焼とりチェーン「鳥貴族」を展開する㈱鳥貴族ホールディングスが、コロナウィルス禍を受けて取りやめていた株主への配当を復活させました。
2022年7月期の決算では売上高が前期比30%の増収、営業利益では引き続き赤字ですが、経常利益では約20億円の黒字となりました。営業利益の赤字幅も前期の半分程度に縮まっています。
既存店の業績も通期で売上高が前期比30%増、客数は25%増となり、復調は鮮明になってきました。この8月の既存店売上高は前期比で7倍以上。前期が時短や休業を余儀なくされたことの反動という面もありますが、絶好調といっていい数字だと思います。
鳥貴族で注目したいのは、既存店の業績が急速に上向いた今年4月以降、客単価と客数がともに伸びていることです。客単価は平均して前期比5%前後の伸びを示していますが、これは4月に実施した価格アップの影響によるもの。
それまで全品一律327円だった価格を350円に引き上げましたが、これは4年半ぶりの値上げでした。前回の値上げでは、それをきっかけに既存店の客数が大幅減となり、その後のコロナ禍もあって鳥貴族は長期低迷を余儀なくされることになりました。
今回の値上げは、さまざまなコストが上昇しているなかで避けられない判断だったと思いますが、同時に大きな不安もあったはずです。しかし、新しい鳥貴族の価格は消費者に問題なく受け入れられました。その要因は、鳥貴族がこれまでの展開で積み上げてきた独自の透明資産にあると思います。
鳥貴族は均一価格の居酒屋チェーンの先駆者ですが、その強みは価格戦略だけではありません。その価格の中で、常にお客様に「これはお値打ちだ」と評価していただけるよう品質の向上に取り組んできたことが鳥貴族の成長を支えました。
主力商品の焼とりでは、食材を国産に切り替えるとともに焼き台など調理機器の改革に継続して取り組んでいます。焼とりと並ぶ看板メニュー「トリキの唐揚げ」は、これまでに何度となくバージョンアップを繰り返してきました。
久しぶりに鳥貴族に足を運んだお客様が「やっぱり鳥貴族はお値打ちだ」と感じたことが、既存店の数字に表れているのです。それはすなわち、鳥貴族の持つ透明資産への高い評価です。
飲食店の価格は、単に「いくらで売るか」にとどまるものではありません。その価格でいかにお客様にお値打ちを感じていただくかという店側の考えを表したもの、言い換えればお客様に対する「メッセージ」なのです。
現在はあらゆるモノの価格が上がっていますが、その流れに単に追従するのではなく、いかに明確なメッセージを打ち出すか。それが継続して支持を得る決め手になるはずです。
この記事を書いている13日ビックニュースが届いた。。。
「鳥貴族」を展開する鳥貴族ホールディングス(HD)が焼き鳥店「やきとり大吉」を展開するダイキチシステム(大阪市中央区)を買収するというのだ。ダイキチに100%出資するサントリーHDが持つ全株式を来年1月に取得して完全子会社化。(買収額は非公表)
ダイキチシステムは、全国500店舗超の規模で「やきとり大吉」のフランチャイズ店舗網を敷き、小~中商圏において長年にわたり地域の客やフランチャイズオーナーから高い評価を得ており、関西、関東、東海における繁華街など中~大規模な商圏を中心に600店舗超を展開する「焼鳥屋 鳥貴族」との両ブランドで1000店舗を超えることになる。
コロナは完全に収束したとはいえないが、業績回復とともに攻めに転じた鳥貴族ホールディングス。前途のとおり価値を重視した均一焼鳥居酒屋チェーンとしての土台があり、今後の成長に注目したい。
ー勝田耕司
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