コロナウィルス禍における外食の勝ち組とされてきた回転ずしチェーン「スシロー」で、このところ不祥事が続いています。
6月上旬に消費者庁から、期間限定商品のキャンペーンが「おとり広告」にあたるとして景品表示法違反の措置命令を受けました。それに続いて、生ビール半額キャンペーン中に多くの店で生ビールが品切れしていたことが発覚し、ネットで炎上する騒ぎになっています。
スシローは回転ずしチェーンの中でも商品のクオリティの高さは際立っており、そのお値打ち度は圧倒的です。加えてこの間、モバイルオーダーや非接触のサービスを充実させ、お客様が使いやすい店づくりに力を入れてきました。
それがコロナ禍でも高い支持を得てきた要因といえます。外食チェーンの中でも仕組みの完成度は群を抜いており、その点は高く評価されるべきと思います。
そしてもうひとつ、スシローの強みはマーケティングの巧みさであり、テレビCMの積極活用などでブランドイメージを高めてきました。今回はその販売促進、いわば得意であるはずのフィールドで失点してしまったわけです。
失点はいち早く業績に表れ、6月のスシローの既存店売上高は前年同月比97.5%になっています。4月は105.3%、5月は107.8%で、とくに5月は客数を前年比で10%以上伸ばしていましたから、失速は明らかです。そして、この背景におとり広告問題があることは間違いないでしょう。
一連の問題で一番いけないのは、お客様の「期待」を裏切ってしまったことです。これまでスシローは、商品にスポットをあてた積極的なキャンペーンを続けてきましたが、その目的はお客様の期待感を高めることにありました。そして、来店したお客様の期待を超える満足度を提供していたからこそ、好調な業績を維持することができたのです。
コロナ禍以降はとくに、外食という行動が制限されたことで、「せっかくの外食の機会に大きな満足を得たい」というニーズが高まる傾向にありました。同時に、お客様の期待も高まるわけで、それを裏切る結果になったことが最大の問題といえます。
お店に対する信頼とは、お客様が「あの店に行けば常に期待通りの、時には期待を上回る満足が得られる」と思っていただけていることを指します。そうした信頼の蓄積が、その店の「透明資産」をつくっていくのです。
スシローは外食業界の中でも、きわめて多くの透明資産を持っているチェーンのひとつですが、今回の問題はその資産の価値を傷つけることになってしまいました。
これを他山の石として、「わが店は、お客様の期待を上回る価値を提供できているか」を見つめなおしていただきたいと思います。
ー勝田耕司
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