世界でもっとも幸福な国のひとつ、デンマークで人々の重要な価値観となっている「HYGGE(ヒュッゲ)」。この言葉は日本語に訳すと「心地よさ」となりますが、現地では実にさまざまなシチュエーションで使われています。
「ヒュッゲらしい」「ヒュッゲ的だ」という言い回しからはじまって「なんてヒュッゲな部屋なんだろう」「あなたと会えるなんて、すごくヒュッゲなことだ」「どうかヒュッゲな時間を過ごしてください」といったように、この言葉は生活の隅々にまで入り込んでいます。そして、ヒュッゲであることこそが人々にとって「あるべき状態」であるという共通認識になっています。
他にも「ヒュッゲスプレッダー(広める人)」「ファミリーヒュッゲ(金曜日の家族の時間)」「ヒュッゲソッカ(暖かみのある靴下)」「カフェヒュッゲ(コーヒータイム)」など、ヒュッゲを組み込んだ単語もあります。それはいずれも、人々の幸福感に直結した言葉として使われています。ヒュッゲという価値観が、デンマークにおいてもっとも大切なものと位置づけられている証拠です。
では、こうした考え方や生活習慣はデンマーク独特のものなのでしょうか。いえ、決してそんなことはありません。他の国々にも、ヒュッゲと同様の意味合いで使われている言葉があります。
●ヘゼリハイド=心地よく、古風で趣があり、素敵なもの(オランダ)
●ゲミュートリヒカイト=思いやりや友情、絆など心の状態(ドイツ)
●ホーミネス=外の世界をシャットアウトし、自分の空間をつくりだした状態(カナダ)
また、デンマークと同じ北欧圏に位置するノルウェーでは、「クーセリ(温かみ、親密さ、一体感)」や「フリルスリフ(自然と共存し、自然との調和を楽しみながら暮らすこと)」など、まさにヒュッゲと重なる意味を持つ言葉があります。ノルウェーも世界有数の福祉国家であり、人々の幸福度調査でも常に上位にランクされている国。こうした価値観こそ、人が幸福に生きていくうえで不可欠なものと言えるでしょう。
大事なのは、その言葉が普段の生活の中でとくに意識せず使われていることです。また、他人にそういう考えを押し付けたり、そうでない人を排除するという方向には向かわない。あくまで自然体であり、それでこそ人々の中に本当の幸福感が生まれるのです。
自然体とは「本当の自分を表現する」ことであり、透明資産を大切にすることに他なりません。それは、これまでお話ししてきた「Well-Being」の考え方と直結します。次回はヒュッゲを実現しながら自分をどう表現するかについてお話しします。
ー勝田耕司
この記事へのコメントはありません。