日本には全国各地にさまざまな「郷土料理」がありますが、郷土料理を主力商品にしてチェーン化をしている外食チェーンは多くありません。
その数少ない成功例といえるのが「リンガーハット」でしょう。売り物の「ちゃんぽん」は言うまでもなく長崎の郷土料理。
現地では古くから庶民の間で親しまれているものですが、リンガーハットがチェーン化をスタートした40年前には全国的な知名度がきわめて低い料理でした。
それがいまでは、日本を代表する麺料理の一つとして広く浸透しています。
ちゃんぽんの分野でリンガーハットが唯一無二といえる存在になれた理由は、商品に対する徹底したこだわりです。
いまから20年前に発売され大ヒットし、現在ではリンガーハットを象徴するメニューになっている「野菜たっぷりちゃんぽん」は、野菜が豊富なだけでなく食材をすべて国内産にしたことがヒットの要因でした。
そのために自前で生産者のネットワークをつくったり、モヤシを自社栽培するなどして地道な努力を続けてきたのです。
そのリンガーハットも、コロナウィルス禍では大きな打撃を受けました。
ちゃんぽんはつくりたてをその場で食べてこそおいしいもの。外出自粛に伴う外食控えの影響はきわめて大きなものがありました。しかし手をこまねいてるわけにはいきません。リンガーハットでもテイクアウトをはじめ、新しい売り方にトライしました。
テイクアウト用にのびにくい麺を開発したり、中身がこぼれにくい容器を導入するなど。
また、コロナ禍で業績を支えたのが冷凍ちゃんぽんの販売です。量販店向けの卸売りに加えて、ネット売りや通信販売にも力を入れました。
同じ長崎出身の企業で通販大手のジャパネットたかたが番組で取り上げた際には、20食、30食といったセット商品がわずか2時間で3000セット売れたといいます。
さらに、この冷凍ちゃんぽんを自動販売機で売るという取り組みもはじめています。
大阪府堺市の郊外にあるリンガーハットの敷地内に実験的に自動販売機を設置したところ、閉店後の深夜などにも買いに来るお客様が多く、想定以上の売上げをあげたとのこと。これを受けて今後は自動販売機設置店を増やす計画です。
「ちゃんぽんといえばリンガーハット」というブランド力こそ同社の最大の透明資産であり、それを支えているのが地道な商品へのこだわりです。
そのことが、新しい売り方に取り組むうえでも大きな原動力となりました。
ブランドとはすなわち、その商売に対するお客様からの信頼。信頼を得るには時間がかかりますが、結局はそれが成功への近道であることを教えてくれます。
ー勝田耕司
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