<経営の羅針盤>透明資産経営が拓く「成果の方程式」と「空気感」の力5つのポイント
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた経営で、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながるのです。
企業の持続的成長を語る上で、私たちはとかく「個人のスキル」という目に見える能力に注目しがちです。しかし、どれほど優れたスキルを持つ社員が集まっても、組織全体の「空気感」が澱んでいては、その真価は発揮されません。私が提唱する透明資産経営とは、この業績に深く影響する「空気感」を意図的に設計し、運用する仕組みです。今日のコラムでは、成果を最大化する「方程式」を紐解きながら、いかにしてこの「空気感」が企業の競争力を高めるかについて、5つの視点から解説しましょう。
仕事の成果=『個人のスキル』×『個と個の関係構築力』
このシンプルな方程式こそが、透明資産経営の核心を突いています。そして、この方程式を読み解く鍵は、個人のスキルをさらに分解することにあるのです。
個人のスキル=『基本スキル』×『個性』
さらに、基本スキルは、「在り方」と「やり方」という二つの重要な要素で構成されます。多くの企業が「やり方」のスキルアップに注力しますが、真の成果を生み出すには、その土台となる「在り方」が何よりも重要なのです。そして、この方程式を解き、組織の「空気感」を最適化し、最大の成果を生み出すための仕組みこそが、透明資産に他なりません。
―1.「在り方」と「やり方」/成果の土台を築く社長の役割
成果の方程式の根幹をなす「個人のスキル」は、「在り方」と「やり方」という両輪で成り立っています。この二つは、車の前輪と後輪のように、どちらか一方だけでは前に進むことができません。しかし、多くの企業は「やり方」、すなわち「どうすればうまくいくか」というテクニックやノウハウばかりに目を向けがちです。たしかに、効率的な営業手法や最新のマーケティングツールといった「やり方」は、短期的な成果に直結しやすいかもしれません。しかし、その土台となる「在り方」、つまり「なぜ私たちはこの仕事をするのか」「私たちは何を大切にするのか」という哲学や価値観が曖昧であれば、その「やり方」は脆く、長続きしません。
ここで、社長の最も重要な役割が浮き彫りになります。それは、誰よりも明確で一貫した「在り方」を体現し、組織全体に浸透させることです。それは、企業という船を動かすための、揺るぎない羅針盤のようなものです。この羅針盤がなければ、社員はどこに向かえばよいか分からず、それぞれのやり方でバラバラに進もうとしてしまいます。著名な経営者である稲盛和夫氏は、「経営は哲学である」と語り、その「京セラフィロソフィ」を通じて社員の「在り方」を確立しました。この哲学が浸透していたからこそ、社員は自律的に考え、行動し、企業は未曾有の成長を遂げたのです。
透明資産経営において、社長は自らの「在り方」に一貫性を持たせ、それを組織の文化として整えることに全力を注ぎます。一方で、日々の業務における「やり方」の領域は、積極的に社員に任せるべきです。社員は、社長が示す明確な「在り方」という羅針盤のもと、現場の状況に応じて最適な「やり方」を自ら考え、工夫し、実行することで、当事者意識と責任感が育まれます。これは、脳科学の視点からも理にかなっています。人間は、自らの意思で行動を決定したときに、ドーパミンという快楽物質が分泌され、モチベーションが向上することが知られています。社長が「在り方」という大原則を示し、社員が「やり方」という自由裁量を持つことで、組織全体に自律的な成長と活気に満ちた「空気感」が醸成されるのです。
―2.個人の「基本スキル」と「個性」/多様な強みを引き出す組織のデザイン
成果の方程式の次の要素は、個人のスキルが「基本スキル」と「個性」という二つの要素から成り立っていることです。透明資産経営では、この両方を最大限に活かす組織のデザインを目指します。
「基本スキル」とは、どのような仕事においても共通して求められる土台となる力です。それは、コミュニケーション能力、論理的思考力、問題解決能力、そして前述した企業の「在り方」に沿った行動力などです。これらは、組織全体のパフォーマンスを底上げするための必要不可欠な要素です。さらにいうと、学校教育で学ぶ〝認知能力〟領域ではなく、答えなの無い社会で生き抜くために必要な〝非認知能力〟領域でもあるのです。
透明資産経営では、この「基本スキル」を組織として標準化し、社員教育の核とします。例えば、すべての社員が、会社のビジョンを自分の言葉で語れるようになるための研修や、互いの意見を尊重しながら議論するファシリテーションの技術を学ぶ場を提供します。
一方で、もう一つの重要な要素である「個性」は、社員一人ひとりが持つ、独自の才能や価値観、強みです。画一的な組織では、この「個性」が埋もれてしまいがちですが、透明資産経営では、むしろこれを企業の競争力の源泉と捉えます。歴史上の偉人たちは、この「個性」の力を最大限に活かしました。織田信長は、既存の組織や慣習にとらわれず、それぞれの才能を持つ家臣に権限を与え、斬新な戦略で天下統一に近づきました。彼が築いたのは、個々の個性が輝くことで、組織全体が強くなる「空気感」だったと言えるでしょう。
現代の組織においても同じです。情報局が主導する社内コミュニケーションを通じて、社員一人ひとりの「個性」を顕在化させ、それを組織全体の資産として共有する仕組みを構築します。例えば、ある社員が持つ特異な知識や趣味が、新たな企画のヒントになったり、顧客との関係構築に役立ったりすることもあります。心理学者のカール・ユングは、人間の心の奥底には「個性化」という、自らの個性を発揮したいという欲求があることを示しました。社員が安心して「個性」を発揮できる「空気感」こそが、内発的なモチベーションを高め、組織にイノベーションをもたらす原動力となるのです。
―3.「個と個の関係構築力」/化学反応を起こす組織の「空気感」
仕事の成果を最大化する方程式のもう一つの重要な要素が、『個と個の関係構築力』です。どれほど優れたスキルを持つ個人が集まっても、彼らの間に信頼関係や協力体制がなければ、組織としての成果は限定的です。これは、まるで個々の高性能な部品が、うまく噛み合わずに動かない機械のようなものです。この「個と個の関係構築力」こそが、透明資産経営が最も重視する組織の「空気感」そのものなのです。
この「関係構築力」を育むには、心理的安全性が確保された「空気感」が不可欠です。心理的安全性とは、組織内で自分の意見や疑問、失敗を恐れることなく発言できる状態を指します。グーグルが実施した「プロジェクト・アリストテレス」という調査でも、チームの生産性を高めるための重要な要素の1つは心理的安全性であることが明らかになりました。心理的安全性の高い組織では、社員はオープンに意見交換ができ、互いに助け合い、困難に直面してもポジティブなチームワークで乗り越えられます。
透明資産経営では、情報局を通じてこの「空気感」を意図的にデザインします。例えば、社内の成功事例だけでなく、失敗から学んだ教訓をオープンに共有する場を設けます。これは、社員が「失敗しても大丈夫だ」という安心感を抱くための重要なステップです度。また、部署や役職の垣根を越えた交流イベントや、メンター制度の導入も、個と個の関係を深める有効な手段です。互いの仕事の背景や人間性を理解し合うことで、信頼関係は自然と醸成されます。
このような「個と個の関係構築力」が育まれた組織は、単なるスキルの総和以上の成果、すなわち化学反応を起こします。それは、一人のアイデアが、別の誰かの視点と結びつくことで、より洗練されたものへと進化するプロセスです。経営者であるサイバーエージェントの藤田晋氏は、「採用が全て」と語り、組織の「空気感」とフィットする人財を重視してきました。これは、個人のスキルだけでなく、その人財が組織の関係性にポジティブな影響を与え、全体としての力を高めることを知っていたからに他なりません。透明資産経営は、この「関係構築力」を組織のDNAに深く刻み込むことで、一過性の成功ではない、揺るぎない成長基盤を築き上げるのです。
―4.「空気感」がもたらす『自律と共鳴』/創造性を育む組織の土壌
透明資産経営が創出する「空気感」は、社員一人ひとりの自律を促し、組織全体に共鳴のエネルギーを生み出します。これは、まるで静かな湖面に投げ込まれた小石が、やがて大きな波紋となり広がるような現象です。この自律と共鳴のサイクルこそが、創造性を育む組織の土壌となります。
自律とは、社長が明確な「在り方」という羅針盤を示した上で、社員が自らの頭で考え、行動する主体性のことです。これは、やらされ仕事ではなく、自分の仕事として捉える意識へと繋がります。経営学者のピーター・ドラッカーは、「人は目的のために自律的に働くとき、最大の力を発揮する」と説きました。透明資産経営では、情報局を通じて企業のビジョンや理念がどのように日々の業務に繋がっているかを繰り返し発信することで、社員の「なぜこの仕事をするのか」という問いに応え、自律的な行動を促します。
そして、この自律的な行動から生まれた成果や知見は、情報環流を通じて組織全体に広がり、共鳴を起こします。一人の社員が抱いた小さな疑問やアイデアが、別の社員の共感を呼び、新たなプロジェクトへと発展していく。これは、単なる情報共有を超えた、感情や意図の伝播です。心理学的には、人間は他者の情熱や意図を理解することで、ミラーニューロンが活性化し、共感を覚えることが知られています。この共鳴の「空気感」は、組織に一体感をもたらし、部門や役職の壁を越えた協力を自然なものにします。
例えば、歴史上の武将、武田信玄が掲げた「風林火山」の旗は、単なるスローガンではなく、武田軍という組織の「在り方」を体現するものでした。兵士たちは、この旗の下で、自律的に行動し、互いに共鳴し合うことで、無類の強さを誇りました。現代の企業も同じです。社長が明確な「在り方」という旗を掲げ、情報局がその旗に込められた想いを「空気感」として環流させることで、社員は自律的に考え、行動し、互いに共鳴しながら、組織としての創造性を高めていくことができるのです。
―5.透明資産経営が描く、持続的成長の未来
透明資産経営は、一過性の流行や短期的な利益を追う経営とは一線を画します。それは、社員一人ひとりの「在り方」を大切にし、個性を活かし、互いの関係性を深めることで、組織全体の「空気感」を最適化し、最大の成果を生み出すための、長期的な戦略です。
仕事の成果=『個人のスキル(基本スキル×個性)』×『個と個の関係構築力』
この方程式を深く理解し、実践する企業は、単に優秀な人財を集めるだけでなく、彼らが最大のパフォーマンスを発揮できる「空気感」を創造することができます。それは、外部の環境変化に左右されない、内側から湧き出る強固な競争優位性となります。
最終的に、透明資産経営が目指すのは、企業が単なる経済活動の場ではなく、そこで働く社員、そしてその企業と関わるすべての人々にとって、喜びと成長の場となることです。このポジティブな「空気感」は、商品やサービスを通じてお客様にも伝わり、深い信頼と愛着を育みます。結果として、企業の業績は安定し、持続的な成長へと繋がります。
歴史家たちは、偉大な組織や文明の成功の裏には、目に見えない精神や文化の存在があったことを指摘します。透明資産経営は、その精神や文化、すなわち「空気感」という無形の資産を、現代の経営に科学的に取り入れる試みです。私たちは今、目先の利益だけでなく、この見えない資産をどれだけ大切に育めるかが、未来の企業価値を決定づける時代に生きています。透明資産経営は、その未来を創造するための、最も確実な羅針盤となるでしょう。
―勝田耕司
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