〜最大の『透明資産』であるスタッフを守る。
その大切さを示す老舗そば店の取り組み〜
このブログでもお話ししましたが、
私はビジネスにおける最大の『透明資産』は
〝人〟であると思っています。
食にかかわる産業はとくにそうです。
飲食店において現場で働くスタッフは
店の価値を生み出す最大の原動力であり、
もっとも大切にしなければならない
資産でもあります。
その点においても、
今回のコロナウィルス禍は本当に深刻な事態です。
政府の自粛要請によって
会合や宴会の需要が一気になくなり、
居酒屋などを中心に多くの飲食店が
売上げの急減に見舞われています。
バス会社など観光関連産業では
すでに大量解雇を余儀なくされる例も
出てきていますが、
飲食店もこの事態が長期化すれば
雇用を守れなくなる状況が想定されます。
最大の『透明資産』である〝人〟を失うことは、
なんとしても避けなければなりません。
苦しい状況の中でも、
ともに働くスタッフを守ることは
飲食店の大きな社会的役割といえます。
今回の事態を受けて、
政府はいち早く小規模・中小事業者に対する
支援策を打ち出しました。
日本政策金融公庫をはじめ、
政府系金融機関の緊急融資は過去にないスピードで
決済・実行されるようになっています。
また、休業補償に対する助成など
雇用維持のための金融支援策も打ち出されています。
事態の長期化に合わせて
今後もさまざまな政策が実行されるはずですから、
それらを最大限に活用して
今回の難局を乗り切っていきましょう。
少し特殊かもしれませんが、
雇用を守ることの大切さを示す格好の例があります。
東京・浅草にある手打ちそばの
名店「並木藪蕎麦」は、
東日本大震災後に耐震工事のため
全面建て替えをしました。
その間、
8ヵ月も休業したのですが、
できあがった店を見て
常連のお客さまは驚きました。
外観から店内のレイアウトや内装、
細かな調度類に至るまで、
かつての店を
寸分違わず再現していたからです。
しかし、
お客さまが驚いたのは
それだけではありませんでした。
一番変わらなかったのは、
店のスタッフだったのです。
職人はもちろん、
サービスを担当するパート女性も
全員が休業前と同じ顔触れでした。
8ヵ月におよぶ休業期間中も
誰一人解雇することなく、
社員に対しては
給与を払い続けるとともに、
パートさんとも常に連絡をとって
再開後の雇用を約束していたのです。
店も人もすべて、
かつて愛した並木藪蕎麦のままであることが、
常連のお客さまにとって
最大の価値になりました。
最大の『透明資産』を
なんとしても守り抜くという姿勢に、
老舗の矜持と底力を見ることができます。
ー勝田耕司
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