コロナ禍から着実に復活しつつある日本経済ですが、同時に大きな問題が起こってきました。あらゆる産業分野で顕著になっている人手不足の問題です。
とくに外食産業においては深刻であり、人員数が揃わず店の運営に支障が出るとか、人件費が上昇して利益を圧迫するといったレベルを超えてきました。人がいないため店を開けられず、経営自体が成り立たないというケースが目立っています。
まだコロナ禍が続いていた頃に盛んに言われたのが、コロナ融資が返済できなくなって経営破綻に追い込まれるという問題です。それも確かに深刻ですが、いま問題になっているのは“人手不足倒産”です。
コロナ禍で店が閉店したり長期休業に追い込まれた結果、それまで外食業で働いていた多くの人々が職を失い、他の産業に流れていきました。
そういう人の多くは、コロナ禍が終息しても外食の仕事に戻ってきていません。この3年の間に引き起こされた労働力の移動が外食業の経営に大きな打撃となっているわけで、この人手不足倒産もまた、コロナ禍がもたらした災害と言えるでしょう。
働く人だけでなく、お客様の多くもコロナ禍の3年間、外食の現場から遠ざかっていました。そうしたお客様に再び足を運んでいただき、外食の楽しさを実感して固定客になっていただかなければなりません。
そのために不可欠なのが、外食ならではの価値を商品、サービス、店の雰囲気を通じて実感していただくこと。この間コラムでお伝えしてきたように、QSCを高いレベルで維持することです。
それが「やっぱり外食はいい」と感じていただく唯一の道です。
働く人に対しても同じことが言えます。一番大切なのは、いかに「外食の仕事って、やっぱり楽しい」と思ってもらえるか。すなわち、仕事のやりがいを感じてもらえるかです。
待遇や労働環境を改善していくことも大切ですが、やりがいのない仕事には決して人は集まりません。
では、人は何によってやりがいを感じるかと言えば、自分自身の“貢献度”を実感できることです。
お客様にご満足いただくために自分が貢献できている。店の円滑な運営や収益向上に自分が貢献できている。そう感じた時に、人はこのうえない喜びを感じるし、持てる力を最大に発揮できます。
そして、生き生きと働く人の姿を見て、お客様も外食ならではの楽しさを感じるのです。
そのような店にしていく第一歩は、経営者や店を預かる店長が、ともに働いてくれる人を唯一無二の存在と認め、その人のやりがいを高めることを自らのやりがいとすることです。
結果としてチームワークが自然とよくなり、店の楽しさが生まれます。そうした好循環をつくることこそ、未曾有の人手不足を乗り切る鍵なのです。
ー勝田耕司
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