コロナウィルス禍での外食の勝ち組の代表とされるファストフード最大手の「マクドナルド」。
コロナ禍が落ち着きつつある現在も、その勢いは衰えていません。とくに注目すべきは、外食業界共通の課題である「価格アップ」で着実な成果をあげていることです。
今年1月~5月のマクドナルドの既存店業績を見ると、客単価は平均で前年比5.2%増となっています。客数も3.7%増で、売上高でみると9.1%増。既存店売上高を2ケタ近く伸ばしているのは、大手外食チェーンでは例がありません。まさに絶好調といえます。
この6月は、期間限定で「グランドビッグマック」と「ギガビッグマック」の2商品を販売しています。単品価格は前者が550円、後者は760円。
ギガビッグマックのセット価格は1000円を超えますが、売り切れになる店も相次ぐほどの好調な売れ行きです。この効果で6月は既存店の客単価がさらに伸びることは確実でしょう。
一方、6月1日~14日の期間限定で通常のビッグマックのセットが550円と、140円も割引になるキャンペーンも実施しています。このあたり、実に優れたマーケティングであると思います。
このメニュー戦略でマクドナルドが狙っているのは、消費者に新しい「ビッグマック体験」をしてもらうことです。
ビッグマックは言わずとしれたマクドナルドの看板メニューであり、数あるファストフードの商品の中で最も完成度が高いものの一つです。いわば“何もしなくても売れる”商品ですが、マクドナルドは決してその状況にあぐらをかいていません。
むしろ逆で、消費者の目を常にビッグマックに惹きつけておかなければならないと考える。それこそが看板メニューをつくる鍵であることを知り抜いているのです。
このことは、お客様にとっての「体験価値」を高めることにつながっています。通常よりもお値打ちにビッグマックを楽しめるだけでなく、期間限定メニューによって普段にはない満足感を得ることができる。
とくにギガビッグマックはまさにハンバーガーの醍醐味を味わえる圧巻のボリュームで、このところマクドナルドが力を入れてきた「夜マック」の強化にも大きく貢献しています。
さまざまなコストが上昇しているなか、価格をいかに上げていくかが生き残りの鍵になっていますが、そこには価格に見合うだけの価値の向上がなければなりません。とくに外食においては、その店ならではのおいしさや楽しさといった体験価値が不可欠です。
マクドナルドは、この体験価値を高めることに最も尽力している外食チェーンといえます。そのことがマクドナルドならではの透明資産となり、世界ナンバーワンのブランドをつくっているのです。
ー勝田耕司
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