コロナ禍の緊急事態宣言が9月30日で解除されました。医療体制の逼迫など、いまだ予断を許さない状況ではありますが、経済の本格的な回復に向けた動きは少しずつ出てきています。飲食店にもやっと、未来への展望が見えはじめました。
大手企業を中心に、外食業界ではこの間“withコロナ”の時代を見据えた新しい業態や新事業を模索する動きが続いています。そうしたチャレンジの真価がこれから問われることになりますが、その成否を左右するのは「透明資産」だと思います。その企業や店ならではの強み、すなわち透明資産が成功の鍵になるはずです。
たとえば、居酒屋チェーンの「鳥貴族」が8月にオープンしたハンバーガーの新業態「トリキバーガー」。
展開発表から5ヵ月、満を持してのオープンということで注目を集めましたが、ここには鳥貴族がこれまで蓄積してきたノウハウや、この企業ならではの思想、さらにいえば経営理念が盛り込まれています。居酒屋とファストフード、業態は違えど“鳥貴族らしさ”は共通なのです。
まず感心するのは商品のクオリティです。看板商品の「トリキバーガー」は鶏胸肉を使いながらきわめてジューシーに仕上がっていて、これは鳥貴族の「トリキの唐揚」で品質向上の取り組みを続けてきた成果でしょう。
「焼鳥バーガー~てりやき~」は焼きあげた鶏モモ肉とタレの相性がよく、既存のファストフードの商品としっかり差別化できています。
もちろんベースにあるのは食材のクオリティの高さで、鶏肉は100%国産を使用。まさしく鳥貴族ならではのマーチャンダイジング力が生かされていると言えるでしょう。
さらに感心するのは、6品あるチキンバーガーは単品390円、ポテトとドリンク付きのセットは590円(いずれも税込み)に統一している点です。
6品あるモーニングセットも490円均一、ポテトやエッグタルトなどサイドメニューも190円均一という設定。
お客様の選びやすさを最優先したこの価格設定は鳥貴族に通じるものですが、これまでのファストフードにはなかった考え方です。もちろん、コストパフォーマンスもきわめて高いものがあります。
コロナ禍を受けて、お酒主体の業態から食事主体の業態へ転換する動きが顕著です。トリキバーガーもその流れにありますが、ここで注目したいのは、業態が変わっても「どのような顧客満足を提供するか」という企業としての考え方は不変であることです。
商品は選びやすく、どれもおいしい。トリキバーガーで得た満足感は、鳥貴族に通じるものでした。
これこそが鳥貴族という会社の強みであり、最大の透明資産であると思います。
ー勝田耕司
この記事へのコメントはありません。