バブル経済崩壊以降30年にわたって続いた日本の悪しき流れがいま、大きく変わろうとしています。ひとつはデフレの終焉。エネルギー価格の高騰やさまざまなコスト上昇によって、物価が急速に上がっています。
外食業界においても、これまでの低価格一辺倒から脱して、業界全体として中身に見合った適正な対価をいただこうという方向にシフトしてきました。そして、お客様の意識も徐々に、それを自然なこととして受け入れるようになってきています。
もうひとつの悪しき流れは、この30年間ほとんど賃金が上がらなかったことです。結果として日本の労働者の賃金は国際的にみてきわめて低いものにとどまり、とても先進国とは言えない水準になっていました。
その状況から脱しようと、今年の春闘では大幅な基本給アップに踏み切る企業が相次いでいます。これもまた、日本経済全体の底上げを図るという意味で望ましいことと言えます。
大切なのは、そうした流れを社会全体に広げていくことです。賃上げのニュースが連日マスコミを賑わせていますが、それは大企業中心の話であり、日本の企業の大多数を占める中小企業は賃上げの体力がないところがほとんどです。
逆に、大企業が賃上げの原資を生み出すために下請けの中小企業にさらなるコスト削減を迫るといった動きも出ています。
これでは、中小企業はますます体力を奪われ、日本の産業全体として賃上げを実現することはできません。
そこでいま必要なのは「チーム」という考え方だと思います。日本の産業全体をひとつのチームと捉えて、チームとして勝利する=チーム全員の賃上げを図るためにどうするかを考える。これは、自分だけがいい思いをするのではなく、他人を含めた社会全体の幸福感を追求するという、人としてあるべき姿にもつながります。
外食業界でも、賃上げは人材確保のために不可欠ですし、スタッフに誇りをもって働いてもらうためにも重要です。価格を引き上げるにはQSCを維持・向上させていくことが大前提ですから、そのためにもモチベーションアップは欠かせません。そして、さらに重要なのは「チーム全員の賃上げを実現する」ということです。
ここでいうチームは、店や企業に勤める人々だけでなく、取引業者などを含めてビジネスに関わる人々の総称です。そうしたチーム全員が利益を得られるような価格設定と、それを実現できる商品開発に取り組む。これこそが、いま外食業界で求められています。
そうであってこそ、価格に見合ったバリューアップが可能になり、お客様からの信頼を高めることができます。そして同時に「チームの勝利」という価値ある透明資産を得ることができるのです。
ー勝田耕司
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