こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
現代の企業経営において、目に見える財務諸表上の資産だけでは語れない、真に競争優位性をもたらすものが存在します。それが、組織全体に漂う「空気感」、そしてそれを意図的に設計し運用する仕組みである「透明資産」です。この透明資産を経営の根幹に据えることで、社員のエンゲージメントを高め、顧客からの信頼を獲得し、持続的な成長を実現できます。透明資産の構造は多岐にわたりますが、その中核をなす重要な要素の一つが、社内外の情報を集約し、最適に発信する機能を持つ透明資産『情報局』になります。
情報局は、単なる広報部門やマーケティング部門の延長線上にあるものではありません。それは、組織の「空気感」を形作り、社内外に伝播させるための心臓部とも言える存在です。特に、社外への情報発信においては、いかにして企業の独自の価値観や文化、そして顧客への真摯な姿勢を伝えるかが鍵となります。そのためには、一般的なSNS運用で語られるようなバズるネタ探しや手軽なコンテンツ作りとは一線を画す、より深層的な「ネタ探し」と「ネタつくり」の視点が不可欠です。本稿では、透明資産経営における情報局の役割を明確にし、社外発信で空気感をデザインするための、独自のアプローチを事例や目的効果を交えながらお伝えしていきます。
―1、透明資産経営における『情報局』の戦略的役割
透明資産経営において、『情報局』は、企業内外のコミュニケーションのハブとして機能します。その役割は大きく分けて二つあります。一つは、社内外から多様な情報を集約し、組織全体の知の基盤を強化すること。もう一つは、その知を加工し、企業の理念や価値観が体現された「空気感」として社内外に発信することです。このサイクルを円滑に回すことで、組織の透明性が高まり、ステークホルダーからの信頼が深まります。
社内においては、情報局は部門間の壁を取り払い、個々の社員が持つ経験や知見、成功事例や失敗から得られた教訓といった生の情報を吸い上げます。これは、社員が自らの貢献が認められ、組織全体で共有されるという心理的安全性を醸成する上で極めて重要です。例えば、社員が自発的にプロジェクトの進捗や学びを共有できる社内SNSの運用、または定期的なナレッジシェアリングの会合を企画することで、情報局は活発な社内コミュニケーションを促します。これにより、サイロ化された情報が統合され、組織全体の意思決定の質が向上し、一体感が生まれる「空気感」が育まれます。
社外においては、情報局は企業の「顔」として機能します。単に製品やサービスを宣伝するだけでなく、企業の哲学、社員の働く姿勢、社会貢献への取り組みといった、目に見えない「空気感」を言語化し、ビジュアル化して発信する役割を担います。これは、企業と顧客、あるいは企業と社会との間に、深い共感と信頼の絆を築く上で不可欠です。透明資産経営における情報局の究極の目的は、こうした情報発信を通じて、企業が意図する「空気感」をステークホルダーに浸透させ、彼らの感情や行動にポジティブな影響を与えることにあります。そのためには、従来のマーケティング手法では捉えきれない、より本質的な「ネタ」を発掘し、創造する能力が求められるのです。
―2、社外発信における「ネタ探し」の深淵、空気感を醸成する原石の発掘
透明資産経営における社外発信の「ネタ探し」は、一般的な情報収集とは大きく異なります。それは、単なるトレンドや話題性を追うのではなく、企業の根底に流れる「空気感」を体現する「原石」を発掘する作業です。この原石は、必ずしも華やかな成功事例である必要はありません。むしろ、日常の中に隠されたささやかな工夫や、社員の人間性、あるいは困難を乗り越えたプロセスの中にこそ、真の透明資産が宿る「ネタ」が隠されています。
ネタ探しの第一のポイントは、日常の奥深さに目を凝らすことです。多くの企業は、大々的なプロジェクトや新製品発表会といった「イベント」だけを情報発信の対象としがちです。しかし、真の「空気感」は、社員が日々の業務の中で交わす言葉、顧客への細やかな気遣い、困難な問題に直面した際のチームの連携、あるいは朝の挨拶といった、ごく普通の「日常」の中にこそ存在します。情報局は、これらの日常の中に潜む「美しさ」や「強さ」を発見する「感性」を磨く必要があります。
例えば、顧客からの感謝の言葉一つ、社員が自発的に行っている清掃活動、あるいは新入社員の成長を支えるベテラン社員の無言のサポートなど、一見すると地味な出来事の中にこそ、企業の「人」としての温かさや、顧客を大切にする姿勢が凝縮されています。これらを丹念に拾い上げ、物語として紡ぐことで、共感を呼ぶ透明資産経営のネタが生まれます。
第二のポイントは、「失敗」や「課題」の中に光を見出すことです。多くの企業は成功事例ばかりをアピールしようとしますが、人間は完璧なものよりも、むしろ困難を乗り越えようと奮闘する姿に共感を覚えるものです。心理学の分野では、困難を克服するプロセスが、他者からの信頼や尊敬に繋がることが示されています。情報局は、単なる「失敗談」としてではなく、「いかにしてその失敗から学び、次に活かしたか」「チームでどのように課題を乗り越えたか」というプロセスを、具体的なエピソードとして掘り起こします。
例えば、新製品の開発中に直面した予期せぬトラブル、顧客からの厳しいクレームへの誠実な対応、あるいは社内改革における葛藤と克服の道のりなど、こうしたストーリーは、企業の「誠実さ」や「粘り強さ」といった人間的な魅力を伝え、ステークホルダーとの間に深い共感の「空気感」を醸成します。
第三のポイントは、「社員の個性」と「働き方」を深掘りすることです。透明資産経営において、社員は単なる労働力ではなく、企業の「空気感」を構成する最も重要な要素です。情報局は、社員一人ひとりの専門性だけでなく、彼らが仕事にどのような想いを抱いているか、どのような哲学を持って働いているか、といった「人となり」に焦点を当てます。
例えば、特定の分野に情熱を傾けるベテラン社員の仕事へのこだわり、子育てと仕事を両立しながら成果を出す社員の工夫、あるいは趣味と仕事を結びつけて新たな価値を生み出す若手社員の挑戦など、こうした個々のストーリーは、企業の「多様性」と「人間性」を浮き彫りにします。社員が生き生きと働く姿を発信することは、潜在的な採用候補者に対して「この会社で働きたい」というポジティブな「空気感」を醸成するだけでなく、既存の社員に対しても「自分たちの会社は素晴らしい」という誇りを与え、エンゲージメントを高める効果があります。
これらのネタ探しのアプローチは、決して目新しい情報や「バズる」ための技巧を追求するものではありません。むしろ、企業の日常に深く潜り込み、そこに宿る本質的な価値や人間的な魅力を丁寧に拾い上げ、言語化する「洞察力」と「共感力」が求められるのです。
―3、空気感をデザインする「ネタつくり」の妙技、伝わる情報への昇華
発掘された「原石」としてのネタを、社内外に響き渡る「透明資産」として昇華させるには、独自の「ネタつくり」の妙技が必要です。それは、単に情報を整理するだけでなく、受け手の心に響く「空気感」をデザインするプロセスです。
ネタつくりの第一は、「物語性」を付与することです。人間は、事実の羅列よりも、感情が揺さぶられる物語に惹きつけられます。脳科学では、物語を聞く際に、感情を司る領域だけでなく、物語の内容に応じた感覚や運動を司る領域も活性化することが示されています。これにより、受け手は単に情報を理解するだけでなく、あたかも自らが体験しているかのような没入感を得ることができます。情報局は、発掘したネタを「誰が(主人公)、何を目指し(目的)、どんな困難に直面し(葛藤)、どのように乗り越えたか(解決)、そして何を得たか(結果と学び)」という物語のフレームに落とし込みます。
例えば、新製品開発の裏側にある技術者の熱意と葛藤、顧客の課題を解決するために奔走する営業担当者の奮闘など、具体的な登場人物の感情や行動を描写することで、単なる製品紹介やサービス説明を超えた、人間味あふれる「空気感」を伝達します。
第二に、「五感に訴える表現」を追求することです。先のコラムでも述べたように、視覚情報はもちろんのこと、嗅覚や触覚が感情や記憶に与える影響は計り知れません。情報発信においては、文字情報だけでなく、写真、動画、イラスト、そしてWebサイトであればインタラクティブな要素やサウンドを用いることで、より多感覚的に「空気感」を伝えることができます。
例えば、製品の製造工程を映した動画で、職人の手仕事の音や、素材の質感を感じさせる映像を盛り込む。あるいは、企業の理念を表現する際に、抽象的な言葉だけでなく、それを象徴する社員の笑顔や、オフィスで働く人々の活気ある姿を映し出す。これにより、受け手は情報を理性だけでなく、感情レベルで深く捉え、企業が意図する「空気感」を肌で感じ取ることができるようになります。
第三に、「共感を呼ぶ言葉選び」と「誠実なトーン&マナー」を徹底することです。透明資産経営における情報発信は、決して一方的な押し付けであってはなりません。心理学の共感性に関する研究が示すように、人は自分と共通の価値観や感情に触れた時に、強い共感を覚えます。
情報局は、ターゲットとなるステークホルダーがどのような課題を抱え、どのような価値観を大切にしているのかを深く理解し、彼らの心に響く言葉を選びます。また、発信のトーンは常に「誠実」であり、過剰な装飾や誇張を避けるべきです。企業が自らの弱みや課題を正直に認め、それに対する取り組みを語る姿勢は、かえって信頼性を高め、人間的な「空気感」を醸成します。
最後に、「発信チャネルの最適化」と「継続性」が重要です。どれだけ優れたネタとつくりがあっても、それが適切に届かなければ意味がありません。企業のターゲット層がどのような情報チャネルを普段利用しているのかを分析し、それに合わせた形式と頻度で発信します。
例えば、若手層にはショート動画プラットフォーム、専門家には詳細なブログ記事やホワイトペーパー、地域住民には地域イベントへの参加報告など、チャネルごとに最適な表現方法を検討します。そして最も重要なのは、一度きりの発信で終わらせず、継続的に情報を届け続けることです。脳科学のザイアンス効果(単純接触効果)が示すように、人は繰り返し触れるものに対して好意や信頼感を抱きやすくなります。継続的な発信を通じて、企業が意図する「空気感」を定着させ、揺るぎない透明資産として育んでいくのです。
―4、結論、情報局がデザインする企業の「空気感」という未来
透明資産経営における『情報局』は、単なる情報の収集・発信にとどまらない、企業の「空気感」をデザインし、未来を創造する戦略的な要衝です。社内外から日常の奥深さ、失敗や課題、社員の個性といった透明資産の源泉を見つけ出し、それを物語性、五感に訴える表現、共感を呼ぶ言葉選びという手法で磨き上げ、最適なチャネルで継続的に発信すること。この一連のプロセスを通じて、企業はステークホルダーとの間に深い信頼と共感の「空気感」を醸成できます。
従来のマーケティングや広報が「何を売るか?」「どう見せるか?」に終始しがちであったのに対し、透明資産経営の情報局は「企業がどのような存在であるか?」「どのような価値観を持っているか?」という、より本質的な透明資産の源泉を伝達することを目指します。これは、顧客が製品やサービスを選ぶ基準が多様化し、企業の人格や社会貢献への姿勢が重視される現代において、企業が生き残り、成長するための不可欠な要素です。
情報局がデザインする「空気感」は、社員のモチベーションを内側から高め、企業の採用力を強化し、顧客のブランドロイヤルティを深め、ひいては社会からの評価を高めることに直結します。目には見えないこの「透明資産」を最大限に活用できる企業こそが、不確実性の高い現代において、しなやかに変化に対応し、持続的な成功を収めることができるでしょう。情報局は、まさにその旗振り役として、企業の未来の「空気感」を創造していく責任と、無限の可能性を秘めているのです。フォームの終わり
―勝田耕司
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