コロナウィルス禍による外食控えもあり、
この2年ほどの間に急拡大したのがテイクアウトの市場です。
ファストフードなど従来からテイクアウトニーズを
積極的に吸収してきた業態に加えて、
さまざまな店がこのマーケットに参入しました。
唐揚げのように急速に
“レッドオーシャン化”したジャンルもあるなか、
コロナ禍で安定した支持を得てきた商品に
挙げられるのが「たこ焼き」です。
たこ焼きチェーンの最大手である「築地銀だこ」は、
コロナ禍が本格化した2020年4月以降も既存店売上げは
それほど大きく落ち込んでいません。
昨年10月は前年比94.1%、
11月は98.2%という数字でしたが、
これは前年の同月がGo To トラベルキャンペーンの
地域共通クーポン開始などで前年比108.8%、
107.5%と大幅に伸びたことの反動。
コロナ禍前と比較しても既存店売上げは伸びており、
固定客をしっかりと摑んでいることがわかります。
築地銀だこは、たこ焼きを主力商品として初めて
本格的なチェーン化に取り組んだ先駆者というべき存在です。
主食材であるタコの品質へのこだわり、
揚げ焼きの考え方を取り入れた調理法による差別化と、
均質化のためのトレーニングの徹底。
そうした取り組みによって築地銀だこは、
たこ焼きという商品の位置づけを変え、
マーケットを大きく広げました。
関西以外ではお祭りや縁日、
観光地といった非日常の場で食べるものだったたこ焼きを、
普段の生活の中で楽しむ商品へと変えたのは、
間違いなく築地銀だこの功績です。
そしてもうひとつ見逃せないのが、
たこ焼きという商品が持つ潜在力に注目したこと、
それを引き出し、磨いたことです。
築地銀だこを展開する
㈱ホットランドの佐瀬守男社長は、
かつて外食専門誌のインタビューで
次のように語っていました。
「たこ焼きを買う時のお客様って、
みんな優しい気持ちなんですよ。
たこ焼きは自分のためというより、
誰かのために買うことが多いでしょう。
家族や親しい人へのお土産にしたり。
そういう商品を売りたいと思ったのが、
築地銀だこをはじめた理由なんです」
たこ焼きには人を幸せにする力がある。
これこそが商品の持つ潜在力と位置づけ、
その力を品質向上への取り組みによって磨き続けたことが、
築地銀だこを唯一無二のチェーンに育てたのです。
外食ビジネスにおいて、
自らの商品に誇りを持つことは成功の絶対条件であり、
その誇りこそが「透明資産」です。
誇りとは「自信」とも言い換えられますが、
決してそれだけではありません。
築地銀だこのように、
商品に込めた「想い」も誇るべきものです。
そしてその誇りは、
お客様が店を選ぶ最大の理由になるのです。
ー勝田耕司
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