透明資産とは?

【透明資産を見つけよう】業績が伸びる職場の『呼吸』──一体感・安心感・挑戦心の3要素でつくる透明資産

業績が伸びる職場の『呼吸』──一体感・安心感・挑戦心の3要素でつくる透明資産

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

多くの経営者が、業績向上を目指して、新しい事業戦略を立案し、最新のITツールを導入し、あるいは緻密な人事評価制度を構築しています。しかし、そのどれもが期待通りの成果を出せず、なぜか組織が停滞しているという悩みを抱えてはいないでしょうか?その根本原因は、目に見える戦略や仕組みの裏側で、組織がひそかに酸素不足に陥っていることにあります。

ここで言う「酸素」とは、組織全体に満ちる、目には見えないが、誰もが肌で感じる空気感のことです。そして、この空気感を、社員のパフォーマンスを最大化し、業績に直結する持続的な力に変える仕組みこそが、私が提唱する透明資産経営なのです。業績が伸びる会社には、独特の『呼吸』がある。これは、数多くの企業を見てきた私の持論です。その『呼吸』とは、組織全体が一体となり、心から安心して挑戦できる、生命力に満ちた「空気」の流れです。このコラムでは、その『呼吸』を構成する3つの感情トリガー──一体感、安心感、挑戦心──を意図的に設計することで、いかにしてあなたの会社を勝てる組織に変革できるかを、経営者向けに深く解説していきます。

<1>職場の『呼吸』とは何か──見えない「酸素」が業績を決める

私たちは、普段の生活で空気の存在を意識しません。しかし、酸素がわずかでも不足すれば、身体はたちまち機能不全に陥ります。企業も同じです。どんなに優れた戦略や人財がいても、その組織に流れる「空気感」が澱んでいれば、パフォーマンスは確実に低下します。この「空気」の質を、私は『透明資産』がつくりだすと伝えてます。これは、社員の感情や行動を無意識のうちに動かし、それが業績へと直結する、まさに、見えない経営資産です。この透明資産の価値を理解し、意図的に設計できるかどうかが、現代の企業が勝ち残るための最も重要な経営課題なのです。

ランチェスター戦略が弱者が強者に勝つためには、特定の分野で圧倒的な優位性を築くべきだと説くように、中小企業が大手企業と伍していくためには、価格や規模といった土俵で戦うのではなく、競合が簡単に真似できない「空気感」という独自の強みを磨き上げる必要があります。そして、その「空気感」を構成する3つの要素こそが、組織の『呼吸』を司るトリガーなのです。

<2>業績を押し上げる3つの感情トリガー

①一体感の『呼吸』──「私たち」が創り出す集合的知性

一体感とは、単に仲が良いという表面的なものではありません。それは、組織のメンバーが共通の目的を共有し、「私たちは同じ船に乗っている」という強い当事者意識を持つ状態です。この一体感が生まれると、社員は自分の仕事が組織全体にどう貢献しているかを理解し、自律的に動き出します。「社会心理学的自己」という概念があります。これは、個人が自分を単なる個としてではなく、集団の一員として認識する心理状態です。この「社会心理学的自己」が活性化すると、人は集団の成功を自分の成功と同一視するようになり、献身的に行動するようになります。一体感の『呼吸』は、まさにこの心理状態を組織全体に創り出すものです。

この一体感を醸成するためには、経営者の「Why」、すなわち「なぜこの会社が存在するのか」という根源的な目的を、社員が心から腹落ちできるように伝え続けることが不可欠です。多くの企業が、理念を「What(何をするか)」や「How(どうやるか)」だけで語りがちですが、人は「Why(なぜやるか)」に最も深く共感します。朝礼での短いスピーチ、会議の冒頭での目的確認、社内SNSでの成功事例の共有など、日常のあらゆる接点で「私たちの仕事は、お客様にこんな価値を届けるためだ」という目的を繰り返し伝えることで、一体感という『呼吸』が組織に定着していきます。

例えば、あるIT企業の社長が、「私たちの仕事は、単にコードを書くことではない。お客様のビジネスを、テクノロジーの力で次のステージに引き上げることだ」と語り続けたとします。すると、プログラマーは単なる作業者ではなく、「お客様の未来を創る共創者」として自らの役割を認識するようになります。この『呼吸』が、部署間の壁をなくし、部門横断的な協力や情報共有を促し、組織全体の集合的知性を高める原動力となるのです。

②安心感の『呼吸』──「失敗は学び」が創り出す創造性

どんなに優秀な人財も、失敗を恐れる環境下では、新しい挑戦をすることに二の足を踏んでしまいます。心理学では、これを「心理的安全性」と呼び、組織の創造性と学習能力を決定づける最も重要な要素の一つとされています。この心理的安全性が担保された環境こそが、安心感の『呼吸』が満ちる職場です。脳科学の視点から見ると、人間は恐怖や不安を感じると、脳の扁桃体が活性化し、理性や創造性を司る前頭前野の働きが抑制されます。つまり、失敗を責められるのではないかという不安が、社員の思考を停止させ、新しいアイデアや改善策が生まれない状態を作り出すのです。逆に、安心して発言したり、挑戦できる環境では、脳はポジティブなフィードバックを受け取り、前頭前野の働きが活発になります。

経営者は、この安心感の『呼吸』を意図的に創り出すために、社員の失敗を「責任追及の場」ではなく、学びの場へと転換する姿勢を見せることが不可欠です。例えば、新しいプロジェクトが失敗に終わった時、誰かを責めるのではなく、「今回のプロジェクトから、私たちが学んだことは何か?」という問いを投げかけ、全員で原因と対策を話し合う場を設けるのです。この「失敗を歓迎する」という明確なメッセージは、社員が「失敗しても大丈夫だ」という安心感を抱くための強力なトリガーとなります。

この安心感の『呼吸』が定着すれば、社員は自らのアイデアを積極的に発言するようになり、業務改善やイノベーションが自然と生まれるようになります。それは、社員の「自己成長意欲」という内なるモチベーションを引き出し、組織全体の学習能力を飛躍的に向上させる、かけがえのない透明資産となるのです。

③挑戦心の『呼吸』──「できる」を信じ、未来を切り拓くエネルギー

一体感と安心感の『呼吸』が整った組織には、自然と挑戦心の『呼吸』が生まれます。それは、社員が「私たちは、もっと良いことができる」と信じ、現状維持に甘んじることなく、常に高みを目指し続けるエネルギーです。この挑戦心の『呼吸』こそが、組織を停滞から解放し、持続的な成長へと導く最後のトリガーです。心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感」という概念は、人間が「自分ならできる」と信じる力が、行動とパフォーマンスに大きな影響を与えることを示しています。挑戦心の『呼吸』は、社員一人ひとりの自己効力感を高め、それが組織全体のモチベーションへと伝播する現象です。

この挑戦心の『呼吸』を創り出すためには、経営者が社員の「小さな成功」を徹底的に称賛し、その成功体験を組織全体で共有する仕組みを構築することが重要です。大きな目標を掲げるだけでなく、それを達成するために必要な小さなステップを明確にし、その一つ一つをクリアするたびに、経営者自身が率先して「おめでとう」「ありがとう」と声をかけます。脳科学的には、成功体験は脳の報酬系を活性化させ、さらなる挑戦への意欲を高めることが明らかになっています。このポジティブなフィードバックの循環は、社員が「自分にもできる」という確信を深め、より大きな挑戦へと向かう勇気を与えます。

また、挑戦心の『呼吸』は、組織全体の「学習能力」にも深く関わります。社員が新しいスキルを学び、それを実践する機会を与えることは、その社員の可能性を広げるだけでなく、組織全体の知識と技術の資産を増やします。この継続的な学びと挑戦のサイクルが、競合他社には真似のできない、組織の「筋肉」を鍛え上げ、未来を切り拓く強固な透明資産となるのです。

<3>『呼吸』を整える経営者の役割

一体感、安心感、挑戦心という3つの『呼吸』は、どれか一つが欠けても機能しません。一体感があっても安心感がなければ、誰も意見を言えなくなり、挑戦心も生まれません。安心感があっても一体感がなければ、個人プレーに終始し、組織としての力は発揮できません。経営者は、この3つの『呼吸』をバランス良く整え、組織全体に健全な「空気」の流れを創り出す組織の呼吸器としての役割を担うべきです。多くの経営者が陥りがちなのが、「良い空気」を創ろうとしながらも、その手法が場当たり的で、持続性がないことです。透明資産経営とは、「空気」を単なる偶然の産物として放置するのではなく、理念、習慣、場づくり、そして可視化の4ステップを通じて、意図的かつ体系的に設計し、運用するものです。

この「呼吸」を整えることができれば、あなたの会社は、給与や待遇といった目に見える条件に左右されることなく、社員が「この会社で働きたい」と心から願う、魅力的な組織へと変わります。それは、社員一人ひとりが自律的に動き、生産性が飛躍的に向上し、新しい挑戦からイノベーションが生まれる、生命力に満ちた状態です。

<まとめ>見えない『呼吸』を、利益に変える羅針盤

企業を停滞させる「酸素不足」は、目に見えません。しかし、その影響は、離職率の増加、生産性の低下、そして業績の停滞として明確に現れます。透明資産経営は、この「酸素不足」を根本から解消し、組織の『呼吸』を整えることで、持続的な成長と成功を実現する、これからの時代の経営戦略です。一体感、安心感、挑戦心という3つの『呼吸』を意図的にデザインし、運用すること。それは、社員の心に深く根を張り、彼らの行動を無意識のうちに変え、それが業績という形で具現化する、強力な「見えないエンジン」を手に入れることを意味します。あなたの会社の『呼吸』は、今、どのような状態ですか?その「空気」という見えない資産を、今こそ、経営の最重要課題として見つめ直す時なのです。

―勝田耕司

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