バブル崩壊以後30年以上にわたって低い水準に抑えられていた価格を引き上げていくこと。これこそが新型コロナウィルス禍から外食が復活していくための必須条件であるとお話ししました。
それが労働生産性を向上させ、賃金原資を増やして持続的な賃上げに結びついてこそ、日本の外食は再び成長軌道に乗ることができます。
日本の外食の価格が国際的に見て低い水準にとどまっていることは、日本を訪れる外国人観光客が口々に言う「日本の外食は安くておいしい」という言葉に端的に示されています。
これはお世辞でも外交辞令でもなく、心からの実感なのだと思います。もちろん為替が円安に振れていることで相対的な安さを感じていることもあるでしょうが、単純な安さではなく品質に対する割安感、すなわち「お値打ち度の高さ」を評価していることは間違いありません。
以前このコラムで、インバウンド客に人気が高い日本の外食ジャンルとして「ラーメン」と「肉料理」が上位に挙げられているというお話をしました。
この2つは、日本ならではの外食の価値が明確に表現されているものの代表です。ラーメンは店主それぞれの個性や考え方が商品にはっきりと表れていますし、肉料理は焼肉に代表される「おいしく食べてもらうための工夫」をさまざまに凝らす店が増え、それがマーケットの拡大に結びつきました。
寿司や天ぷらといった昔ながらの日本食ももちろん人気ですが、食に関心が高い外国人ほど、日本の外食の新しい方向性を高く評価しているのです。
つい最近では、某マスコミが「カレー」の人気がインバウンド客の間で急速に高まっていると報じていました。多くのカレー店が集まる東京・神保町は、外国人観光客にとって絶対に行くべき食べ歩きスポットになっているとのことです。
確かに、ここに集まっているカレー専門店のレベルの高さ、それぞれの商品が備えている強烈な個性は世界的にも稀なものと言えるでしょう。これもまた、日本の外食が新しい形で国際的な評価を高めていることを示しています。
そして見逃せないのが、そうした店の個性こそが日本ならではの「おもてなし」であると受けとめられていることです。
ゆきとどいたサービス、ていねいな接客はもちろんのこと、それぞれの店が独自に味を追求し、外食を楽しんでもらうための工夫をしていることこそが、おもてなしであると評価されているのです。
「安くておいしい」は、その取り組みに対する率直な評価に他なりません。
独自のおいしさを追求し、その努力に見合った正当なお代をいただく。これこそが、いま外食業界に必要な取り組みです。それは必ず店や企業の評価を高め、独自の透明資産をつくっていくはずです。
ー勝田耕司
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