〜未曾有の経営危機に苦しむ宿泊・観光業界で
目をひく「一の湯」の前向きかつ力強い動き〜
生き延びるために、できることは何でもやる。
そもそもビジネスの世界では当然のことですが、
その思いの強さがいま何よりも問われています。
「そんなことは、うちがやるべきことではない」
といった思い込みや、過去の体験にとらわれた考え方は、
この状況では障害になりこそすれ、前に進む力には決してなりません。
外食ビジネスと同様に、
未曾有の経営危機のさなかにあるのが宿泊業界と観光業界です。
人が移動したり、
集まって楽しんでこそビジネスが成立するわけですから、
いまはまったく商売になりません。
コロナウイルス禍で多くの企業が
倒産や廃業に追い込まれていますが、
もっともその数が多いのが宿泊・観光業界です。
だからこそ、生き残りのためにこれまでにない
発想やさまざまなアイデアが生まれています。
軽症の感染者のためにホテルが部屋を提供することが
大きく報じられましたが、
少し前にインバウンド景気に沸いていた状況からすれば、
とても考えられないことでしょう。
しかし同時に、これは社会的にきわめて
意義のある取り組みといえます。
このニュースに接して、
宿泊業の社会貢献度の高さを再認識した人も
多いのではないでしょうか。
宿泊業の中には、
この苦境にじっと耐えつつコロナ終息後を睨んだ
ファイティングポーズを崩さない企業もあります。
今年で創業390年を迎える
箱根の老舗旅館「一の湯」はその好例です。
箱根に8ヵ所の旅館とホテルを構え、
ハイクオリティなサービスと料理を提供しながら
リーズナブルな価格を貫き高い人気を集めてきました。
感染拡大を受けて
5月末まで全館を休業中ですが、
その間も「創業390年祭り」と称して
さまざまなイベントや割引キャンペーンを企画し、
自社ホームページで積極的に発信しています。
とくに目をひくのが
「箱根旅の常識を変える! 驚き 感動 ワクワクのコンセプトルームをつくりたい」
と称するプロジェクト。
既存ホテルの一室をリノベーションし、
旅の楽しさを高める仕掛けを施した部屋をつくるための
資金をクラウドファンディングで募るもので、
出資者には再開後に使える
最大4割引きの宿泊券を贈呈します。
目標金額1000万円でスタートしましたが、
すでに支援者は600人以上、
1400万円を超える支援金が集まっています。
一の湯では自社農園を設けて
料理に使う野菜を栽培していますが、
その農園で採れた玉ネギが抽選で当たる
プレゼント企画も実施しています。
一の湯の公式Twitterアカウントをフォローし、
「玉ネギを使った料理」を投稿して応募するというもの。
自らの売りをしっかりアピールし、
「忘れないでいてもらう」ために実に効果的な企画
といえるでしょう。
これもまた、
コロナ後を見据えた力強い動きに他なりません。
ー勝田耕司
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