先日の日本経済新聞に、飲食店のラーメンの価格が上昇しているという記事が掲載されていました。小麦粉など原材料価格の上昇をはじめ、さまざまなコスト増によってラーメンの平均価格は1杯600円を超え、過去最高になっているとのこと。
庶民の味の代表というべきラーメンが象徴するように、飲食店の価格アップは避けられない状況にあるという趣旨の記事でした。
確かに、価格をいかに“無理なく”上げていくかは現在の外食業にとって最大の課題といえます。無理なく、というのは、お客様が負担に感じたり不満を持ったりすることなく、という意味です。そのためには、価格アップを価値向上と感じていただける取り組みが不可欠。そして、そのための最大の武器が「透明資産」です。
たとえば、私がフランチャイジーとして経営しているラーメンチェーン『ラーメンまこと屋』では、高付加価値メニューの開発に力を入れています。看板商品の「牛じゃんラーメン」は770円。ラーメンの価格としては決して安くありませんが、他にも契約農家で栽培した青ネギをたっぷり乗せた「青ねぎ牛じゃんラーメン」(900円)、じっくり煮込んだチャーシューを乗せた「とろ~りチャーシュー牛じゃんラーメン」(1090円)など高価格のメニューも人気です。
その価格に対して価値があるとお客様に認めていただいているからに他なりませんが、その価値を生み出しているのが基本作業の徹底です。
『ラーメンまこと屋』では、店数が50店を超えるチェーン規模になっても、店で牛骨を下処理してスープをつくり続けています。こうした品質重視の姿勢がお客様からの信頼につながり、『ラーメンまこと屋』のブランド力の源泉になっているのです。これこそが透明資産です。
大手外食チェーンの中で、無理なく価格アップを実現している例が『サイゼリヤ』です。サイゼリヤは、ここにきて季節メニューの開発に力を入れています。
最近ではラム肉を使ったメニューを充実させ、「ラムのラグースパゲッティ」や「ラムのランプステーキ」など専門性の高いメニューも導入しています。それらは既存のメニューと比べて高い価格設定ですが、好調な売れ行きを示しています。
高価格メニューが支持を得るのは、これまでの取り組みの延長線上にある商品だからです。『サイゼリヤ』は差別化された食材を開発輸入したり、自社で野菜を栽培するなど品質を追求し続けてきました。そうして顧客の信頼を得ていたからこそ、高価格メニューも「サイゼリヤならでは」の商品として無理なく受け入れられたのです。
『サイゼリヤ』の例もまた、顧客の信頼=透明資産こそが価格アップのための必要条件であることを教えてくれます。
ー勝田耕司
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