以前このコラムでお伝えしたように、カレーチェーンの「CoCo壱番屋」は外食業界の中できわめて高いQSCを実現していることで知られています。
全国1200店を超える規模に達していながら、1店1店の商品クオリティとサービス、クレンリネスが高いレベルで維持されていることに驚かされます。
そのQSCを支えている最大の要因が、全店が企業理念を深く理解していることです。
CoCo壱番屋の主力はフランチャイズであり、そのほとんどが過去に㈱壱番屋に勤めていた社員が独立した店。
独自の社員独立制度である「ブルームシステム」は修練道場のような厳しい内容で有名ですが、その修業中に徹底して叩き込まれるのが経営理念です。
「ニコニコ、キビキビ、ハキハキ」というその経営理念は、サービスに臨む姿勢にとどまらず、お客さまに真摯に向かい合うという経営姿勢そのものを示しています。
1店1店がお客さまのことを真剣に考え、ご満足いただける店をつくる。その考えが明確に表れているのが「ストアレベルマーケティング」です。
これは商品やサービスについて各店が独自に工夫し顧客満足を上げる取り組みのこと。
これまでにさまざまな店舗限定メニューが登場していますが、中でも注目したいのが滋賀県の彦根中薮店で提供されている「八南(ようなん)がたっぷり詰まったホワイトオムデミ」です。
これは滋賀県立八日市南高等学校(八南)の農業科・畜産専攻の生徒とのコラボレーションで開発したメニュー。
デミグラスソースに入っている豚肉は同校で飼育している「八南ポーク」の豚肉を使用し、オムライスの卵は「八南エッグ」、ホワイトソースの牛乳は「八南ミルク」と、いずれも同校の生徒たちが心血を注いで育てた素材が使われています。
さらに、生徒たちの飼育の様子やCoCo壱番屋のスタッフとともにメニュー開発をしている写真をふんだんに使って小冊子を作製。この小冊子は生徒たちの手作りで、飼育方法や食材の持ち味なども詳しく紹介されており、とても楽しい読み物に仕上がっています。
何よりも、生徒たちがこのコラボレーションを楽しんでいること、「いいものをつくりたい」という強い思いで日々の活動に取り組んでいることがひしひしと伝わってきます。
これはまさしく、飲食店にとって大事な「地域貢献」のあり方を示していると思います。
これからの地域を担う若者たちに挑戦の場とやりがいを提供し、地域のお客さまには新しいおいしさを提供してご満足いただく。
この取り組みを通じてお店が得た地域との強い結びつきは、きわめて貴重な透明資産と言えるでしょう。
ー勝田耕司
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