ブランドというと何か高級品のようなイメージを持つ人が多いのですが、本当の意味は「顧客からの信頼」です。
外食業でいえば、その店を長く利用し続ける常連客が多いことが、ブランド力を測る最大の物差しになります。
その意味で、外食業界で最も高いブランド力を持つチェーンの一つが「餃子の王将(王将)」でしょう。
王将は言うまでもなく、大衆中華を代表する外食チェーンです。店名にもある主力商品の餃子をはじめ、誰にとっても親しみのあるベーシックな中華料理を揃えていること。鍋振りに象徴される店舗調理を重視して一品一品の高いクオリティを実現していること。
派手さはありませんが、人々が外食に求める「本質的なニーズ」にしっかりと応えているのが王将の強さと言えるでしょう。
その王将も、一時期は業績悪化に苦しみました。いまから7年前、人手不足による人件費高騰などコスト高を吸収すべく、全品を5~10%の幅で値上げしたところ、大幅な客数減に見舞われたのです。
食材を国産に切り替えるなどクオリティアップを図りましたが、その価値向上は残念ながらお客様に伝わりませんでした。
しかしそれ以来、王将はあらためて現場の調理トレーニングを強化し、本来の強みをさらに磨く取り組みを続けてきました。
その結果、値上げから3年後には既存店客数が回復。その後も継続して前年をクリアするに至ったのです。長い時間がかかりましたが、この間に王将のブランド力は一層強化されることになりました。
今年に入って王将の客単価は継続して前年をクリアしています。テイクアウトやデリバリーの伸びが客単価を押し上げている面もありますが、フェアメニューでは700円、800円といった価格の商品を投入し、価格帯を少しずつ上げてきました。
コロナ禍が落ち着き経済活動が回復するなかで、さまざまなコストが上昇しています。価格を上げてコストを吸収することは現在の外食業界に共通した課題であり、王将の価格戦略にもその狙いがあるわけですが、かつてのような客数低下を招いてはいません。
この10月、11月と王将の既存店売上げは継続して前年をクリアしています。
これは、その価格に見合う価値をお客様が認めているからに他なりません。7年前にお客様から受けた「手痛いしっぺ返し」を教訓として、あらためてブランドを磨き続けてきたからこそ得られた成果です。
その間に強化された顧客との信頼関係、さらには関係強化のプロセスそのものが、王将の「透明資産」と言えるでしょう。
この7年間で王将が得た新たな透明資産は、コロナ禍を乗り切り、王将のブランドをさらに高める原動力となったのです。
ー勝田耕司
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