空気は「売り上げの波」を作る|見えない資産を経営の軸に据える
「勝田さん、最近、現場の空気の変化が、そのまま売り上げの波を作っているんじゃないか、という感覚があるんですよ。数字が不安定なのは、戦略の問題というより、社内の空気の乱れが原因なんじゃないかと…」
「それは鋭い指摘ですね、山下社長。まさしくその通りです。私がラーメン店を2店舗運営している実体験からも、空気感の違いによる売り上げの違いを目の当たりにしてきました。空気感は、目に見えないからこそ、放置するとゆっくり全体に広がってしまい、やがて業績に影響を与えるのです。」
「やはりそうなんですか。私たちは、目に見える集客施策や販促ばかりに大金を投じていますが、なぜかリピーターが増えないという悩みがずっとあって…」
「そのリピーターが根付かない原因も、突き詰めれば空気感にあるかもしれません。今回のテーマは、この空気がなぜ業績を左右するのか?そしてそれをどう経営の軸に据えるか?について深掘りしていきましょう。」
―1.「空気」は、なぜ業績に直結するのか?
多くの経営者は、業績を上げるために戦略と実行力が必要だと考えます。その通りです!そして、実行力を支えているのは、他でもない空気感の力であることも事実なのです。なぜなら、実行するのは従業員・人であり、商品サービスを購入するのもお客様・人だからです 。
どれだけ良い戦略も、社内の空気が悪ければうまく動きません。逆に、空気が整えば、戦略も自然に動き出すのです。
◎空気が生み出す選ばれ続ける理由
お客様が「また来よう」「また買おう」と思うとき、その決め手は何でしょうか?もちろん、商品力や価格、利便性も大切ですが、実際に人の行動に影響を与えているのは、もっと感覚的なもの、言葉にできないけれど、確かに感じる「なにか」です 。
「なにか、あのお店って、なんとなく感じがいいよね」
「言葉にできないけれど、あのお店に行くとなんとなく元気になる気がする」
この“なんとなく~”こそが、空気感の影響力なのです。経営者が意図していようがいまいが、空気は常に流れており、それがお客様の感情を揺らし、選択の意思決定に大きく作用しているのです 。
この空気感を見ようとしない、感じようとしない、もっというとそもそも無自覚な経営者は、それだけで甚大な機会損失を招いてしまっていると言っても過言ではありません。なぜなら、お客様から選ばれる理由は、数字ではなく感じられる何かだからです 。
◎エンゲージメントと生産性の科学
この空気の影響は、お客様だけにとどまりません。組織の内部、つまり従業員にとっても、空気は大きな意味を持ちます。
アメリカのギャラップ社が発表したState of the Global Workplace 2023 Reportによれば、従業員エンゲージメントが高い組織は、生産性が約20%向上し、離職率が約59%低下すると報告されています。
このデータが示すのは、空気を整え、従業員が前向きになる環境をつくることが、いかに業績に直結するかということです。
・やらされ感がまん延している「空気」の中では、誰も本気になれません。
・しかし、この場所で必要とされていると感じる「空気」の中では、人は自然と動き出すのです。
「空気」は、従業員の熱量に転写され、行動を変え、やがて組織全体の流れを変えていきます。「空気」の変化は、利益の起点なのです。
―2.「空気」を経営の羅針盤として扱う
「山下社長、あなたは日々、経営の舵取りで何から手をつければいいのか?本当にこれで正しいのか?と悩むことも少なくないはずです。特に、社員のモチベーションを上げたい、もっと風通しの良い組織にしたい、といった空気感に関わる課題は、その重要性を理解しつつも、具体的にどう手を打てばいいのか見えにくいものです。」
透明資産の考え方は、まさにその課題に対し、社長が何を?どうすべきか?を明確にし、行動へと繋げます。
◎曖昧な課題を「羅針盤」に変える
私たちは、まず、皆さんの会社に流れる現在の空気感を客観的に診断し、良い点も、改善すべき点も具体的に炙り出します。そして、その空気感が、皆さんの会社の事業成果や組織文化にどう影響しているのかを可視化します。
最も重要なのは、社長の想いと会社の軸を深く一致させることなのです。社長がどんな未来を描き、どんな会社にしたいのか、どんな価値を社会に提供したいのか。その深層にある哲学を明確にし、それが会社の経営理念や行動規範、そして日々の業務における空気感としてどう具現化されるべきかを、共に考え抜きます。
このプロセスを通じて、社長は曖昧だった空気感の改善という課題に対し、明確な道筋と具体的な行動指針を得ることができます。
・社長が「空気感」を意図的にデザインし、経営に活かすための具体的なアクションプランを策定する。
・社長自身が軸を持ち、その軸が会社の空気をリードすることで、組織は一貫性を持って変革を遂げる。
透明資産経営の実践は、社長が見えない経営資産を掌握し、リーダーシップを最大限に発揮するための羅針盤となるのです。
―3.空気は土壌であり、起動装置である
「山下社長、あなたはこれまで、制度や仕組み、役職やKPIといった目に見えることに注目してきたかもしれません。しかし、実は、制度を活かすも殺すも、その根底に流れる空気感によって決まるのです。」
・優れた人事制度も、信頼の「空気」がなければ形骸化する。
・新しい目標や挑戦を歓迎する「空気」がなければ定着しない。
・理念も、「空気」の中ににじみ出ていなければ、ただの言葉になる。
空気感は、経営の根幹を左右する構造の土壌であり、起動装置です。目先の制度の前に、空気感をつくる。これが経営の順序なのです 。
◎お客様は空気で商品を選ぶ
現代の市場は、技術の進歩が速く、どんなに革新的な商品でも、あっという間に模倣され、コモディティ化してしまうリスクを常に抱えています。単なる機能や価格で勝負する赤い海から抜け出すために必要なのが、独自の空気感を武器に差別化を図ることです 。
私たちが着目するのは、企業独自の価値観やお客様との間に生まれる特別な空気です。これは、商品の品質やサービスの効率性といった見える部分だけでは測れない、お客様があえてこの会社を選ぶ理由となるものなのです。
・お客様が感じる安心感、親近感
・この会社と関わると元気になる
これらは、情緒的な価値や体験がそれにあたります。この空気感は、皆さんの会社の歴史、社員の個性、哲学といった、唯一無二の透明資産によって形成されているため、競合他社は簡単に模倣できません 。
―4.「空気」を経営資源として記録し継承する
空気は目に見えませんが、それを経営資源として捉えることで、会社の未来に引き継げる価値となります 。
空気感を経営に活かすとは、見えない資産を見える成長に変換していく営みです 。
そのためには、空気感を意図的につくるためのに実践することや工夫・やり取り・反応を可能な限り記録しておくことが大切になります 。
・なぜ、あの空気はよかったのか?
・どうして、あの会議はうまくいったのか?
・どんな一言が、雰囲気を変えたのか?
こうした感覚的な体験知を蓄積していくことで、空気づくりはノウハウとして再現され、会社の経営資源として継承されていきます 。
これは、理念や戦略を超えた、経営の感覚的中核を言語化し、再現し、引き継ぐということ 。次世代の幹部や後継者に、会社の魂を感覚ごと渡すことが可能になります 。
これは、事業承継やM&Aといった重要な局面でも、唯一無二の経営資産となるでしょう 。
―5.「空気」が変わると、すべてが動き出す連鎖
あなたの会社に流れる空気感を意図的に変えることができれば、組織にはこのような現象が現れます。
・指示がなくても必要なことが自然に行われる。
・コミュニケーションが摩擦なく交差する。
・不満がたまる前に共有される。
・成果の出る動きが無理なく連鎖する。
組織に流れる呼吸が一致している状態ともいえるかもしれません。この従業員の行動を引き起こす仕組みこそが透明資産の中核であり、経営者が取り入れるべき仕組みなのです 。
空気感が変われば、すべてが動き出す。その起点に気づいた今が、動くタイミングです 。
・社長が変わると、空気が変わる 。
・空気が変わると、従業員が変わる 。
・従業員が変わると、お客様が変わる 。
・お客様が変わると、業績が変わる 。
そして、社長が感じていた漠然とした不安は、確信へと姿を変えます。この連鎖を生む起点が空気という見えない経営資源、すなわち透明資産の仕組が意図的につくりだすものなのです。
「勝田さん、売り上げの波が空気の乱れだったという話、本当に衝撃でした。これまで、数字を追うことばかりで、この空気感いう経営の土台のメンテナンスを怠っていたのかもしれません。まずは、自分の姿勢、言葉、そして職場の音に、もっと意識を向けてみます。」
「ええ。その空気を意識的に感じる姿勢を持って経営に取り組む覚悟 、それこそが未来を変える出発点です。」
―勝田耕司
<透明資産とは?>
業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。















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