透明資産とは?

わずかな期間も無駄にせずブランド価値を高める。その姿勢が「帝国ホテル」の透明資産をつくった

日本に存在する数あるブランドの中でも、サービス業の世界で最も広く知られ、価値あるもののひとつが「帝国ホテル」でしょう。

 

宿泊業界の人はもちろん、行ったことすらない人も最高級のホテルとして認知していますし、提供されるサービスが日本最高峰のものであることを知っています。1890年(明治23年)の創業以来130年におよぶ歴史は、そのまま日本のホテル史を表すものといえます。

 

その帝国ホテルが、創業以来最大規模のリニューアル計画を公表したのは、新型コロナウィルス禍がまだ収まらない2022年4月のことでした。建て替え期間は2024年から2036年までの実に12年間。期間の長さに加え、単なる建物の新設にとどまらない計画の壮大さが注目を集めました。

 

ホテルが立地する千代田区内幸町一丁目全体の再開発プロジェクトとして、地域の魅力創出のために帝国ホテルが中心的な役割を果たしていくことを内外に発表したのです。

 

計画の先陣を切って2024年から現在のタワー館の取り壊しが始まりますが、その1階に2021年12月にホテルショップ「ガルガンチュワ」がオープンしています。

 

ガルガンチュワはそれまで本館1階で営業していましたが、移転を機に売場面積を大きく広げ、全体を「パティスリー(スイーツ)」、「エピスリー(デリカテッセン、ベーカリー)」、「カドー(ギフト商品)」の3つのコーナーで構成しています。

 

いずれも帝国ホテルならではの高いクオリティの商品を揃えていることはもちろん、品揃えを通じて“豊かな食シーン”を提案している点が注目されます。とくにカドーのコーナーでは、グループ企業でレトルト食品や冷凍食品を製造・販売する帝国ホテルキッチンの商品を豊富に揃え、前菜からメイン料理までコース仕立てで楽しめる商品提案をしています。

 

リニューアルオープン以来大盛況で、これまでのホテルの顧客はもちろん、若い女性客、戻りはじめたインバウンド客など新しい客層の開拓にも成功しています。

 

このリニューアルオープンには当然、かなりの投資がなされています。先にも書いたように、タワー館の取り壊しは2024年から。営業期間は2年ほどしかありません。普通のホテルであれば、新たな投資をしようとは考えないでしょう。

 

しかし帝国ホテルは、わずか2年間であってもその時間を無為に過ごさず、ブランド力を高めるために積極的に動くと決めたのです。目先の利益を追うのではなく、常に長期的視点でブランド価値を高めていく。この思想こそ帝国ホテルの強さであり、130年の歴史が培った透明資産です。

 

帝国ホテルならではの透明資産が詰まったガルガンチュワ。機会があれば是非訪れて、その資産価値を体感してください。

 

ー勝田耕司

関連記事

  1. 透明資産とは?

    全国各地の肉食文化は世界に誇る透明資産。それは食にかかわる人々の深い想いが生んだ

    三重県松阪市に本店を置く「和田金」は、最高の和牛のひとつである松阪牛を…

  2. サスティナブル

    実現すべきサスティナビリティは共存共栄。

    〜実現すべきサスティナビリティは共存共栄。牛タンの「ねぎし」にその…

  3. サスティナブル

    コロナウィルス禍がもたらした社会不安。外食が果たすべき貢献は?

    〜コロナウィルス禍がもたらした社会不安。外食が果たすべき貢献は、店…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 透明資産とは?

    どのような体験でご満足いただくか。 それが明確であることがブランドの条件
  2. 透明資産とは?

    10月以降は値上げが避けられない生ビール。その店ならではの透明資産がより大切に
  3. 透明資産とは?

    「想い」を伝える透明資産マーケティングは外食大手が社会のインフラになる原動力
  4. 透明資産とは?

    厳しい状況だからこそ再確認したい 「想い」という透明資産の大切さ
  5. SDGs

    求められるのは“正しい方法”で実現する価値。その点で注目したい「くら寿司」の取り…
PAGE TOP