスにとって本当に残念です。
そこで明らかになったのは、雇用を創出する場として外食がいかに大きな存在であったかということです。それは同時に、外食業の社会貢献度の高さを示しています。人々の食生活を支え、雇用を生み、地域のコミュニティの拠点になる。
その点で外食はまさに社会のインフラであり、インフラとしての機能を果たしていくことこそ外食の社会貢献です。コロナの感染拡大が落ち着き社会経済活動が動きはじめた今こそ、そのことを再確認する必要があるでしょう。
先頃、ハンバーガー大手の「モスバーガー」が東京・原宿に新しいチェーンのフラッグシップとなる原宿表参道店を出店しました。
2フロア47席の店内は開放的な雰囲気で、壁などに多くのアート作品が飾られていますが、作品はすべて障がいのある人たちが制作したもの。これはモスバーガーが2016年からはじめた社会貢献活動である「MOSごと美術館」がベースになっています。
MOSごと美術館は、障がいのある人々のアート作品をモスバーガーの店舗に展示するという取組みです。
モスフードサービスは外食の中でもSDGsへの取組みに積極的な企業のひとつであり、17の目標のうち「働きがいも経済成長も」「人や国の不平等をなくそう」「パートナーシップで目標を達成しよう」の3つの目標達成を、MOSごと美術館の目的として掲げています。
原宿表参道店は、その活動を象徴する店という位置づけでもあるのです。
また、同店の社員は「ユニバーサルマナー検定3級」を取得予定とのこと。これは様々な事情を抱える人々と向き合うためのマインドとアクション(ユニバーサルマナー)を身につけるための検定で、高齢者や障がいのある人、ベビーカー利用者、外国人など多様な人への接客時に適切なサポートができることをめざしています。
フランチャイズチェーンであるモスバーガーは、FCオーナーにチェーンの意思決定に参加してもらうなど、多様性を重視しその力を生かすことに積極的でした。
高齢者の雇用にいち早く取り組んだチェーンでもあります。そうした活動を通じて生まれ、浸透してきた社会貢献に対する高い意識こそ、モスバーガーの「透明資産」と言えるでしょう。
そしてその透明資産は、社会のインフラという外食業の役割を果たすうえでも大きな力になるはずです。
ー勝田耕司
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