「透明資産」は店や企業が持つ有形無形の資産であり、長い歴史の中で積み重ねてきた独自の強みのことを指します。
つまり、業種や業態、事業規模のいかんを問わず、そのビジネスが存続している限りは、いかなる店や企業であっても透明資産を持っているものです。
その中でも、ひとつの商品を徹底して磨き続けることによって生まれる透明資産こそが最大の強みとなります。外食ビジネスにおいて透明資産が差別化の決め手である理由ですが、その点で代表的な存在が「ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)」でしょう。
KFCはコロナウィルス禍で好調を維持した外食チェーンの代表格でもありますが、既存店が好調なだけでなく、拡大戦略の点でも積極的です。2021年4月には新しい中期経営計画を発表し、2023年までに新たに129店を出店することを公表しました。その計画に沿って21年に40店以上を出店しています。
11月には千葉県君津市に、客席を持たない“ミニドライブスルー店舗”をオープンしました。ドライブスルーとテイクアウト、デリバリーに特化し、withコロナ時代のニーズ対応にも積極的に取り組んでいます。
そうした拡大戦略の背景にあるのが、看板商品である「オリジナルチキン」に対する絶対的な自信です。しかし、その自信が決して過信に陥らないことが、商品が誕生して以来80年にわたって全世界で愛され続けている理由でしょう。そして、世界のKFCチェーンの中で最も熱心に商品を磨き続けてきたのが日本のKFCです。
日本KFCホールディングスのホームページには、その取り組みを紹介する「おいしさへのこだわり」というページがあります。とくに興味深いのは、社内の資格試験である「チキンスペシャリスト」を紹介しているコーナーです。
約3ヵ月におよぶ研修を通じて知識と技術を習得した後も毎年、筆記と技能の試験を受け続けることが資格取得の要件とのこと。筆記試験の一部も掲載されており、KFCのファンにとっては実に興味深い内容です。
また、「ワクワクするメニューのウラ話」のコーナーでは、KFC独自の樽型パッケージ「バーレル」の誕生秘話なども紹介されています。
ここから伝わってくるのは、KFCの商品に対する愛情と、それをあるべき品質でお客様に提供しなければならないという強い使命感です。
コロナ禍で外食行動が制限される中でも、多くのお客様がKFCの商品を求め続けたことで、その想いはより強くなったはずです。
自信のある商品を届けることを通じて、社会に貢献していくという使命感。これこそがKFCの最大の透明資産であり、コロナ禍はその資産を磨くための機会となったのです。
ー勝田耕司
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