前回このコラムでお伝えした朝食マーケットのように、外食業界ではコロナウィルス禍でいくつもの変化が生まれました。
アルコールのマーケットもそのひとつです。テレワークの浸透などにより「仕事の後に仲間と一杯」といったニーズがなくなり、アルコール離れに拍車がかかりました。
一方で、“積極的に”アルコールを飲まない人々が増えています。私は以前からこうした動きを前向きに捉え、アルコールを飲む人と飲まない人が同じ時間と場所を過ごす「ゲコノミニケーション」を推進すべき、と提唱してきました。
これは人々が国籍や性差、思想などの違いを超えて共存共栄できる環境をつくるという点で、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の実現につながります。
また、飲食店がそのような場所として機能することで、多くの人々に幸福感をもたらし、地域になくてはならない存在になることができます。
お店や企業に紐づいている空気感や雰囲気こそが独自の強みになるという「透明資産マーケティング」の考え方に通じるものであり、私がゲコノミニケーションに注目する理由もそこにあります。
そして実際に、ゲコノミニケーション実践に取り組むさまざまな試みが登場してきました。積極的なノンアル需要を取り込むべく、これまでアルコール主力だった業態が新機軸を打ち出しています。
たとえば、㈱ブルームダイニングサービスが展開する唐揚げメインのバル「がブリチキン。」日曜日から木曜日限定で提供する「ノンアル飲み放題コース」は、色鮮やかなクリームソーダを何種類も揃えて20~30代の女性客に好評です。
今年5月にノンアルメニューの品揃えを7種類から20種類に増やすなどのメニュー改定を実施し、ノンアルメニューの注文数を1.5倍に増やしました。
昼はカフェ、夜は居酒屋の二毛作業態として展開してきた㈱プロントコーポレーションの「プロント」も、メニュー面で新しい試みをしています。夜の時間帯のコンセプトを「キッサカバ」として、メニューカテゴリーに「のんある喫茶」を新設。
クリームソーダやチョコバナナミルクといった喫茶店を思わせるメニューをラインアップしました。これは単なるメニュー変更にとどまらず、プロントのリブランディングの一環であり、飲む人と飲まない人が共に楽しめるゲコノミニケーションの実現に向けた取り組みと言えます。
消費者にとって最も身近なビジネスである外食こそ、あらゆる人々に「開かれた場」であるべきです。それでこそ外食ビジネスは、本当の意味でSDGsに貢献できます。その実現につながるゲコノミニケーションの動きに、今後も注目していきたいと思います。
ー勝田耕司
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