透明資産とは?

丸亀製麺の大ヒット商品「うどん弁当」は 社会貢献への想いという透明資産が生んだ

トリドールホールディングスが展開するうどんチェーン「丸亀製麺」の好調ぶりが続いています。

2021年度上半期(4月~9月)の既存店売上高は前年比118%。客単価は前年比100%で、売上げの伸びはすべて客数増によるものです。下半期に入っても10月が102.4%、11月が101.4%と堅調です。

この好調さを支えているのが、コロナウィルス禍を受けて導入したテイクアウト商品「うどん弁当」です。

2021年4月に発売したうどん弁当は、10月までの半年間の販売数が1300万食という大ヒット商品になりました。21年度の上半期は、この商品だけで57億円の売上げを計上、売上構成比で10%を占めるまでになっています。

コロナ禍での苦境を乗り切るための商品という存在を超え、丸亀製麺の新しい主力商品となったのです。まさにピンチをチャンスに変えた、外食業界が誇るべき大きな成果と言えるでしょう。

考えてみれば、うどんほどテイクアウトに不向きな商品はありません。しかし「うどんはその場で食べてもらわなければ」という固定観念にとらわれていては、この商品は生まれなかったでしょう。

緊急事態宣言によって外食行動が制限されるなかにあっても、なんとかして自社の商品を味わってもらいたいという熱い想いと、そのためにできることはなんでもやろうという発想の転換。この2つが揃ったことが、画期的な商品開発につながったのです。

うどん弁当は丸亀製麺にとって売上げの柱となるだけでなく、チェーンの新しいブランドをつくる商品にもなっています。この秋には、うどん弁当を通じた社会貢献活動もはじめました。

トリドールホールディングスは1年ほど前から東京・品川区で、子ども食堂に食品を無償提供してきましたが、この秋には子ども食堂を利用する人および運営を支えている人々に対して、丸亀製麺のうどん弁当を無償提供しています。

「子供たちが丸亀製麺のことが大好きで、本格的なうどんを自宅でも食べたい」という声が多く寄せられたことに応えたもの。

同社では今後、こうした支援活動を積極的に進めていくとのことですが、そこでうどん弁当が大きな役割を果たすことは間違いないでしょう。そして、そのことが丸亀製麺のブランド力をさらに高めていくことになります。

テイクアウト専用容器の開発や販売スペースの工夫など、うどん弁当のヒットの要因はさまざまにありますが、最大の原動力は「自社の商品を通じて社会に貢献しよう」という想いの強さでしょう。

それこそが丸亀製麺の「透明資産」であり、全国800店を超える店数以上にこのチェーンを特別な存在にしているのです。

ー勝田耕司

関連記事

  1. 透明資産とは?

    魚金が開発した新業態のとんかつ店は 透明資産を生かし、その価値を高める取り組み

    コロナウィルス禍でもっとも大きな影響を受けた業態といえば居酒屋です。緊…

  2. 透明資産とは?

    おいしさを追求する姿勢こそ「おもてなし」。それが店や企業の透明資産をつくっていく

    バブル崩壊以後30年以上にわたって低い水準に抑えられていた価格を引き上…

  3. 透明資産とは?

    お客様との絆=透明資産を持つ「町中華」は 日本が世界に誇れる最も価値ある食文化

    新型コロナウィルス禍は、日本でも終息したと言っていいでしょう。政府の専…

  4. 透明資産とは?

    自分自身を「こうありたい」ものにする。 それが組織の透明資産づくり出発点

    「Well-Being」になるための絶対条件である「よい人間関係」…

  5. 透明資産とは?

    KFCの透明資産は商品に対するこだわり。コロナ禍はそれを磨く機会になった

    「透明資産」は店や企業が持つ有形無形の資産であり、長い歴史の中で積み重…

  6. SDGs

    食産業にも求められる「サスティナビリティ」

    〜食産業にも求められる「サスティナビリティ」。その取り組みはブラン…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 透明資産とは?

    食のSDGs実現に取り組むうえで注目したい食材のひとつが「肉」
  2. 透明資産とは?

    マクドナルドが訴える特別な体験=透明資産。それを磨くことが値上げのための必要条件…
  3. 透明資産とは?

    2023年は外食にとって再スタートの年。透明資産の価値こそが、その鍵を握る
  4. 透明資産とは?

    身体の声を聞き、それに合わせて行動する。 これは組織の透明資産づくりにも通じるこ…
  5. ゼロステージ・マーケティング

    最大の『透明資産』であるスタッフを守る。
PAGE TOP