ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に関するニュースが連日報じられています。
一刻も早い事態の収束を願うばかりですが、この暴挙は平和な日常がいかに大切なものであるかを示すことになりました。普段通りに生活が続いていくこと、あらゆる人々が共存していくことは、人類にとって普遍的な価値です。それはつまり、サスティナビリティ(持続可能性)を追求していくことです。
私はコロナウィルス禍が起こる前から、このコラムでサスティナビリティの重要性を訴えてきました。コロナ禍も平和な日常を奪った災禍であり、サスティナビリティを脅かすものです。いままた戦争という新たな脅威が現れ、多くの人々が先の見えない状況に追い込まれています。われわれ日本人もこれを対岸の火事と捉えず、持続可能な社会の実現に取り組まなければならないと思います。
外食業にとっても、サスティナビリティの追求が経営の重要なテーマになっています。
この2年間はコロナ禍をどう乗り切るかが事業継続のための最重要課題でしたが、これからはその先を見据えて経営のあり方を考えていく必要があるでしょう。そこで不可欠な視点は「社会から必要とされる存在」になれるかということです。
必要とされるものとは、商品やサービスにとどまりません。とくに大切なのは、ビジネスを支える人々にとって必要な存在になることです。店や企業で働く社員とパート・アルバイトはもちろん、取引先や食材の生産者など社外の人々にも「この会社があってよかった」と思ってもらえるかどうかが、事業の価値を決めるのです。
コロナ禍でも好業績をあげている外食企業に共通しているのはこの点です。
たとえば「餃子の王将」を展開する㈱王将フードサービスは、過去8年間にわたって社員の給与を上げ続けています。また、2015年から段階的に進めてきた国産食材への切り替えは、多くの食材生産者にビジネスの機会を提供することになりました。
㈱モスフードサービスも主力事業の「モスバーガー」において新しい取り組みをしています。昨年5月に限定販売した「全国の生産地応援バーガー 真鯛カツ」は、愛媛県愛南町で養殖された真鯛をパティに使ったもの。
同社はコロナ禍が起こって以降、消費の落ち込みで出荷量減少に苦しむ産地や生産者を応援するため、地方食材を使った商品企画や農産物の販売サポートなどに取り組んできました。この商品は、そうした企業姿勢を象徴するものといえます。
外食がサスティナビリティを実現するための絶対条件は、そのビジネス自体が永続していくことです。そして、永続性こそが店や企業にとってもっとも価値のある「透明資産」になるのです。
ー勝田耕司
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