さまざまな業種業態がコロナウィルス禍で苦しむなか、比較的影響が小さかったのが回転ずしです。
とくに業界の二大巨頭である「スシロー」と「くら寿司」は、直近の決算でも絶好調というべき業績をあげています。
すしという商品の強さに加え、非接触型のサービスがコロナ禍のニーズに合致していることが要因として挙げられますが、もうひとつ見逃せないことがあります。
それは、この2つのチェーンが蓄積してきた「透明資産」の強さです。
スシローを展開するFOOD&LIFE COMPANIESは2021年度の決算で過去最高益を達成する見込みですが、何か特別なことをやっているわけではありません。
スマホで客席予約ができる「スシローアプリ」が密の回避につながるのが好調の要因などと言われていますが、これはもともと「待ち時間が長すぎる」という苦情に対応したものです。
これまでに顧客満足度向上のために取り組んできたことが、コロナ禍で一層評価されているといえるでしょう。
同様のことはくら寿司にもいえます。同社ではコロナ禍での新戦略として「スマートくら寿司」という新しい店舗モデルを打ち出し、注目を集めました。
これは“完全非接触”をめざした店で、店のQRコードを読み込めばお客様が自分のスマホで注文できたり、食べた皿の枚数を小型カメラとAIで自動計算しセルフ会計ができる仕組みを導入しています。
いわば、ポストコロナの「ニューノーマル」に対応したスタイルということですが、これも従来からの取り組みの延長線上にあるものです。
くら寿司では製造後に一定時間が経過した商品を自動で廃棄したり、テーブルのポケットから皿を自動回収するなど、人が介在することなく顧客満足を高めるための仕組みを開発してきました。
新モデル店はコロナ禍を受けて急きょ開発したのではなく、従来からの取り組みを時代に合わせてより進化させたものなのです。
回転ずしはもともと、既存のすし店と比べて安く食べられる「すしのディスカウンター」として登場しました。
しかしその後、ネタのクオリティ向上や商品バラエティの拡大、お客様にとって利便性の高い店づくりなど、主客層であるファミリーの顧客満足度を高めるためのさまざまな取り組みを続けてきました。
スシローとくら寿司はその点で業界をリードしてきた存在といえます。
業態を進化させる過程で積み上げてきたさまざまなノウハウと、顧客満足を高めることによって得たブランド力こそが、この2つのチェーンの透明資産。
コロナ禍における好業績は、その透明資産の価値の大きさを証明するものといえるでしょう。
ーホスピタソン勝田耕司
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