外食業界ではいま、業績を測る指標として「2019年対比」の数字が盛んに用いられるようになっています。つまりは「コロナウィルス禍以前と比較してどうか」ということ。
これまでは既存店の業績を判断する際に前年比の数字を問題にしてきましたが、2020年と2021年はコロナ禍で大きく業績が落ち込んでいますから、比較の対象として適当ではありません。2019年と比較して数字が好転していれば、コロナ禍以前の勢いを取り戻しているといえます。
その点で注目したい外食チェーンが「餃子の王将」です。㈱王将フードサービスが先頃発表した9月の既存店業績(直営店)は、売上高が前年同月比112.5%と大幅に伸長。2019年9月と比較しても99%、曜日の違いを考慮すれば101.7%となっています。
客単価、客数ともに今期(2022年4月~)に入って半年間ずっと前年を超えており、とくに客数は半年間の平均で8%近く伸ばしました。餃子の王将では今年5月に値上げを実施しましたが、その新しい価格も無理なく消費者に受け入れられたといえるでしょう。
これらの数字はまさしく、餃子の王将が独自の透明資産を磨き続けてきた結果といえます。透明資産とはすなわち、高いQSCレベルを維持し、お客様の信頼に応え続けてきたことです。
王将フードサービスでは毎年経営スローガンを掲げていますが、2022年は「おいしい力で未来を変える」です。「おいしい力」とは、商品そのものだけでなく、商品をおいしくする取り組みすべてを指します。
そのために独自の研修施設「王将調理道場」を設け、オンラインも含めてトレーニングの強化を進めてきました。この9月には、単月で1000人以上の社員およびパート・アルバイトが研修を受けたとのことです。さらに、店舗ごとに主要メニューやフェア商品のクオリティアップを目的とした調理講習も実施しています。
餃子の王将はフェアやキャンペーンにも積極的ですが、ここでも顧客ニーズを踏まえた取り組みをしています。今年8月からの「生餃子スタンプキャンペーン」は、持ち帰り用の生餃子の購入数に応じて、店舗で使用している餃子皿とタレ用の小皿をプレゼントするというもの。
王将ファンを拡大するとともに、さまざまな事情でお店に来られないお客様に少しでも外食の雰囲気を味わってもらいたいという考えからです。コロナ禍は餃子の王将にとって、テイクアウトという新しい市場を開拓する契機になりましたが、そこでも餃子の王将ならではの価値を提供する姿勢を貫いているのです。
高いQSCと、お客様に寄り添う姿勢。この両輪が餃子の王将の透明資産であり、その輝きはコロナ禍を経てさらに増しています。
ー勝田耕司
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