日本を熱狂の渦に巻き込んだワールドベースボールクラシック(WBC)での日本代表14年ぶりの優勝。大谷翔平選手をはじめ超一流のメジャー組のみならず、メンバー全員が力を存分に発揮して勝ち取った栄冠であり、まさにチームの勝利であったといえます。
大谷選手が最後のマウンドにあがり、同僚のマイク・トラウト選手を三振に切ってとる劇的な幕切れとなった決勝戦。3対2という最少点差のスコアに、この試合の“濃さ”と、日本代表の勝負強さが表れています。しかしそれ以上に、日本代表のチームとしての強さが凝縮されていたのが、準決勝の対メキシコ戦だったと思います。
この試合は、それまで不振が続いていた日本代表の主砲、村上宗隆選手が走者一掃の二塁打を打って逆転サヨナラ勝ちするという、これも劇的な幕切れとなりました。
注目したいのは、その場面をつくりだした8回までのプレーです。6回まで0対3とリードされていた日本は、7回裏に吉田正尚選手のスリーランホームランで同点に追いつきます。その前の7回表、遊撃手の源田壮亮選手が二盗を試みた一塁走者を見事なタッチで挟殺しました。
右手を負傷しながら出場を続けた源田選手のこの勇気あるプレーで相手の流れを切ったことが、吉田選手の同点ホームランを呼び込むことになりました。
8回表にメキシコに2点追加されましたが、8回裏ランナー2、3塁で代打に立った山川穂高選手が犠牲フライを打ち、1点差に詰め寄ります。おそれらく逆転の一打を狙っていたであろう山川選手は、打った直後に悔しそうな表情をしていましたが、この一打がなければ点差は縮まらず、9回裏の逆転劇もなかったはず。これらのプレーのどれひとつ欠けても、劇的な幕切れとはなりませんでした。
決勝戦における日本代表の継投も、チームとしての強さを存分に引き出した栗山英樹監督の見事な采配でした。とくに3回から7回まで、戸郷翔征、高橋宏斗、伊藤大海、大勢の4投手がつないで無失点で切り抜けたのは、あっぱれの一語に尽きます。
彼らは全員が20代前半、高橋投手にいたっては20歳になったばかりです。この若い選手たちが自分の役割をしっかりと理解し、それを果たすために全力で立ち向かう姿には本当に感動させられました。そして同時に、チームで戦うことの意味と、その価値の高さを実感しました。
WBC日本代表は、チームの勝利という透明資産の大切さを身をもって示してくれました。このことは日本国民に勇気を与えるとともに、コロナ禍からの復活をめざすうえでも大きな原動力となるはずです。
いよいよ4月からは新年度。われわれも日本代表にならって、強いチームビルディングに取り組もうではありませんか。
ー勝田耕司
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