全国の約1700の酒蔵が加盟している日本酒造組合連合会の発表によれば、2022年の日本酒の輸出総額は約475億円にのぼり、過去最高を記録したとのことです。
前年を上回るのは13年連続で、22年の輸出量は3万5895ℓと、これも過去最高となりました。10年前の2012年には年間輸出額90億円、輸出量は1万4000ℓにすぎませんでしたから、この間の伸びの大きさがわかります。
22年の輸出先上位3ヵ国は中国、アメリカ、香港で、この3ヵ国で全体の67.8%を占めています。
これらの国で輸出を牽引しているのは価格の高い“プレミアム日本酒”。これは輸出全体にも言えることで、輸出金額の伸び率は一貫して輸出量の伸び率を上回っており、1ℓ当たりの金額は10年前と比べて2倍以上になっているとのことです。
注目したいのは、世界全体が新型コロナウィルス禍にあった2020年にも、輸出金額が前年を上回ったということ。
輸出量はさすがに前年の2万5000ℓから2万2000ℓに減りましたが、コロナ禍でもプレミアム日本酒のニーズは安定していたということです。
これはまさしく、日本酒が世界中で親しまれる「SAKE」へと進化したことの表れと言えます。そして同時に、世界で通用する商品やブランドが備えるべき条件とは何かを、日本酒は端的に示していると思います。それは一言でいえば「ストーリー性」です。
単にお腹を満たすとか、味がいいといった要素だけでなく、商品にまつわるストーリーこそが商品性を高める。これは食の世界に限らず幅広い産業で共通のことですが、日本酒はとりわけそれが顕著です。
若者を中心に酒離れが深刻で、国内マーケットが縮小する一方であるからこそ、意識の高い酒蔵はストーリーの重要性を認識し独自の情報発信に努めてきました。日本酒が世界のマーケットで認められるようになったのは、まさにその成果であると言えます。
情報発信とは、単なる宣伝ではありません。時にはネガティブな情報も有効なものになりえます。日本でコロナ禍がはじまった直後の2020年7月に、このコラムで滋賀県湖南市にある酒蔵「竹内酒造」の取り組みを紹介しました。
コロナ禍で出荷がストップした日本酒を、従業員手書きの「たすけてください」と書かれたラベルに貼り換えてホームページ上で販売したところ、顧客や取引先がどんどん情報を拡散。顧客の輪が拡大したという事例です。苦境に陥ったこともストーリーであり、その情報発信が共感を得たのです。
コロナ禍からの本格的な回復をめざす2023年こそ、わが店、わが社ならではのストーリーは何かを再確認しましょう。それを的確に顧客に伝えることが、独自の透明資産をつくっていくのです。
ー勝田耕司
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