人が「Well-Being」であるためには、自然体でいることが大切とお話ししました。人間本来のありかたとして、自然であることが大事。それがどのような状態を指すかは、自然でない状態とは何かを考えるとよくわかります。
忙しすぎるとか、ストレスを感じる、ことさら自分に注目を集めたいと考える、お金や名誉に執着しすぎる、など。それとは逆に、平等であることや人とのつながりを重視する、無理をしない、といったことこそ自然な状態です。
日本には「足るを知る」という言葉があります。これは「ほどほどがよい」といった意味に使われますが、自然体でいることの大切さを示したとてもよい表現だと思います。そして、デンマークの人々にとって重要な価値観になっているのもこの考え方です。
それを表しているのが「ヤンテの掟」です。これはデンマーク出身の作家アクセル・サンテモーゼの小説に登場するヤンテという架空の村の住人が守るべき10の掟、つまり「十戒」のことです。
1.自分は他人よりも重要な人物と思ってはならない
2.自分は他人よりも優れていると思ってはならない
3.自分は他人よりも特別な存在だと思ってはならない
4.自分は他人から気にかけてもらえると思ってはならない
5.自分は他人よりも知恵が深いと思ってはならない
6.自分は他人よりもかしこい人間と思ってはならない
7.自分はなにかに秀でていると思ってはならない
8.自分は他人よりも善良であると考えてはならない
9.他人のことを笑ってはならない
10.自分が他人に何かを教えられると思ってはならない
これとは逆の考え方だと、どうなるでしょうか。自分は他人より秀でている、他人と比べて特別な存在だ、だから自分は報われるべきだし、他人を押しのけてでも幸せになるべきだ、というように、常に「自分が、自分が」という考え方や姿勢になっていきます。
それは人として自然ではありません。そして、そうした生き方を続けていては、本当の意味での幸福感を得ることはできないのです。
ヤンテの掟が戒めているように、自分が他人と比べてどうかではなく、自分がいまいる状態こそ幸福だと考える。そして、その状態をもっと心地よいものにするにはどうすればよいかを考え、行動する。それが幸福感を得ること、すなわち自分ならではの「透明資産」をつくることにつながっていくのです。
大切なのは、自分の心地よさをさらに高めていくための考え方と行動です。次回はそのことについてお話しします。
-勝田耕司
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